TVアニメ『マギアレコード』リレーインタビュー:深月フェリシア 役 佐倉綾音 「自分にとって、フェリシアの役はチャレンジでした」
いよいよ物語が動き始めた、アニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』。第6話からは、戦闘で活躍する魔法少女・深月フェリシアが登場します。元気で勝気なフェリシアを演じるのは、佐倉 綾音さん。『魔法少女まどか☆マギカ』にも出演していた経験のある、彼女は『マギアレコード』にどのように臨んだのでしょうか。
『魔法少女まどか☆マギカ』に出演した思い出
――スマートフォンゲーム『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』がアニメ化すると知ったときはどんな印象がありましたか?
佐倉綾音さん(以下、佐倉):企画書をいただいた段階から、きっといつか動くフェリシアが観られるんだろうと何となく予感をしていたんです。でも、『マギアレコード』は『魔法少女まどか☆マギカ』の正統後継的な立ち位置になるわけで、きっとたくさんの時間が掛かるだろうなと。
実際に、何回目かのゲームの収録をしているときに、スタッフさんから「アニメになります」と聞いたのですが、そのときに「ただ……1年から2年後です。丁寧につくっていきたいです」というお話もいただいていたんです。だから、こうしてアニメの放送が始まって嬉しいですね。
――佐倉さんは『魔法少女まどか☆マギカ』に女子生徒役で出演されていたんですよね。
佐倉:そうなんです。第1話の女子生徒役です。あのときに初めて鶴岡(陽太)さん(音響監督)とごいっしょしたんです。アニメ『マギアレコード』を見ていたら、第1話の教室に似たようなブルーの髪の子がでていて。『魔法少女まどか☆マギカ』をあえてなぞっているところもあるのかなと思っていました。
――当時『魔法少女まどか☆マギカ』は注目度が高い作品になりましたね。
佐倉:そうでしたね。私よりも父がよく見ていたんです。第3話がオンエアされたとき、父が「綾音、大変なことになったぞ」と部屋に呼ばれたことをよく覚えています。私は第1話しか参加していなかったので、不穏な空気はあったけれど平和そうだった作品が、こんな展開になるなんて…この作品の魅力にたくさんの人がとり憑かれるのもわかるなと思っていました。
――スマートフォンゲーム『マギアレコード』に参加することになったときはどんなお気持ちでしたか?
佐倉:やはり『魔法少女まどか☆マギカ』に一瞬だけど関わっていましたし、『マギアレコード』の収録の予定がスケジュールに入ったときは、「あの作品!」と嬉しい気持ちがありましたね。
フェリシアはピーキーに作り込んだキャラクター
――深月フェリシアというキャラクターの印象をお聞かせください。
佐倉:ゲームの初期のフェリシアの音声を聞きなおすと、自分が昨今演じてきたキャラクターで、一番幼く演じているなという個人的な印象があります。自分としては大分チャレンジしたな、大分気合が入っていたんだなと感じました。
ゲームの『マギアレコード』の収録のときは、前回の音声を聴かせてもらってから、新しい音声を録るんです。そのたびに「(前回は)こんなに幼く作っていたっけ?」と我ながらびっくりします。かなりピーキーに作っているキャラクターですね。
――設定的にはフェリシアは中学一年生くらいですよね。
佐倉:そうですね。でも中学一年生よりも精神年齢は幼いと思います。偏差値もIQも幼め。頭で考えることをせずに、身体と心でおもむくままに行動している子ですね。私自身は頭で考えるタイプなので、あまり考えすぎずに口から出たものを信じて収録していました。
――アニメの収録で、変化した部分はありますか?
佐倉:第6話の初登場のときに、音響監督の鶴岡さんから「アニメではゲームよりもちょっとだけ頭身を高くつくってもらっているから」とおっしゃってくださったんです。ただ、フェリシアの幼さは精神的なものなので、頭身のことは頭の片隅において収録していました。
―― 一般論としてお聞きすると、キャラクターの頭身が変わると、声優さんのお芝居も変わるものですか?
佐倉:そうですね。太っていたり、痩せていたり、身体の体積が変わると、声の質が変わることがあるらしいんですね。たとえば、身体が大きいオペラ歌手は、声の響きが大きくなったり、太い声が出たりしますよね。一方、身体が小さいと高い声が出ると言われることがあるんです。そういった違いは意識しています。
――そうなんですね。アニメの収録にあたり、何か参考にされたものはありましたか?
佐倉:私、舞台を見に行ったんですよ。
――けやき坂46(現・日向坂46)のみなさんが出演された舞台『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』(2018年8月24日~9月9日、TBS赤坂ACTシアターで公演)ですね。
佐倉:自分が担当したキャラクターを、ほかの人がどう演じるのかが気になって、2.5次元化された舞台にご招待いただいたらよく観に行くんです。自分がたまたま先行してお芝居をすることができたけれど、他の人がどうやって役を作っているのか、ゼロから作っているのか、それとも先行している私のお芝居を参考にしてくださっているのか、気になっていて。
けやきちゃんたちは、まだ当時は舞台をそれほど経験されていない時期だったと思うんですけど、この世界観をどのように演じるんだろうなと興味があって。あと、かわいい子が観たかった(笑)。TVシリーズの収録前に、この『マギアレコード』の世界を客観的に見る機会が持てて良かったなと思いました。
――深月フェリシア役は、渡邊美穂さんが演じていらっしゃいましたね。
佐倉:フェリシアを2.5次元で演じるのは、かなり大変だと思うんですよ。フェリシアは蒼樹うめ先生の絵があって、成立するキャラクターだと思うので。実際に人間が演じると、違和感が強くなってしまうと思ったんですよね。
でも、実際の舞台では「2.5次元ってこういうことなんだ」と納得してしまうようなレベルで仕上げてくださっていて。2次元と3次元のはざまに生きている人って存在しているんだなと驚きました。私が演じたフェリシアを参考にしてくださったりしたのだろうかと思うと、すごく嬉しかったですし、新鮮だったので、すごく勉強になりました。
(鹿目)まどか(丹生明里が演じる)とか、(二葉)さなちゃん(潮紗理菜が演じる)は、とくにゲームそっくりで。声を吹き替えているのかなと思うほどでした。こんな奇跡ってあるんだなと思いながら見ていましたね。
アニメの収録現場で、相手とやりとりする楽しさ
――アニメの収録現場の印象はいかがでしたか?
佐倉:ゲームはどうしてもひとりで収録しているので、誰と話しているのか、相手との距離感はどれくらいなのか、と想像しながら収録をしないといけないのですが、アニメの収録現場では、相手役が実際にそばにいるので収録がしやすいんです。
収録現場には、TrySailのみなさんがいて。麻倉ももちゃん(環いろは役)とは「Charlotte」という作品でごいっしょしていて、そのときに仲良くなれた感覚があったので、またごいっしょできて嬉しかったです。夏川(椎菜)さん(由比鶴乃役)とは今回が初めてで。最初は緊張していたのですが、わりとすぐに話をするようになりました。天真爛漫で、話題も途切れないんですけど、ちょっと不思議な方なんですよね(笑)。
基本的には、フェリシアは鶴乃といっしょにいることが多いので、アドリブをするシーンで、夏川さんと「ふたりならこんなふうにしゃべるのかな?」と相談しています。そういう関係はすごく楽しいですね。
(雨宮)天ちゃんとは『新幹線変形ロボ シンカリオン THE ANIMATION』という作品で1年半ごいっしょさせてもらっていたんですが、そちらではなかなかお話する機会がなかったんです。
私も人見知りですし、天ちゃんもそういう感じがあったので、どちらかが距離を詰めないと一生しゃべる機会はないだろうなと思ったので、共通の知り合いの先輩にお願いして、一度ご飯会を設けていただいて。その後、『マギアレコード』の現場でようやく会話をするようになりました。いまは天ちゃんが私と同じ洗剤と柔軟剤を使ってくれています。
――えっ、急激に仲が良くなったということですよね。
佐倉:「これが佐倉さんのにおいなんだ、と思いながら使っています」と報告してくれるようになりました(笑)。
――(笑)。フェリシアにとって、環いろはや七海やちよといった魔法少女はどんな存在だと感じていますか?
佐倉:みんな個性が違っているので、バラバラに見えるんですが、立っている場所や目指している方向は同じになってきたのかな……とゲーム版では思っています。でも、アニメではこれからどんな関係になっていくのかは、まだわからないところがありますね。
「こんなやり取りをしてたんだ」と、ゲームでは描かれていなかったところがいろいろ出てきますし。キャラクターの見え方も、少しずつゲームと印象が変わって見えるところがあります。たとえば、いろはってアニメで見ると、口数が少ない印象があるんですよね。ちょっと、まどかっぽく見えるところもあって。ゲームだともっとしゃべっていた印象があるので、そういった違いが気になっています。
――本作に登場する魔法少女の中で、佐倉さんが注目している魔法少女はいますか?
佐倉:(水波)レナが好きですね。個人的に水色が好きなので、パッと目が引かれてしまいます。ああいうキャラクターを好きになることはあまりないんですけど、石原夏織さんの芝居もふくめて。一番揺れていて。つい耳を傾けてしまうんです。
――アニメ『マギアレコード』は現在、オンエアされていますが、ご覧になった印象はいかがですか?
佐倉:混沌とした精神的な空間でしたね。シャフトさんの作品に特有の文字の表現や建物や物体のビジュアルが得体のしれない風体になっていて、まるで人間が作ったものじゃないような感覚がありました。意味があるように見えて、ないようにも見える。観ないようにしていても観てしまう。そこは人間の好奇心が呼び起こす業の深さみたいなものを実感しました。