TVアニメ『マギアレコード』リレーインタビュー:由比鶴乃 役 夏川椎菜 「『マギアレコード』に参加できて、中学生のころに抱いた夢がかなったような気持ちでした」
ついに放送がスタートしたアニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』。元気いっぱいの由比鶴乃を担当するのは、夏川 椎菜さん。『魔法少女まどか☆マギカ』のファンでもある彼女は『マギアレコード』にどのように臨んだのでしょうか。
嬉しさとともに、プレッシャーを感じた『マギアレコード』の収録
――アニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』の放送がついに始まりましたね。原作となるスマートフォンゲームから関わられてきた夏川さんとしては、どんなお気持ちですか?
夏川椎菜さん(以下、夏川):単純に『魔法少女まどか☆マギカ』のファンとしても、シリーズ作品のアニメ化は嬉しかったです。原作となるスマートフォンゲームの『マギアレコード』のシナリオはすごい分量だったんです。
すべてのキャラクターのセリフが入った台本も、すごく分厚くて。これくらい(10センチくらい)の厚みがあるシナリオが二冊分くらいあるんです。この量がアニメとして凝縮されたときに、どういうふうになるのかなって。
すごく濃い内容のアニメになるんじゃないかと、私も楽しみにしています。スマートフォンゲーム『マギアレコード』をプレイしていない方にもぜひ、観ていただいて、新しいキャラクターと新しい世界を知っていただけたらなと思っています。
――オンエアされたアニメをご覧になっていかがですか?
夏川:ゲームでは背景として一枚絵で描かれていた学校や町の風景が、実際にアニメの舞台として描かれていて、すごく新鮮でした。第1話ではモノレールが走っていて、周囲を歩いている人とか、アニメーションのキャラクターもかわいらしかったですし、びっくりすることが多かったですね。
ゲームではセリフで補っていたところも多かったのですが、アニメでは絵や演出で補っているのかなと感じるところもあって、目が離せない作品になっているなと思いました。
どこかに違和感があって、不穏な空気がずっと漂っている。絵の中に細かく隠されている設定や意味を考え始めると眠れなくなるようなところがあって。ドキドキしていました、ずっと!
――先ほどファンというお話がありましたが、麻倉ももさん(環いろは役)が『魔法少女まどか☆マギカ』をご覧になったときは各話ごとに解説を担当されていたそうですね。
夏川:そうです(笑)。怖いのが苦手だから、いきなり観てびっくりしないようにと。観る前に私にネタバレして良いよと言われて、全部解説したんです。
私は『魔法少女まどか☆マギカ』はリアルタイムで見ていたんですが、今の私の趣味の起源をたどると、全てが『魔法少女まどか☆マギカ』に原点があるんじゃないかと思うくらい好きな作品でした。
かわいい女の子たちがかわいい世界でかわいいことをしているはずなんだけど、どこかちょっと気持ち悪くて、劇団イヌカレー(泥犬)さん(異空間設計)のおつくりになる世界がトラウマでもあり、クセにもなっていて。
あの衝撃がまた観たくて、ダークファンタジーや不気味な世界の作品に興味を持ちはじめました。それで今でもダークファンタジーは好きなんです。
――「魔法少女が願いを叶えるために、白い妖精と契約をして、魔女と戦う」という世界観について、どのような印象をお持ちですか。
夏川:私はこういう魔法少女モノに出てくるマスコットキャラクターが超好きだったんです。どのマスコットキャラクターもかわいい! と思っていたんですけど、これほど憎らしい(笑)と思ったマスコットキャラクターは『魔法少女まどか☆マギカ』のキュゥべえだけです。
キュゥべえの設定や、魂がソウルジェムになっているというとんでもない設定に怖さを感じましたね。しかも、その設定に説得力があって、その物語の組み立て方がすばらしいなと。新しい世界を見せていただいたような感じがありました。
――『魔法少女まどか☆マギカ』のシリーズ作品に参加することは、どんなお気持ちでしたか?
夏川:私にとっては中学生のころの夢がかなったような気持ちでしたね。私が声優になりたいと考えたきっかけは、別作品ではあったんですが、魔法が使える強い女の子に憧れていたからなんです。
『マギアレコード』では、そういう子に実際になれるわけじゃないですか。そういう意味では夢がかなった感じがあります。だから、めちゃめちゃ嬉しかったですけど、それ以上にプレッシャーがありました。
『魔法少女まどか☆マギカ』って世界観も魅力的でしたけど、役者さんたちのお芝居もすばらしくて。そこにつながる世界を作るひとりとして、私が参加できるというのはやり甲斐もありましたが、それ以上にプレッシャーが大きかったです。
――由比鶴乃というキャラクターの印象をお聞かせください。
夏川:『マギアレコード』にはけっこうダウナーな女の子が多くて、影を背負っているというか。『魔法少女まどか☆マギカ』に登場する女の子はみんな何かの願いがあるから、魔法少女になって魔女と戦っているわけなので、みんな重い一面があるんですけど、鶴乃はそういう一面がまったくなくて。
あまり暗さを見せないんです。彼女が魔法少女になった理由を想像させるようなこともないし、ムードメーカーのような子なので、『マギアレコード』の魔法少女の中でもけっこう浮いているなと感じる一面もありました。
でも、そんなキャラクターが実は浮いていなかったんだとわかる瞬間があって。そのシナリオを見た時に、鶴乃の印象がガラッと変わりましたね。ただのおバカに見える子じゃない。空気の読めない元気印の子じゃない、自分の本音を言えない弱さや溜め込んじゃうところがあって。いわゆるフィクション的な元気な女の子じゃなくて、ある意味で生々しい人間的な女の子なんだなと思っています。
――スマートフォンゲーム版の彼女はかなりドラマチックな運命をたどりますよね。
夏川:アニメでは第4話から登場するんですが、本当の意味で仲間になるのは、彼女のドラマが始まってからになると思うんです。ぜひ、アニメをずっと見てもらえると嬉しいです。
――アニメになったことで、彼女の印象が変わったところはありましたか。
夏川:『魔法少女まどか☆マギカ』って一瞬だけ顔のアップが挿入される表現がありますよね。シャフトさん(アニメーション制作会社)がよくやる表現だと思うんですけど。アニメ『マギアレコード』のアフレコのときに、中華料理屋「中華飯店 万々歳」で(環)いろはちゃんと話しているシーンで、鶴乃の表情が挿入されるカットがあって、ああ『魔法少女まどか☆マギカ』っぽいと感じました。
鶴乃も、そういうふうに扱ってくださるんだなと。鶴乃にミステリアスな要素が加わるんじゃないかと思っています。
――魔女の結界空間など『魔法少女まどか☆マギカ』らしい映像演出も、アニメ『マギアレコード』で取り入れられていますね。
夏川:私の印象だと『魔法少女まどか☆マギカ』では魔女って変な音を放っていて、しゃべるという印象がほとんどなかったんですよね。でも、アニメ『マギアレコード』に登場するウワサさんはかなりしゃべっていて。魔女よりもタチが悪い感じがしました。精神に直接話しかけてくるような感じがあります。
――本作に登場する魔法少女の中で、夏川さんが注目している魔法少女はどなたですか?
夏川:鶴乃としては(深月)フェリシアと、生でお芝居をすることができたのは嬉しかったですね。鶴乃とフェリシアの掛け合いって姉妹みたいですごく可愛いんですよね。
ゲームの収録のときは佐倉(綾音)さん(深月フェリシア役)の声を想像して収録していたんですけど、それをちゃんと目の前で掛け合えたので、フェリシア可愛いな、愛らしいなという気持ちが、声に乗ったような気がしています。もしかしたら、ゲームよりも鶴乃のお姉ちゃん味が増しているかもしれません。
トラセ史上(?)最難度の主題歌「ごまかし」に込めた想い
――夏川さんはTrySailのメンバーとしてスマートフォンゲーム『マギアレコード』の主題歌やテレビCM、イベントなども関わっていらっしゃいました。思い出に残っているエピソードをお聞かせください。
夏川:やっぱりテレビCMですね。『マギアレコード』の以前では、テレビCMにちょっと出演させていただいたことはあったんですが、ここまでがっつりセリフをいただいたことはなくて。しかも、お正月のめちゃくちゃ人がたくさんテレビを見ているときに何度も流れていたので衝撃が大きかったですね。
お正月休みに、のんびりとテレビを観ていたら、自分の顔が出てきて。とんでもないプロジェクトに関わらせていただけるんだなと、あらためて実感しました。あのテレビCMが流れたあとに、行きつけのショップの店員さんから「見ましたよ!」と言われました。美容院でも同じことを言われて……身バレ率が上がりました(笑)。
――撮影はいかがでしたか?
夏川:撮影は大変でしたね。食べるシーンもすごく多くて、「お正月編」は年越しそばで、「夏編」はソーメンで。私……麺類をすすれないんですよ(笑)。ラーメンを食べるときも、レンゲに小さいラーメンを作りながら食べるタイプなんです。
でも、テレビCMではそういう理由にもいかなくて。めちゃめちゃ大変でした。とても勉強になった収録でした。
――アニメ『マギアレコード』では主題歌の「ごまかし」を歌われています。この楽曲の印象をお聞かせください。
夏川:初めて聴いたときは「なんて素敵な曲なんだろう!」と思っていたんです。「主題歌になります」と言われて、私はすぐに『魔法少女まどか☆マギカ』のオープニング主題歌だった「コネクト」を思い出したんです。
「ごまかし」も『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズの曲を感じさせるような曲調になっていたので、オープニングのアニメーションが楽しみでした。
――でも、夏川さんのブログではアニメ『マギアレコード』オープニング主題歌の「ごまかし」の歌唱が「夏川的に、トラセ史上最難易度曲でした……!」と書かれていましたね。
夏川:そうなんですよ。聴いているときはすっと溶け込むような感じがあって、口ずさんでしまうような曲なんですが、実際にちゃんと歌ってみようとするとむちゃむちゃ難しくて。テンポが早いし、音の移動も細かいし、曲調もすごく繊細で。まるでガラス細工のような曲で、あまり力を入れることもできなくて。そのバランスが難しかったです。
でも、一度レコーディングをして、完成した曲を聴いたあとは、大分歌えるようになったので。それはすごく良かったなと思っています。