『ちはやふる』TVアニメ第3期:声優・瀬戸麻沙美さんインタビュー|人生がさらに豊かになる可能性を秘めた、そんな作品
かるた世界一の「クイーン」を目指す瑞沢高校かるた部の綾瀬千早を中心に、熱い競技かるたの世界を描いた人気アニメの第3期『ちはやふる3』が10月22日(火)から放送開始。
第2期『ちはやふる2』の最終回から約6年4か月ぶりの続編スタートということで、この日を待ち焦がれていたファンも多いはず。
そこで、主人公の綾瀬千早を演じる瀬戸麻沙美さんに、3期スタートへの思いや今作の見どころなどを語っていただきました。
絶対に3期はあると信じて、ずっと心待ちにしていました
—–『ちはやふる』の第3期制作決定を知った時の率直な感想を教えてください。
瀬戸麻沙美さん(以下、瀬戸):絶対に3期はあると信じて、ずっと心待ちにしていたので、いざ決まったと知った時には嬉しい気持ちと同時に、また千早役としてお芝居をしていくことに対するプレッシャーも少しありました。
情熱をかけて収録してきた作品だったので、6年間というブランクもあって熱量の高い高校生の役に自分がまた追いつけるだろうかと不安もありました。
千早は私の想像の一つも二つも上に行くので、収録が始まってからは「千早だったらこのセリフはこう言うだろうな」という感覚を思い出しながら、千早が出会っていく新しい物語に集中してアフレコができました。
—–瀬戸さんの想像の範囲を超えてくるからこそ、ますます千早を魅力的に感じることもありますか?
瀬戸:はい。ここまで一つのことに情熱を傾けられる人は、なかなかいないと思うので、憧れます。とにかく真っ直ぐで、強欲なんです。
もちろん、私も自分のやりたいことや自分の意志を大切に生きていますが、どこかで周囲の人に気をつかい、「今は、こういうことをしない方が良いんじゃないか」と遠慮してしまうことがあります。
もちろんそれは、大人になると必要な要素でもあるんですけれど。千早は夢中になると、そういうところが見えず突き進んでいくんです(笑)。
その真っ直ぐさにに皆が惹かれているんだと思います。
声優としての私の基盤を作っているのは、この作品だと思っています
——では、2期からの6年の間、瀬戸さんにとって、綾瀬千早という人物や『ちはやふる』という作品は、どのような存在でしたか?
瀬戸:デビューして1年くらいの時に出会った作品だったので、声優としてキャラクターへの向き合い方の基盤を作ったのは、この作品だと思っています。
他の作品に参加させていいただく中で、『ちはやふる』の現場で千早役として得た物はとても大きかったといつも認識させられます。
——具体的にどんなものを学べた現場だったのですか?
瀬戸:自分が一生懸命考えて思うがままに演じたものを誰も否定しないでいてくれる現場だったんです。周りにいた先輩方やディレクターさんが、私の考えややりたいことをくみ取ってくださっていて。
言葉という形で手を差し伸べてくださった方もいましたし、あえて言葉にはせず、優しく見守ってくださった方もいらっしゃいました。
もし自分のやっていることに対してオッケーが出なくても、それは間違っていることだ、とは言われず、新しいことにどんどんチャレンジできる環境だったので、自分自身も育つことができました。
——挑戦すること自体は間違いではない、という現場だったのですね。
瀬戸:リハーサルの時に思い切って挑戦してみることへの恐怖心を植えつけられず、この仕事を始められたのは、私にとってすごく大きな事だと思っています。
もし、あの時、自分のやったことを否定されていたら、きっとどこの現場に行っても、怖くて自分の思ったものを出せなくなってしまっていた可能性もあったので。
いつか自分が先輩になったときは、後輩へ同じように返してあげたいと思えるような、素敵なことばかりが凝縮したスタジオだったので、とても学ぶことは多かったです。
収録がなかった間も変わらず、ずっと大切な作品でした。
——その大切な作品の現場に、6年ぶりに戻って来て、その空気感や関係性などに変化はありましたか?
瀬戸:当時は力を抜くのがとても苦手で、休憩時間でさえ、千早から離れたくなかったんです。当時は未熟で一度離れると戻るのが大変だから。
1期の頃は、本当に自分のことだけで精一杯でしたが、太一役の宮野さんが現場の雰囲気を作ってくださって、先輩や後輩との交流の架け橋になってくださいました。
——部長の太一がエースの千早を支えるように、宮野さんが支えてくれていたのですね。
瀬戸:自分だけで精一杯の私に、宮野さんが「瀬戸ちゃんはそれで良いんだよ。瀬戸ちゃんのその姿勢にみんなが動かされるんだよ」と言って下さってとても励みになりました。
今では、本番と休憩の切り替えもできるようになり、現場作りのコミュニケーションも大事にしています。
3期では、現場に私より年下の方もたくさんいるので、これまで先輩達が作ってくれたやりがいや楽しさを感じてもらえるように出来たら良いなと思っています。
——そのあたりは、本当にかるたの事しか考えてない「かるた馬鹿」だった千早が上級生になって、後輩や部全体のことを考えたりするようになったところとも重なりますね。
瀬戸:千早も、漠然とですが、将来はかるた部の顧問になりたいという夢を持つようになったり、人にかるたの楽しさを伝えたい気持ちが強くなっているので、そこは彼女の成長ともリンクしているのかなと思ったりします。
『ちはやふる』のファンの方って、本当に温かい人しかいない
——アニメについては空白だった期間にも、千早や太一の住む東京都府中市や、二人の幼なじみ綿谷新が住む福井県あわら市では『ちはやふる』のイベントが開催され、瀬戸さんがゲストとして登壇される機会もありました。アフレコのない期間も、そういう機会に『ちはやふる』や千早のことを考えることはあった感じでしょうか?
瀬戸:福井でも、府中のイベントでも感じた事なのですが、『ちはやふる』のファンの方って、本当に温かい人しかいないんです。とにかくこの作品が大好きという気持ちが伝わってきて。
それにイベントがあると、(原作者の)末次由紀先生もすごく喜んでくださるし、イベントのために尽力してくださることも多くって。
何か一つ『ちはやふる』に関して動きがあると、原作の末次先生、スタッフさん、ファンの皆さんまで全員が一丸になって一緒に動く感じがすごく好きでした。
——その他にも、この6年の間に参加されたイベントで特に印象深い出来事はありますか?
瀬戸:福井のイベント(「ちはやふるファン感謝祭 in あわら」)で3期の制作決定を発表した時には、泣いて喜んでるくださっているファンの方もいらっしゃいました。
ファンの皆さんの『ちはやふる』へ愛の深さを実感し、一緒に喜べたことが嬉しかったです。
あと、これはイベントの話ではないのですが、この6年間の間に、原作の連載が続いていることはもちろん、実写版の映画が3本も公開されて、この『ちはやふる』という作品はなんて魅力溢れる作品なんだろうと改めて実感しました。映画も本当に面白かったです!
——原作ファンからも、アニメファンからも、あそこまで愛された実写版は、あまり多くない気がします。
瀬戸:私も映画館で観て、俳優さんたちがすごく輝いていて、格好良くて。
「3期をやることになったら、この俳優さんたちに負けないくらい面白いものを作りたい」という気持ちが沸々と沸き上がったことをすごく覚えています(笑)。
3期は大人たちのドラマにも注目して欲しい
——では、瀬戸さんも待ちに待っていたという『ちはやふる3』の見どころをネタバレにならない範囲で教えてください。
瀬戸:原作をすでに読んでいる人は、どのあたりの話になるのかはなんとなく分かっていると思うのですが。3期は、とにかく試合の場面が多くて、見応えがあると思います。
アニメの本編が始まって、試合の状況をドキドキしながら見ていたらあっと言う間に1本終わって、「すぐに次の話が見たい!」と思うくらいに濃密かつスピード感のある描かれ方になっています。
我らが師匠、原田先生の試合もあるので、ぜひ先生の生き様を見て欲しいです。
さらに、富士崎高校の桜沢(翠)先生のライバルだった猪熊(遥)六段も登場したり、周防名人を取り巻くかるた協会の人たちの台詞も面白かったりして。かるたを愛してきた大人たちのドラマもたくさん描かれます。
もちろん、軸には、ちはや、新、太一や瑞沢高校のみんなといった高校生のドラマもありますが、3期は大人たちのドラマにも注目して欲しいです。
この大人達の背中を見て、この子達がいるんだというところも楽しんでもらえると思います。
——『ちはやふる』は、千早、太一、新といったメインキャラ以外の試合も熱くて盛り上がるのが魅力ですよね。
瀬戸:今回も盛り上がってます! かるたは試合中におしゃべり厳禁なスポーツなので、『ちはやふる』では、みんなが心の中でたくさんしゃべっています(笑)。
久しぶりに『ちはやふる』の収録をして、モノローグを言葉にするのは難しい表現だということを再認識しました。
——普通にキャラクターが喋っている言葉を台詞として言うのとは、違う難しさがあるのですか?
瀬戸:モノローグを口に出すのは、ただただ声を潜めればいいわけでもないんです。心の声を音にして出すのは難しいし、どう表現すれば良いのか、毎回、考えさせられます。
——先ほどもお話に出てきた新キャラクター、元クイーンの猪熊遥は、坂本真綾さんが演じられているそうですね。坂本さんの演じる猪熊元クイーンの印象を教えてください。
瀬戸:猪熊さんはかるたの才能に恵まれていて、桜沢先生に「どうやったら、そんなに速く取れるの?」って聞かれた時も「聴こえたら取れば良いんだよ」とか、当たり前のように言ってしまうところが印象に残っていますね(笑)。
真綾さんに「収録が始まる時、麻沙美ちゃんが髪を一本に縛りだした仕草がとても千早に見えた」と仰って下さって嬉しかったです。
あと、はじめて『ちはやふる』の現場に入る方は、競技かるたってどんなスポーツなんだろうというところから入るのですが、真綾さんは原作を読まれていて「競技かるたってこうゆうスポーツなんだ!面白いね!」と言ってくれたのが、すごく嬉しくて。
——瀬戸さんも、もう「かるたファン」の側の人なんですね。
瀬戸:『ちはやふる』やかるたの魅力に気づいて、面白いとか、楽しいと言ってくださるととても嬉しいです。
真綾さんは、この作品でご一緒する前から憧れの女性であり女優さんなので、千早が目指しているクイーンだった猪熊さんを真綾さんが演じ、共演できたことがすごく嬉しかったです。
——坂本さんのお話をしている瀬戸さんが本当に嬉しそうです(笑)。
瀬戸:本当に嬉しくて、ただのファンみたいになっちゃいましたね(笑)。
——『ちはやふる』のファンは、当然3期の放送開始を待ち焦がれていると思うのですが、2期から6年以上経っているということで、読者の中には、当時は幼くて観てなかったけれど、『ちはやふる』が気にはなっている、という人もいるのではないかなと想像しています。最後に、そういった、まだ『ちはやふる』を知らない読者に向けて、メッセージをお願いできますか。
瀬戸:本当に「みんな観てくださーい!」と言ってまわりたいくらい、すごく面白い作品なのですが、最初は「競技かるたって何? 面白いの?」と感じると思います。
それに3期なので、これから1期と2期を全部観るのはちょっと…と思うかもしれません。でも、3期から観ても楽しんでもらえると思いますし、必ず、1期と2期も観たくなるはず。その自信があります!
見所はやはりキャラクターたちのドラマです。それぞれのキャラクターのドラマが丁寧に描かれているので、自分が経験してきたことや感じてきたものと重なり、共感するところがあると思うんです。
とても丁寧に一人一人の人物を描いているので、時には胸が苦しくて観ていられないような気持ちになることもあると思いますが、それが逆に心に残って一生の宝になると思うんです。
——作品やキャラクターの影響で、人生が変わったりもしますよね。
瀬戸:『ちはやふる』は、そういうきっかけがとてもたくさん詰め込まれている作品なんです。あなたの人生がさらに豊かになる可能性を秘めているので、ぜひたくさんの方に観て欲しいですね。
[取材・文・写真/丸本大輔]
TVアニメ『ちはやふる』作品概要
放送情報
2019年10月22日より2クール連続放送開始!
日本テレビ:10月22日より毎週火曜深夜25:29~25:59 (AnichU枠)
福岡放送:10月31日より毎週木曜26:10~26:40
福井放送:11月1日より毎週金曜 25:30~26:00
配信情報
Hulu:10月22日より毎週火曜 24:00~
下記は 10月23日より毎週水曜 12:00~
日テレ無料、TVer、GYAO!、dアニメストア、U-NEXT、アニメ放題、dTV、ニコニコ動画、J:COMオンデマンド、ビデオパス、みるプラス、ひかりTV、バンダイチャンネル、Rakuten TV、TSUTAYA TV、ビデオマーケット、DMM.com、HAPPY!動画、Amazonビデオ、ムービーフルPlus
イントロダクション
2009年第2回マンガ大賞受賞、2010年「このマンガがすごい!オンナ編」第1位獲得、2011年第35回講談社漫画賞少女部門受賞、コミックス累計2400万部を突破(2019年6月現在)。
「競技かるた」という斬新な題材と少女漫画でありながらも白熱した試合展開に、
年齢、性別問わず人気を博す『ちはやふる』(末次由紀/講談社「BE・LOVE」連載)
時代を越えても色褪せることのない美しい“百人一首”の歌と共に、畳の上で青春を懸ける高校生たちが「競技かるた」を通して成長し続ける姿を描く。
前作「ちはやふる2」から約6年、2019年10月に待望のTVアニメ「ちはやふる3」の放送が決定!第1~2期に引き続き、監督は浅香守生、キャラクターデザインは濱田邦彦、アニメーション制作はマッドハウスが務めます。
ストーリー
クイーンになる夢も、将来の夢も諦めたくない!
この一瞬に一生を懸ける―――――
高校2年生の夏、新入部員と共に全国大会へ出場した千早たち瑞沢高校かるた部。
団体戦では常勝校・富士崎高校を破り瑞沢高校が念願の初優勝、個人戦ではB級が太一、
そしてA級では新が優勝を果たす。
千早は団体戦で負傷した右指の手術も無事成功し、太一と共に富士崎高校の夏合宿に参加する。
顧問の桜沢先生によるスパルタな指導にもめげず、名人・クイーン戦に照準を合わせ練習に励んでいた矢先、出場が危ぶまれるある事実を知ることに……
一方、チームを持つことでかるたへの可能性が広がることが知った新は、かるた部創設に向け動き出していた。
新たなるライバルの登場、これからの進路、クイーンになる夢……
等身大の高校生によるひたむきでまっすぐな想いと情熱が溢れ出す第3期が開幕!
スタッフ
原作:末次由紀(講談社「BE・LOVE」連載)
監督:浅香守生
シリーズ構成:柿原優子
キャラクターデザイン:濱田邦彦
美術監督:清水友幸
色彩設計:大野春恵
撮影監督:伏原あかね
CG監督:鈴木大輝
特殊効果:チーム・タニグチ
編集:木村佳史子
音楽:山下康介
音響監督:三間雅文
アニメーション制作:マッドハウス
オープニングテーマ:99RadioService 「COLORFUL」
エンディングテーマ:バンドハラスメント 「一目惚れ」
制作著作:アニメ「ちはやふる」プロフェクト2019
キャスト
綾瀬千早:瀬戸麻沙美
真島太一:宮野真守
綿谷 新:細谷佳正
西田優征:奈良 徹
大江 奏:茅野愛衣
駒野 勉:代永 翼
花野 菫:潘めぐみ
筑波秋博:入野自由
若宮詩暢:中道美穂子
周防久志:東地宏樹
猪熊 遥:坂本真綾
ほか