アニメイトタイムズ×FUN’S PROJECT 特別企画 vol.11 『バビロン』キャラクター原案・ざいんさんが語る、戦略性と楽しさの共存術
「アニメイトタイムズ」と「FUN'S PROJECT CHANNEL」の合同でお届けしているクリエイターインタビュー企画「クリトーク!」。
第11弾では、2011年に商用作品デビューを果たし、2019年大きな話題と波紋を生んだTVアニメ「バビロン」のキャラクター原案を手がけたざいんさんが登場します。
「バビロン」の各キャラクターへのこだわりや、作家・クリエイターとして大切にしていること。そして、イラストレーターとして継続的な活動をするために必要なすべなどを聞きました。
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バビロンのキャラクタービジュアルに迫る
――ざいんさんがTVアニメ「バビロン」のキャラクター原案を担当することになったキッカケをお聞かせ下さい。
ざいんさん(以下、ざいん):小説版「バビロン」の装画をご依頼いただいたのがキッカケです。でも、TVアニメ化と聞いてビックリしちゃって(笑)。特に話題になった第7話「最悪」ですよね。あのシーンをどうやって描くのかなと思っていたんです。
――そうだったのですね。あのシーンは衝撃的でした。
ざいん:そうなんです。ちなみに装画の時は、曲世愛の一人で統一した表紙になったので、他のキャラクターは全く描いていなかったんです。アニメ化が決定してから正崎(正崎善)を含めたキャラクターの原案制作に入りました。
――正崎や文緒(文緒厚彦)、九字院(九字院偲)などのキャラクターはどういったプロセスで描かれていったのでしょうか。
ざいん:プロデューサーからかなり具体的な参考イメージをいただきつつ、私が小説で読んだ時のイメージを膨らませながら制作を進めていきました。実際、私が想像していた各キャラクターのイメージに近い形で参考イメージの共有があったので、割とスムーズにデザインできたと思います。
そうそう。このあたりのイラストは一番最初に描いたものになりますね。
見ていただくと分かりやすいのですが、最終段階とそんなに大きくは変わっていないんですよ。
――これは貴重な資料をありがとうございます。最初のラフを上げた時点で、スタッフの方はどのような反応でしたか?
ざいん:「かなりいい感じ」って(笑)。
――いきなり最高の仕上がりを出しちゃったわけですね(笑)。
ざいん:そこからもっとアニメ的なデフォルメが強い方がいいという意見も出たりしたんですけどね。もっと漫画っぽい雰囲気があった方がいいのではないか?といろいろと試してみたのですが、結果最初のイラストが一番いいよねって話になったんです。ちなみに途中のイラストはこんな感じです。
――ビックリしました。全然違いますね....!
ざいん:特に正崎の髪型はいろいろなバリエーションを出したのですが、そこまで最初と変わらない案が通った形になりましたね。
――アニメの「バビロン」が面白すぎるので、年末のお話(2019年12月30日開始の第3章「曲がる世界」)が出るまであえて小説版を読まないと決めているのですが、九字院の髪型ってお仕事の割にはすごく派手ですよね。これは小説の中でもこういった表現があったのですか?
ざいん:いえ、九字院はコミカライズ版とも全然雰囲気も違っていると思います。
顔の印象はともかく、警部補という職業柄もう少し地味な髪型なのかなと思っていたのですが、長髪で服も着崩した感じの案が届きまして。
なので、キャラクターはデフォルメしない代わりに、デザインのディテールでマンガっぽい雰囲気を出すようにしました。個人的にも九字院が好きなのでいい仕上がりになったと思っています。
――九字院、すごくカッコいいですよね。ちなみに「バビロン」のキャラクター原案を手掛けた中で、スムーズにいったキャラクターと苦戦したキャラクターについてもお聞きしてもいいですか?
ざいん:文緒は優しそうな雰囲気と頼りないところがイメージしやすくて描きやすかったです。九字院も割とスムーズに今のビジュアルになったかな。一番案を出したのはやっぱり正崎ですね。
普通になりすぎてもいけないし、癖のある感じになってもいけない。そのバランスを取るのが難しかったですね。
――確かに正崎はシンプルなんだけれど、洗練されているというか。清潔感の中にも何か奥深さを感じるビジュアルに仕上っていた印象があります。では、ここで曲世愛についてもお聞きしたいです。
ざいん:曲世は小説の表紙でビジュアルが完成していたので、大きな変更はなかったんですけど、やっぱり色気や色使いなどにはこだわりましたね。
アニメでもそういった演出があったんですけど、髪の毛の中にマゼンダっぽい色が入っていたりしていて。その辺りは普段の自分がやっていることでもあるんですけど、ちょっと怪しい配色みたいなのは取り入れた仕上がりになっています。
――ちなみに小説の装画を担当した際は、どうやって曲世のデザインを生み出していったのですか?
ざいん:そうですね...。構図のパターンはたくさん用意しました。小説だけ読んでいると、怖いイメージがあると思うんですよ、曲世って。でも、顔自体は可愛いというかキレイなものにしたいなと思って。当時はアニメとしてのキャラクターデザインも意識していなかったので、表紙映えするようなイメージでした。
――貴重なお話をありがとうございます。ざいんさんは「バビロン」のキャラクターたちがアニメで動いているのを見てどう感じました?
ざいん:「バビロン」はドラマっぽい雰囲気でリアリティが凄いですよね。それでいて、アニメらしい表現もあったり。放送前に第3話まで完成したものを一気に見たのですが、小説の雰囲気がそのままアニメ化されていたのが印象的でした。
自分が描いたキャラクターが動いていることにも感動したんですけど、単純に小説を読んで面白いと感じた会話のテンポだったり、不穏な感じが素晴らしくって...。ただただ、演出に感動しました。
――今の時点(取材は2019年12月13日)で放送されているお話の中で、ざいんさんが特に印象に残っているシーンはどこでしょう?
ざいん:第2話の「標的」です。正崎が女性を事情聴取したシーン。あの雰囲気が好きなんですよね。エピソードとしては、会話のシーンが多いのでアニメ的には静かなのかな?って思っていたのですが、実際に見てみると、張り詰めた緊張感がすごくって。相手側に正崎側の意図が伝わっているのかいないのか。絶妙な演出が素晴らしかったです。あそこはかなり好きなシーンですね。
――では、第7話の「最悪」はいかがでしたか?
ざいん:ビジュアルの打ち合わせに行った時に見たんですけど、緊張して身体が強張ってしまうほどの仕上がりでした。ああいうシーンがあることは小説を読んでいたので知ってはいたのですが、恐ろしさがそのまま現れているシーンだったなって。
あのシーンって間に別のカットが入ってきますよね?その演出があることで直接的な部分は避けているものの、逆に恐ろしさが増している気がしていて。小説の印象のままではありつつ、映像になった時にはじめて感じる恐怖があって、怖いんだけど面白いなって思いました。