映画『ジェミニマン』2人のウィル・スミスを演じる江原正士さん&山寺宏一さんインタビュー|おふたりが感じる吹き替えの魅力、そして“声の仕事”に対する想いとは?
近未来アクションエンターテインメント超大作『ジェミニマン』が10月25日(金)より公開となります。
本作は、ハリウッドのトップスターであるウィル・スミスさん主演。現在のウィル・スミスVS若きウィル・スミスが対決するという衝撃のストーリーとなっています。
そんな本作の日本語吹替版で現在のウィルを演じるのが江原正士さん、若きウィルを演じるのが山寺宏一さんです。
そこで、本稿ではおふたりのインタビューをお届け! 江原ウィルVS山寺ウィルという今までにない作品についての感想や吹き替えの魅力、そしておふたりが考える“声優”についてもたっぷりとお伺いしました。
目次
- 2人にとって記念のような作品
- 「吹き替えが面白い!」と思っていただけたら嬉しい
- 山寺ウィルVS江原ウィルのポスタービジュアル裏話
- 吹き替えは諸刃の刃!?
- 1つ1つのことを極めていくことが“道”
- 『ジェミニマン』作品情報
2人にとって記念のような作品
──これまでウィル・スミスの吹替を担当されてきたおふたりですが、今回の映画『ジェミニマン』ならではのポイントを教えてください。
江原正士さん(以下、江原):僕が吹き替えを担当した役は、スナイパー(暗殺者)がそろそろ引退したいと考え始めている現在のウィル・スミスです。
今まで演じてきた元気ハツラツなシャープ系ではなく、ちょっとフラット系な役柄なので、そこを意識しました。
といっても、最初はマッチョ系な感じで作っていまして。彼は元軍人なのでマッチョな部分を少し見えるような形にしようというところから始まりました。
──江原さんは事前に吹き替えをする役者をリサーチしたり、声や喋りをチューニングしたりして収録に挑むとお伺いしましたが、今回もそのようにされたのでしょうか?
江原:はい。今回は前日まで高い声を使うお仕事がなかったので、ほんの少しですが声のキーチェンジをしてから収録に挑みました。
──山寺さんは今回演じてみていかがでしたか?
山寺宏一さん(以下、山寺):僕は江原さんほどウィル・スミスを演じていないので……たぶん、『アラジン』で(ジーニーを)やらなかったら今回はなかったと思います。
江原:いや、そんなことないよ(笑) いろんな役者さんの吹き替えをやっていますし。
山寺:いやいや。もしかしたら江原さんが1人で両方のウィル・スミスを演じていたのかもしれません(笑)なので、今回のお話をいただいて本当にありがたかったです。
ウィル・スミス本人の声は僕よりも少し太くて、いつもならもうちょっと芯があるような声、ウィル・スミスの地声に近い声を意識しています。
でも、今回はいろいろな訓練をしてきたり違う環境で育った23歳のウィル・スミスを演じるので、その辺りを出していこうと意識しました。
ウィル・スミスさんだからということではなく、彼自身の若かりし姿の“ジュニア”というところに気持ちを置いて演じさせていただきました。
──おふたりが一緒にウィル・スミスさんが演じる役を担当することは初めてですよね。
江原:一緒にやるなんてなかなかないです。違う役で同じ作品に出ることは多いのですが。
山寺:そうですよね。共演は本当にたくさんあります(笑)
江原:本当に(笑)僕たちの付き合いは長いです(笑)
──今回の共演で感じたこと、何か思ったことはありましたか?
江原:僕ね、(山寺さんと)一緒に収録したかったです。後半に進むにつれて、一緒に収録したかったなぁ、と強く感じました。
山寺:僕と一緒に2人のウィル・スミスを演じることになって、“何でだよ!?”、“ふざけんなよ!?”と思わなかったんですか?
江原:思わないよ(笑)
山寺:“23歳のウィル・スミスもやれるよ!”と思ったんじゃないですか?
江原:それはお互い様でしょ(笑)
山寺:(笑)
江原:キャリアから言ったら(山寺さんは)僕が演じた現在のウィル・スミスもできますし、年齢が少し上ということで僕が選ばれたんだと思います。
こういう言い方はよくないかもしれませんが、山寺さんと2人の楽しい記念みたいな感じがしていて(笑)
ただ、僕たちも一応プロなので、「若いウィル・スミスも現在のウィル・スミスもできるならやります!」という気持ちはありますよ?
山寺:僕も同じ気持ちです。
江原:ただ、それはそれとして僕らが選ぶことではありませんし、2人で2人のウィル・スミスをやらせていただくということで「(僕たち)対決するってよ?」とワクワクな気持ちに(笑)
同じウィル・スミスでも年齢や役も違うので、ギャグというかシャレのような感じがします(笑)
山寺:あはははは(笑)
江原:なので、なかなか粋な企画をしてくださったなぁ、と。声の仕事をやってきていろいろな吹き替えを担当してきましたが、たぶん今後、こういう機会はないと思います。
山寺:確かに。
江原:そういう意味では、2人の記念作品のような気分です。……怒られちゃうかな?(笑)
一同:(笑)
江原:いや、もちろん僕たちは真剣にやっていますよね?
山寺:そうです! 僕たちは真剣です。本当に面白い作品になっています。
「吹き替えが面白い!」と思っていただけたら嬉しい
──山寺さんは江原さんとご一緒して、普段の吹き替えとは違う部分はありましたか?
山寺:あくまで役として対峙しているので、普段とあまり変わりませんでした。まったく同じ年齢の役を演じるなら変わるかもしれませんが、役自体が違うので。
ただ、僕『ジェミニマン』のCMの声を収録していた時に今回の企画をお聞きして、吹き替えも担当させていただけるんだ!という嬉しさもありつつ、「ん?1人2役かな?」と思ったんです。
制作の方から「2人にやってもらうんです」と言われたときに「えっ!?」と。
江原:言っていいぞ~!言っちゃえ言っちゃえ!(笑)
一同:(笑)
山寺:ということは、若いウィル・スミスは若手が担当するのかな、と。「若いウィル・スミスは誰が担当するんですか?」と聞いたら、“山寺さんが(若いウィル・スミスの)クローンです”と。
「じゃあ現在のウィル・スミスは?」と聞いたら「江原さんです」と返ってきたので、「なるほど!これは面白い!」と思いました。江原さんがやるならクローンを自分がやれるのは嬉しい!と素直に思ったんです。
江原:ありがとう!
山寺:本当になんて素晴らしいことを考えてくださったんだと。なので、江原さんじゃなかったら、正直、違う感想を抱いたかもしれません。
──江原さんだからこそですね。
山寺:はい。江原さんと聞いて「なるほど!」「よくその手を考えたな!」と(笑)
江原:僕が“その手”でした(笑)
山寺:(笑)逆に、僕のほうが江原さんが現在のウィル・スミスを演じてくださったおかげで、23歳のウィル・スミスに滑り込ませていただいたと思っています。
江原さんは本当に尊敬している方ですし、僕が後輩ですけどいろんな役で同じ俳優を“どっちがやるんだろう?”と思うこともあって。やっぱり江原さんには勝てません。
江原:何を言っているの(笑) (山寺さんは)本当にいろんな役を演じていますからね。
山寺:僕は江原さんに追いつきたいという気持ちでずっと吹き替えを頑張ってきました。江原さんは何でも合っちゃうんです。
江原:(照れながら)同じ言葉をそのまま返すよ(笑)
一同:(笑)
山寺:今、いろいろな声優さんで俳優の吹き替えを試すことが多いのでチャンスはありますが、1つの役がなかなか続かない。
江原:うんうん。僕も続かないのいっぱいあります。みんな経験していることなんですよね。1人で全部できるわけじゃないので。ただ、同じ役を続けたい気持ちはあるんです。
山寺:本当に! 良い役者の作品はどれも続けたいのが正直な気持ちです。
江原:僕らにとってそう思うことは当たり前なんですが、それは僕らが選べることじゃないので。(役が)来たら、それに全力投球することが僕らのスタンスだよね。
山寺:まったくその通りです!
江原:今回、『ジェミニマン』が僕らに与えられたので、ご覧になる皆さんが「やっぱり吹き替えが面白い!」と思っていただけたら本当に嬉しいです。
今回は一緒に収録できなかったのですが、ディレクションを信じてお芝居をさせていただいたので、山寺さんのウィル・スミスと自分のウィル・スミスがどのように合わさるのか、皆さんの目で確かめていただきたいです。
もしうまくいっていたら……(山寺さんを見て)僕ら頑張ったね!
山寺:はい。本当に吹き替えを楽しんでいただけたら嬉しいです。
あと、僕、スタッフから聞いたんですけど、若いウィル・スミスは現在のウィル・スミスからCGで作られていますが、声も多少変えているそうなんです。どうやって声を変えたのかが気になっていて……
江原:そうなの!? もし「これ僕吹き替えていないよ!」というシーンがあったらどうしよう……
一同:(笑)
江原:声がサンプリングされていたりして(笑)
山寺:そう思いますよね(笑)江原さんの声をもう少し若くできる機械があれば僕いらないですもん。
江原:じゃあその逆もあり得るってことだよね……どうしよう!?(笑)
一同:(笑)
江原:でも、本当に時代が変わってきていて、こういう言い方はよくないかもしれませんが、僕らはアナログ時代なんです。テープを録音する時代から一緒に仕事をやってきました。今はほとんどデジタルデータになっているので、いろんなことができます。
山寺:やろうと思えば何でもできちゃいますね(笑)
江原:そうそう。僕らの時代とは違う世界になっています。
山寺:簡単に声を若くしたり老けさせたりできるかもしれないです。
江原:セリフも簡単に縮めたりできるかもね。
山寺:でも、ニュアンスは変えられないですよね。歌は音程で変えられるけれどニュアンスは変えられないので。
前、歌を収録するときに「音程は気にしないでください」と言われたことがあって。「それはどうなんだろう?」「いつも直してもらっているのかな?」と思ったことがあります(笑)
江原:そういえば、(山寺さんに)今まで担当してきた吹き替えで、ウィル・スミスが1番若い時に演じた作品って何?
山寺:確か『インデペンデンス・デイ』(1996年公開)です。
江原:あぁ! 『インデペンデンス・デイ』か!
山寺:彼は『インデペンデンス・デイ』で人気が出たのかな? 『メン・イン・ブラック』よりも前ですよね。
──そうです。『メイ・イン・ブラック』は翌年の1997年に公開されました。
山寺:マーティン・ローレンスと共演した『バットボーイズ』(1995年公開)からどんどん人気が出てきた感じですよね。
江原:その時期はウィル・スミスがたくさん映画に登場しているよね。あの年代に近いのは、『ジェミニマン』でいうと若いウィル・スミス?
山寺:いや、そこまで若くないと思います。ウィル・スミスはラッパーだったので、23歳の時はそんなに世に出ていなかったような。
僕が『インデペンデンス・デイ』の吹き替えを担当した時も子供がいる役だったので、30代ぐらいでしょうか。
江原:そっか。僕は『メン・イン・ブラック』で演じた役がウィル・スミスが1番若いときでした。