【密着レポート第1回】『HUMAN LOST 人間失格』には話題沸騰の映画『ジョーカー』との共通点も? ダークヒーローが必要とされる今だからこそ描ける作品
脚本の完成までには様々な紆余曲折が
元々本作については「世界で勝負できる作品を」というオーダーがあったものの、実際には世界を意識した作品作りはそれほどしておらず、「冲方さんが構築した世界観に追い詰められた結果、あそこにしか行きようがなかった」と、必然として現在の形に落ち着いたことを明かす木﨑監督。
そんな冲方さんの脚本が完成するまでには、かなりの紆余曲折があったとか。難解な設定については必要以上の説明をしないように、あくまでもドラマ部分を主軸とし、それに付随する設定だけを説明していくというスタイルへと切り替えていったそうです。
そして、現在のように、よりドラマティックな展開になっていったという裏話も。
制作中苦労した部分として、「CGが厄介なのは、キャラクターの人数であったりアセットであったり、シナリオについて3D制作班から、“この予算内で作れるのか”という精査が入るんです。その点をお互いに顔を突き合わせて話し合う必要があり、調整には苦労しました。ただ、その労力があったとしても、CGでしか表現できないことに挑戦できるなら面白いのではないかと考えました」と木﨑監督。
その話を受けたコザキさんも、「3Dのキャラクターって、髪の毛やスカートの長い衣装だと、描写するアニメーターに負担が掛かり、コストが増えてしまうんです。だから本作ではそれを避けるデザインを徹底していて美子の髪の毛もアニメーション的な労力が少ないものにしています」と、予算面にも配慮したデザインを意識しており、結果的にはそれが昭和的なテイストともマッチしたのだとか。
その一方、ポリゴン・ピクチュアズのアニメーション制作は、モーションキャプチャーを一切使っておらず、すべてのシーンが1コマごとにCGを効果的に見えるように変形させたりパーツを増したりと、手書きアニメに近い作業によって作られているそうで、それがCGからも手書きのテイストを感じさせる要因になっているということも、木﨑監督の口から語られていました。
イベントの最後には木﨑監督から「自分で作ったものを何度も見ようとは普段はなかなか思わないのですが、本作については見る度に新しい発見がある、不思議な体験ができています。もし本作に新しい発明があるとしたら、“古典文学とSFの融合”がそうだと思っていて。冲方さんとは、これがトレンドになって、次は『吾輩が猫である』をやれたらいいね、と話していました(笑)」と、今後に向けた意気込みも語られ、トークイベントは締め括られました。
SFと文学の融合
なおイベント終了後、木﨑文智監督とコザキユースケさんからは、ファンへのメッセージもいただきました。
また、お二人にはイベント後にインタビューも実施しており、こちらも後日中に掲載する予定ですので、お楽しみに!
コザキユースケさん
デザイナーとして、細かいところに普通のSFとは違う要素やディテールをたくさん詰め込んでいて、個人的にはかなりキレイにまとまったと思っています。自信作ですので、衣装のデザインなど、細かい部分にも目を向けていただければ嬉しいです。
木﨑文智監督
SFと文学の融合という難題を、エンターテイメントとして成立させるため、キャスト・スタッフ一同で苦心しました。いよいよ公開も間近に迫っていますが、あの『人間失格』がどんな作品として生まれ変わったのか、是非劇場で確かめていただければと思います。
[取材・文・写真/米澤崇史]
作品概要
劇場アニメ『HUMAN LOST 人間失格』
11月29日(金)全国公開」
配給:東宝映像事業部
<INTRODUCTION>
全人間、失格
昭和111年・GDP世界第1位・年金1億円支給
日本文学の最高峰「人間失格」
狂気のSF・ダークヒーローアクションへ再構築
破滅に至った一人の男の生涯を描く日本文学の金字塔――太宰治「人間失格」。深い死生観、文学性が今なお、強烈な衝撃を与え続ける不朽の名作。そのスピリチュアルを内包し屈指のクリエイター陣によって再構築された、新たなるオリジナルアニメーション映画が誕生した。“日本発の世界を魅了するSFダークヒーロー”を創出すべく本作の起点となったのは、スーパーバイザー・本広克行。脚本は、太宰治と同じ小説家であり、日本SF大賞ほか数々の賞を受賞した冲方丁が担当。日本文学を大胆なSF世界観と重厚な物語へと昇華させた。
異様の日本をリアリティある映像へと落とし込むのは、海外でも多数の賞を受賞し、次々に映像革命を起こし続けるアニメーション制作・ポリゴン・ピクチュアズ。主題歌には、グラミー賞にノミネートされSpotifyにおいて世界でもっともストリーミングされたシンガーJ.Balvinをfeat.に迎えた、音楽シーンの最前線を走り続けるm-floが参加し、世界を彩る。そして、それら鋭く多彩なクリエイティブを、「アフロサムライ」において卓越したアクション描写で世界を驚愕させた監督・木﨑文智が、エモーショナルにまとめあげた。
“日本文学の最高峰×ジャパニーズアニメーション”が危うく交錯する――
狂気の“日本”を巻き添えにする、誰も知らない“ダークヒーローアクション”「人間失格」。
<STORY>
昭和111年――医療革命により死を克服し、環境に配慮しない経済活動と19時間労働政策の末、GDP世界1位、年金支給額1億円を実現した無病長寿大国・日本、東京。
大気汚染と貧困の広がる環状16号線外“アウトサイド”で薬物に溺れ怠惰な暮らしをおくる“大庭葉藏”は、ある日、暴走集団とともに特権階級が住まう環状7号線内”インサイド”へ突貫し、激しい闘争に巻き込まれる。
そこで”ロスト体”と呼ばれる異形体に遭遇した葉藏は、不思議な力をもった女性“柊美子”に命を救われ、自分もまた人とは違う力をもつことを知る。
暴走集団に薬をばらまき、ロスト体を生み出していたのは、葉藏や美子と同じ力をもつ男“堀木正雄”。正雄はいう。
進み過ぎた社会システムにすべての人間は「失格」した、と。文明崩壊にむけ自らのために行動する堀木正雄、文明再生にむけ誰かのために行動する柊美子。
平均寿命120歳を祝う人類初のイベント“人間合格式”を100日後にひかえ、死への逃避を奪われ、人ならざる者となった大庭葉藏が、その果てに選択するものとは――
STAFF
原案:太宰治「人間失格」より
スーパーバイザー:本広克行
監督:木﨑文智
ストーリー原案・脚本:冲方丁
キャラクターデザイン:コザキユースケ
コンセプトアート:富安健一郎(INEI)
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
企画・プロデュース:MAGNET/スロウカーブ
配給:東宝映像事業部
CAST
大庭葉藏:宮野真守
柊美子:花澤香菜
堀木正雄:櫻井孝宏
竹一:福山潤
澁田:松田健一郎
厚木:小山力也
マダム:沢城みゆき
恒子:千菅春香
公式サイト
公式ツイッター(@HUMANLOST_PR)