『天気の子』新海誠監督&田村篤作画監督インタビュー|「もっと誇りに思っていい」ネットで話題になった“美少女ゲーム説”に隠された真意
新海誠監督の作品で人生が変わった人も多いと思う。何を隠そう、僕もそのひとりだ。
『秒速5センチメートル』を見て上京。新宿駅の人がたくさんいるのにどこか冷たい様子や、どこからでも見えるドコモタワーの巨大さを目にして、「ああ、東京に来たのだな」と思ったものだ。
もちろん現在公開中の『天気の子』も公開日に見に行った。僕はまたしても新海監督に人生を変えられてしまった。
圧倒的な雨と雲と空の描写、心踊る東京の街を駆け巡る帆高(頑張れば僕も帆高のようになれたのだろうか?)、陽菜の輝きに満ちた瞳、どれも僕の青春を呼び起こし、10歳くらい若返ったんじゃないかと思えるほどの感動を運んでくれた。
新海監督の作品を見るといつも思う。「どうやって作っているのだろうか?」と。そういうことに興味をもたせてくれたのも新海監督の作品を見たからかもしれない。だから僕はインタビューをするのかもしれない。
前置きが長くなったが、今回のインタビューの対象者は、新海監督と田村篤作画監督のお二人。
気になっていた雨の描写や個性豊かなキャラクターなどをメインにお話を伺った。
そして、ネット上で生まれている様々な感想について新海監督にぶつけてみた。
あの時、新海監督の作品を見て人生が変わったあなたに、至極の言葉のひとつひとつを読んでもらいたい。
反響を実感するのは、もう少し先
――『天気の子』が上映からしばらく経ちましたが、その後反響はいかがですか?
新海誠監督(以下、新海):一週間近く経つんですけど(取材当時)、まだ全然落ち着いていなくて、ドキドキした緊張のようなものがずーっと引かなくて。
ネットで直接感想をくださる方もすごく沢山いらっしゃるし、僕自身もTwitterなどで『天気の子』と検索して感想を見たりしています。
すごく喜んでいただいてる方が多いなーとか、こんな見方をするんだとか、批判してる人もいるなとか、そういうのを見てはいるんですけど、まだ全然染み込んでこないんです。
緊張で表面しか読めない感じ。まだそんな状態です。反響を実感するのは、もう少し時間がかかるのかなという気持ちです。
――公開できてホッとしていると思いますが、まだ実感がない?
新海:ホッとは全然できていません。とりあえず初週の動員数……まぁ興行収入を僕が気にしてもしょうがないんですけど(笑)。
ただ、今は宣伝チームと一緒に仕事をしているので、興行通信の数字を見せてもらったりもしていて、そういう数字とは無縁じゃなかったりもするんです。
でも、まずは「受け入れていただけてとても良かったな」と思います。
僕たちの映画はそういうところに答えられるのかどうか、これから自分ができることはあるのかどうかと考えています。安心は全くできていないです(笑)。
――なるほど。田村さんは反響いかがでしたか?
田村篤さん(以下、田村):僕の絵描きとしての作業は1ヶ月前くらいに終わっていたんですが、僕個人の作業としては「やることはやった」と思っています。
また、お客さんがどう捉えてくださるか、楽しんでくれているんだろうかと、新海監督と同じようにドキドキしていますね。
――田村さんは今までスタジオジブリで『もののけ姫』なども参加されていましたが、その時のお気持ちと比べてどうですか?
田村:大きな作品に参加している大勢の中のひとりである平の絵描きは、そこまでプレッシャーはないんですよ(笑)。「出来てよかったな〜」くらいで、責任はそこまで無いというか。
基本的にその状況は変わらないとは思うんですけど、今回は絵の責任者なので、見ていただく方に「なんだこの絵?」と思われなければいいなと。
帆高はちゃんと主人公として捉えてくれるのか、陽菜は可愛いと思ってもらえるんだろうかと、不安は常にありました。
――感想を見ていると陽菜が可愛いという意見が多いように思います。
田村:それは予想以上に感想をいただけて、可愛い絵になったんだ(笑)、と思ってホッとしています。