茅原実里さん『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝』主題歌インタビュー｜「エイミー」は藤田監督と一緒に完成させたという気持ちです。すごく嬉しい、特別な制作でした

「監督のこの作品へかける想いや愛情をより感じて、この歌は外伝のためだけに書こうと」

【主題歌】OVA ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形- ED「エイミー」/茅原実里

──では早速ですが「エイミー」について教えてください。

茅原：『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』のためだけに作った1曲です。私が歌わせていただくことが決まった時に、TVシリーズのED主題歌「みちしるべ」の作詞をさせてもらっていたという経緯もあって、「外伝も茅原さんが自分で作詞をして歌った方がいいよね」という流れになりました。

ただ、私としては『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』への想いは「みちしるべ」に詰め込んでいたので、新たに新曲を作るといっても「みちしるべ」と同じような熱量のもの、またそれ以上のものを自分に書けるのかな……？という不安もありました。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』という作品が本当に大好きなので、その分プレッシャーも大きかったんです。

──そのときにいちばんベストと思えるものを出しているわけですもんね。その後どのように向き合っていかれたんでしょうか。

茅原：原作、脚本、絵コンテを読ませてもらいながら、私なりに作品と向き合いました。4月上旬に京都アニメーションさんで藤田春香監督、石立太一監督（外伝では監修を担当）をはじめとしたスタッフの皆さんと曲調や詞の内容について打ち合わせをさせてもらったんです。そこで諸々の方向性を固めていきました。

「エイミー」は3拍子になっているんですが、これは外伝の物語に寄り添った形です。（劇中に出てくる）舞踏会のシーンで流れるEvan Callさんの楽曲もワルツなので、主題歌もワルツでリンクさせたら物語の締めくくりとしてはドラマチックで美しいのではないかという話になって。

作詞については藤田監督の存在がとても大きかったですね。打ち合わせの時に藤田監督が何回も言っていたのが「人が愛をもってした選択を否定したくない」という言葉でした。その強いメッセージからも、この楽曲は温かくて、救われる歌でなくてはならないと…そう汲み取りました。

あと、「三つ編み」もポイントになっていると藤田監督がおっしゃっていて。今作はイザベラとテイラーという二人の姉妹の物語で、幼い時に生き別れた二人を結ぶ役割をヴァイオレットが担っているんですが、物語の中でヴァイオレットがイザベラの髪を三つ編みするシーンが出てくるんです。

ヴァイオレット、イザベラ、テイラー、3人を三つ編で表していて、「ふたつで結ぶとすぐほどけちゃうけど、三つ編みをすればしっかり結ばれてほどけることはない」と。3人の想いを束ねるという意味でも＜編む＞というワードは絶対に入れたいなと思っていました。

──それで＜編み続けた願いが叶いますように＞という言葉が生まれたんですね。その後、すぐに作詞作業に入られたんでしょうか。

茅原：はい。打ち合わせ後にしばらくしてから菊田大介さんの楽曲が出来上がってきて、自分なりに作詞したものを藤田監督に読んでいただいたんですが、藤田監督からお手紙でリテイクが届きました。

「ここの部分はキャラクターの視点で書いたらどうだろう？」とか、「これはこっちの表現でもいいかもしれない」とか……疑問やアドバイスをたくさん書いてくださって。私の詞に対して、作品への思いをぶつけてきてくださったこともとっても嬉しかったし、なによりそれをお手紙でいただけたことに感動しました。

藤田監督の想いを受け取って、監督のこの作品へかける想いや愛情をより感じて、この歌は外伝のためだけに作ろうと、その時に思いました。

タイアップ曲というのは、もちろん作品ありきの楽曲ではあるのですが、作品から切り離したところでも成立するようなバランスというものを考えながら作っているところってあると思うんですよ。

でも今回はそういうことは一切考えず、藤田監督の想いに1ミリでも近づけるような歌詞にしなければいけない、と。

だからタイトルも、今回の物語の中で魔法の言葉として出てくる「エイミー」にしようと思いました。

一番の一人称が＜僕＞で、二番の一人称が＜私＞というのも、イザベラとテイラーを意識したものです。彼女たちが見ている景色をイメージしながら書きました。

──手紙は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のテーマでもありますが、リテイクをお手紙というのはなかなかできないことですよね。

茅原：はい。デジタルが当たり前のこの時代に、手書きのお手紙というのは、本当に驚いたし感動しました……。

一緒に舞台挨拶を巡っていたヴァイオレット・エヴェーガーデン役の石川由依ちゃんが話していましたが、アフレコ当日もみんなに想いを伝えるために藤田監督が手紙を書いてきて読んでくれたそうなんです。

藤田監督はとっても穏やかで優しい人なんです。どちらかというと口下手なのかもしれませんね。だからこそお手紙にして思いをキャストのみんなに伝えてくれたんだろうなと思うと……本当に嬉しいですよね。

──茅原さんと藤田監督の信頼関係がキツく結ばれていたからこそ「エイミー」は素晴らしい曲になったんですね。

茅原：「エイミー」は藤田監督と一緒に完成させたという気持ちです。こんなにも誰かの気持ちに応えたいって思いながら作詞をしたのははじめてでした。とてもやり甲斐のある充実した制作になりました。

今まで詞を書かせてもらうときって、自分から出てくる言葉を尊重してもらえることが多かったので、藤田監督が私の書いた歌詞を読んで、感じたまま返してくれたことが嬉しかったし、お互いの作品に対する想いをディスカッションしながら書き上げることができたのは私にとって至福でした。この作品への監督の並々ならぬ愛情をひしひしと感じました。

だからこそ、私も自分のこだわりを貫いたところもあります。タイトルもそうだし、一人称についてもそうだし、全体の流れも含めて自分自身がしたい表現を選んだり……作品づくりって面白いなってあらためて思わせてもらいました。