【密着レポート第2回】『HUMAN LOST 人間失格』当初は実現が危ぶまれていた企画だった!?「CGアニメの最前線」でスタッフたちは何を思う? 独占コメントあり!
木﨑文智監督、富安健一郎さん、森弘光さんコメント
――本日のイベントの感想をお聞かせください。
富安健一郎さん(以下、富安さん):今回、企画が立ち上がった当時のことを改めて話してみて、「これ、どうなっちゃうんだろう」と内心で思っていたなと(笑)。その中で才能のあるクリエイターの方々と話し合っていると、面白いアイディアがたくさん出てきて。それがこうした作品になるという過程を傍で見てきていたので、感動しましたね。
森 弘光さん(以下、森さん):とにかくチャレンジングな企画で、「どうやって作ろうか」ということは何度も監督と話し合っていて。他の皆さんも言っていましたが、「本当に完成するのか」という不安は何度もよぎっていましたね。
木﨑文智監督(以下、木﨑):やっぱりこれだけの面子なので、それぞれに新しいものを作りたいと想いがあって。とにかくアクの強いメンバーが揃ってしまったので、それをどうまとめるのかというのは悩んだ部分でした。
ただ、やはりこういうメンバーだからこそ、誰も思いつかないようなアイディアも出てくるんです。とくに富安さんのアイディアは、本作の世界観を支える根幹になっていて、クリエイターとしての才能の塊みたいな人たちが集まっていたんだなと、改めて思いましたね。
――今回のトークの中では、木﨑監督の想像を越えるものが上がってきた、という話が何度も出てきていましたが、もう少し詳しくお聞かせ願えるでしょうか?
木﨑:作っている時は本当に手探りで、どういうものが出来上がるのか見えていなかったんです。だからそこまで「こういう感じのものが上がってきたらいいな」という、ちょっと漠然としたクオリティラインがあるくらいだったのですが、それを遥かに越える良いものが上がってきて。
森さん:そこは本当にトライアンドエラーで、やってみたらできたものもあれば、うまくいかなかったものもあります。そうした試行錯誤の末に完成したのが現在のフィルムで、「本当にできるのか?」というところから「まずはやってみよう」というマインドを持ったスタッフが集まってくれていたのが幸運でしたね。
富安:トークでも話したのですが、最初は無理だと言っていたことでも、やってみたら案外できた……ということが結構あったんですよね(笑)。
森:毎回同じ座組みでできるわけではないですから、他のプロジェクトでも、今回と同じことをやれと言われたら困ってしまうんですが(笑)。今回に関していえば、人員であったりのいろいろなめぐり合わせが本当に良かったから実現できたという側面が強いですね。
木﨑:スタッフの方々の熱量は本当にすごかったです。「とにかく良いものを作るんだ!」という気持ちがバンバン伝わってきたので。
森:木﨑監督の過去の作品を見て、「これを越えないといけない」という想いもありましたし、かなり監督の作品を研究したり、議論を重ねていましたね。
富安:僕はクリエイターとして、ポリゴンのスタッフの方々が羨ましくて。木﨑さんの描いた絵コンテを見ながらアニメを作れるというのは、クリエイターとしてものすごく勉強になりますよね。
森:その話で言うと、木﨑監督がすごいのは、僕らが作ったモデルをコンテの中に取り入れたりという、新しい試みもされているんです。
――具体的にはどういったものなのでしょうか?
**木﨑:実は今回はコンテを切る前に、CGソフトを使って予め簡易的なセットモデルを作っておいて、そこにポリゴンさんから頂いたモデルを乗せて、最終的なコンテを作るようにしていたんです。
プロデューサー陣からは、「全部手で描いた方が分かりやすい」という意見もあったのですが、CGには嘘がないので、ポリゴンのスタッフの方々からは作業がしやすいと言ってもらえていましたね。
森:最終的なキャラクターの表情などは、その上に手で書き足していただいていましたし、どこで誰が何をしているという整合性はかなり重要なので、我々としてはやりやすかったですね。
――今回のトークショーでは、アニメにおけるCGの表現がテーマになっていました。最後に、本作のビジュアル的な部分での見どころを教えてください。
富安:魅力的かつ、見ただけでその個性が分かるコザキ(ユースケ)さんのキャラクターと、昭和のテイストが残った不思議な未来の世界観のビジュアルが、どのようにマッチしていくかという部分に注目していただければと思っています。
森:作画のアニメにはできない、絵としての情報量の多さに加えて、これまでCGアニメではなかなかできなかった、表情の豊かさという部分も頑張って作っているので、注目していただければ嬉しいです。
木﨑:シーンとしてとくに力を入れたのは、冒頭のバイクシーンから葉蔵が変身するまでのAパートと呼ばれている部分です。あの掴みのパートに一番予算が投入されていると言ってもいいくらいで(笑)。
わかりやすいエンターテイメント的な見どころでもあるので、あそこを見終れば、あとは一気にラストまで駆け抜けられると思います。是非とも劇場で楽しんでしていただければと思います。
――ありがとうございました。
[取材・文・写真/米澤崇史]
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◆第1回「ダークヒーロー特集 最強MARVELから大ヒットJOKERまで」
作品概要
劇場アニメ『HUMAN LOST 人間失格』
11月29日(金)全国公開」
配給:東宝映像事業部
<INTRODUCTION>
全人間、失格
昭和111年・GDP世界第1位・年金1億円支給
日本文学の最高峰「人間失格」
狂気のSF・ダークヒーローアクションへ再構築
破滅に至った一人の男の生涯を描く日本文学の金字塔――太宰治「人間失格」。深い死生観、文学性が今なお、強烈な衝撃を与え続ける不朽の名作。そのスピリチュアルを内包し屈指のクリエイター陣によって再構築された、新たなるオリジナルアニメーション映画が誕生した。“日本発の世界を魅了するSFダークヒーロー”を創出すべく本作の起点となったのは、スーパーバイザー・本広克行。脚本は、太宰治と同じ小説家であり、日本SF大賞ほか数々の賞を受賞した冲方丁が担当。日本文学を大胆なSF世界観と重厚な物語へと昇華させた。
異様の日本をリアリティある映像へと落とし込むのは、海外でも多数の賞を受賞し、次々に映像革命を起こし続けるアニメーション制作・ポリゴン・ピクチュアズ。主題歌には、グラミー賞にノミネートされSpotifyにおいて世界でもっともストリーミングされたシンガーJ.Balvinをfeat.に迎えた、音楽シーンの最前線を走り続けるm-floが参加し、世界を彩る。そして、それら鋭く多彩なクリエイティブを、「アフロサムライ」において卓越したアクション描写で世界を驚愕させた監督・木﨑文智が、エモーショナルにまとめあげた。
“日本文学の最高峰×ジャパニーズアニメーション”が危うく交錯する――
狂気の“日本”を巻き添えにする、誰も知らない“ダークヒーローアクション”「人間失格」。
<STORY>
昭和111年――医療革命により死を克服し、環境に配慮しない経済活動と19時間労働政策の末、GDP世界1位、年金支給額1億円を実現した無病長寿大国・日本、東京。
大気汚染と貧困の広がる環状16号線外“アウトサイド”で薬物に溺れ怠惰な暮らしをおくる“大庭葉藏”は、ある日、暴走集団とともに特権階級が住まう環状7号線内”インサイド”へ突貫し、激しい闘争に巻き込まれる。
そこで”ロスト体”と呼ばれる異形体に遭遇した葉藏は、不思議な力をもった女性“柊美子”に命を救われ、自分もまた人とは違う力をもつことを知る。
暴走集団に薬をばらまき、ロスト体を生み出していたのは、葉藏や美子と同じ力をもつ男“堀木正雄”。正雄はいう。
進み過ぎた社会システムにすべての人間は「失格」した、と。文明崩壊にむけ自らのために行動する堀木正雄、文明再生にむけ誰かのために行動する柊美子。
平均寿命120歳を祝う人類初のイベント“人間合格式”を100日後にひかえ、死への逃避を奪われ、人ならざる者となった大庭葉藏が、その果てに選択するものとは――
STAFF
原案:太宰治「人間失格」より
スーパーバイザー:本広克行
監督:木﨑文智
ストーリー原案・脚本:冲方丁
キャラクターデザイン:コザキユースケ
コンセプトアート:富安健一郎(INEI)
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
企画・プロデュース:MAGNET/スロウカーブ
配給:東宝映像事業部
CAST
大庭葉藏:宮野真守
柊美子:花澤香菜
堀木正雄:櫻井孝宏
竹一:福山潤
澁田:松田健一郎
厚木:小山力也
マダム:沢城みゆき
恒子:千菅春香
公式サイト
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