『映画スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』田中裕太監督インタビュー|映画主題歌「Twinkle Stars」の力を信じて作ったクライマックス
「歌」の力を信じて作ったクライマックス
――「プリキュア」の秋映画は、ボス戦から大ボス戦になだれ込むクライマックスが多いかと思います。今回、バトルでなく歌にしたのは、どんな理由からだったのですか?
企画の時点からあった「歌」という要素を、一番効果的に使うにはどうすればいいかと考えたら、やはりクライマックスの一番盛り上がるところにはめるべきじゃないかなと思い、バトルの代わりとして提案しました。
そうしたら、異を唱える人がいなかった……というか、「バトルやりたい人なのかと思った」と言われたくらいで。「そんなことはないよ」と(笑)。スッと決まったので、その時点ではそれほどチャレンジだとは思っていませんでした。
――田中監督ご自身の創作欲やモチベーションにも、歌を押し出すクライマックスはハマったんですね。
そうですね。『映画魔法つかいプリキュア!奇跡の変身!キュアモフルン!』で自分なりの王道プリキュア映画を作りきったので、多少これまでの例から外れたものを作ってもいいかな、と思っていました。
それと『HUGっと!プリキュア』のオールスター回(第37話「未来へ!プリキュア・オール・フォー・ユー!」)でも、バトルはやりつくしましたからね……。あの時に「プリキュア」に対する自分のエネルギーをすべて使い切ってしまった感がありました。死ぬほど大変だったんです(笑)。それで、とにかくもう「ラストバトル」は一旦やめようと。
――燃え尽きたんですね(笑)。映画では、挿入歌「Twinkle Stars」が物語に完全に噛み合って、映像と渾然一体で畳みかけていますよね。作曲の高木洋さんには、どんな発注をしたのでしょう?
全体の構成を先に決め込んでから依頼をしています。
「まず、ララがアカペラで「ながれぼしのうた」を歌いだして、ひかるがインしてきます。ユーマの音波が歌ったあと、二人のユニゾンがあり、、「Twinkle Stars」の1番をしっとり歌います。サビがあって、間奏でこんなことやって、星の動きが止まります。2番からダンスに入り、えれな(CV:安野希世乃)、まどか(CV:小松未可子)、ユニ(CV:上坂すみれ)が途中から合流して、最後はひかるとララで盛り上げて、「ながれぼしのうた」に戻ってきます……」みたいな(笑)。
全体で9か月くらいしかスケジュールがないので発注もすごく早くて、プロットがやっと固まってシナリオ初稿ができたかどうか、くらいの時期なんです。その時点でのクライマックスからラストシーンまでの、なんとなく固まったイメージを頼りに発注する感じでした。今回は歌に合わせて話が進行する、話のなかに組み込む使い方なので、かなり綱渡りでしたね。
――今回のような使い方だと、「クライマックスのコンテができてからじゃないと発注できないのでは?」と思ってしまうのですが、そうではないのですね。壮絶です……。
あとは、テレビシリーズのエンディングで、先行して映画主題歌を流したいたいということがあり、、その兼ね合いもありました。曲全体の尺は確実にテレビシリーズのエンディング尺を超えるので、ワンコーラスを切り抜ける構成で、そこをフルCGのダンスにしたいと。2Dと3Dは完成までのスケジュール感が全然違うので、そのパート分けも、この時点で決める必要がありました。
だから、いろんな意味で綱渡りというか、それこそイマジネーションですよね(笑)。それで、これだけシナリオに結びついた主題歌の作曲は劇伴もできる人じゃないと厳しいという話になって、高木さんに担当していただくことになりました。高木さんとはこれまでも一緒にやってきて、お互いに勝手もわかっていますしね。
――歌収録のほうはいかがでしたか?
やはり時期がめちゃくちゃ早かったので、「なんとなくこういう話になります」「ユーマはこんな感じです」と断片的な情報だけ共有して、イマジネーションで歌っていただきました(笑)。
ララがクワンソウ畑で歌うシーンと、ひかるが夜の砂浜で歌うシーンは、後日動きに合わせて録っていますが、ふたりが水に沈みながら歌う「ながれぼしのうた」は歌収録で録っています。ただ、本編で使ったのはCDに収録されているバージョンとは別のものです。もうろうとするなかで無意識的に歌い出すシーンなので、そんなオーダーで歌ってもらいました。結果的に、うまくハマってよかったです。
実は、サビの部分も、CD版ではプリキュア5人のユニゾンですが、劇場本編だとひかるとララの二人掛け合いで歌ってています。
――挿入歌「Twinkle Stars」の1番では、ひかるとララが歌いながらプリキュアに変身していました。そこは、テレビシリーズの変身シーンから発想を?
そうですね。冒頭の「ながれぼしのうた」の部分は劇中の世界に存在する童謡という設定ですが、それ以降の「Twinkle Stars」の部分はそうじゃなくて、あの瞬間のプリキュアから生まれてきたものという位置づけ。それって、テレビシリーズで変身するときの歌と同じ種のものなんです。想いがあふれてきて、それがいつの間にか歌になっていた、ということですね。
もともとはシナリオの流れでもっとコンパクトに変身させるつもりだったんですが、コンテ段階で挿入歌「Twinkle Stars」の1番でやるべきことを整理した結果、逆に尺に余裕ができて。印象的な見せ場を積む意味でも、こういうシーンにしてみました。
――今回のクライマックスは、歌と映像にすべてがかかっている感もあります。挑戦するにあたって、不安などはありませんでしたか?
たしかに恐怖はありました。最終的に、歌が届いて星が生まれ変わり、ユーマはユーマなりの夢を見つけるわけですが、あまり理屈で説明していないし、ユーマは最後までしゃべりませんからね。
映像の力で謎の感動を呼び起こす作戦だったので、仁さんに対しても「信じてください」という感じで、とにかくやるしかなかったです。ただ、そんななかで上がってきた挿入歌「Twinkle Stars」が本当によかったので……。「この歌があれば大丈夫だ」と思えました。
[取材&文・小林真之輔]
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『映画スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』2019年10月19日(土)ロードショー
ストーリー
宇宙にひびけ♪届け!わたしたちのうた♪♪~お星さま誕生ものがたり~
絶賛放送中の「スター☆トゥインクルプリキュア」(ABC テレビ・テレビ朝日系列)の劇場版最新作は、お星さま誕生の物語★★!
ある日突然、プリキュアの元にやってきた不思議な生き物ユーマ。言葉が通じないユーマに、ひかるとララは振り回されっぱなし・・・。
ユーマと気持ちを通じ合わせる方法、それは<うた>!?<うた>を通じてユーマとの絆を育んでいくひかるたち。
しかし、突如謎の宇宙人ハンターが現れ、大ピンチ!さらには、ユーマとはいずれ離れ離れになることが告げられてしまう・・・。
ユーマを、そしてみんなの想いを守るため、プリキュアが立ち上がる!!
スタッフ
【原作】東堂いづみ
【監督】田中裕太
【脚本】田中仁
【音楽】林ゆうき 橘麻美
【総作画監督・キャラクターデザイン】小松こずえ
【作画監督】松浦仁美 中谷友紀子
【美術監督】今井美紀
【CGディレクター】大曽根悠介
【色彩設計】竹澤聡
【撮影監督】髙橋賢司
【製作担当】澤守洸 井桁啓介
【ゲスト声優/映画主題歌】知念里奈
【映画主題歌・挿入歌】「Twinkle Stars」作詞:大森祥子 作曲・編曲:高木洋
キャスト
成瀬瑛美
小原好美
安野希世乃
小松未可子
上坂すみれ
木野日菜
吉野裕行
公式サイト
公式Twitter(@precure_movie)