【密着レポート第2回】『HUMAN LOST 人間失格』当初は実現が危ぶまれていた企画だった!?「CGアニメの最前線」でスタッフたちは何を思う? 独占コメントあり!
あらゆる存在の何かが欠落した世界観
一方、富安さんはコンセプトアートが果たす役割について、単純な個々のデザインの決定ではなく、世界をビジュアル面で成り立たせることこそが目的だと考えているようで、「本作に登場するバイクは前輪がないのですが、『何かが欠落している世界』というのが本作の世界観のイメージなので、バイクも大事な前輪が欠落している」と紹介。また作中に登場する警察犬のドローンも、足が3本しかなく、誰もが何らかの要素をロストしている雰囲気を漂わせたかったという狙いがあったのだとか。
また、「ロスト体がどのようにして歩くか」というコンセプトアニメーションは、映画「シン・ゴジラ」でゴジラコンセプトアニメーターを手掛けた熊本周平さんが担当しており「所在がなく、誰かに助けを求めているかわいそうな人」というイメージから動きを考えていったのだとか。実際の映像には取り入れなかったものの、何かに対する恨み辛みを小声で常に口にし続けているという設定が、当初は存在していたことも明かされることに。
実際に完成した映像を見た感想として、「ホッとしたというのが正直なところで、立ち上げから完成までの間に、空中分解してもおかしくない状況も何度かあったんです。そこからなんとか完成にこぎつけて、試写会に参加した方々にも喜んでいただけているようで安心しました。公開規模も想像していた以上に大きいので、あとはヒットしてくれるのを祈るだけです」と、完成までの苦労を思い返しつつ、感慨深げに心境を語る木崎監督。
一方の富安さんは、「時間は掛かりましたが、私個人としては才能のあるクリエイターの方々と一緒に仕事ができたのが本当に楽しくて、打ち合わせの度に嬉しくなっていたんです。見て下さる方にもその楽しさが伝わってくれたら嬉しいと思っています」と、その願いも明らかにしていました。
最後には、登壇者からそれぞれメッセージや見どころが語られたあと、MCを務めた氷川さんが「アニメーションとは命を吹き込むということですが、命とはどういうものかというテーマが、ポリゴンさんの作品の中には毎回どこかに入っていて、本作はその一つの到達点であるとも感じました。生きるとはどういうことか、若い人が考えるきっかけにもなる作品だと思います」と本作への感想を熱く語り、トークショーは締め括られました。
またイベント終了後には、木﨑監督、富安さん、森さんのお三方に、イベントの感想とメッセージを頂きましたので、そちらの内容も合わせてご一読下さい。