茅原実里さんインタビュー|作品を未来に届けて行くのは巡り合った使命――2枚目となるベストアルバム「SANCTUARYⅡ」と巡る“茅原実里”という物語
昨年、デビュー15周年を迎えた声優・アーティストの茅原実里さん。もう15周年かと、これまで我々に届けてくれた作品群に思いを馳せてしまう方も多いことだろう。
しかし、彼女を傍から見ていると、そのフレッシュでパワフルな姿が未だ健在なので、常に今が最高の状態なのだとも思わせてくれる。
そんな彼女の2枚目のベストアルバム「SANCTUARYⅡ〜Minori Chihara Best Album〜」が2020年2月5日(水)に発売される。
前回のベストアルバムから6年ぶりとなる2枚目。この6年の間に彼女は様々なことを経験した。フリーからホリプロインターナショナルへの移籍、やまなし大使に任命、そして自身が役者・歌手として参加しているTVアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を制作した京都アニメーションへの想い。
前に前に突き進む彼女は、今回のベストアルバムで何を思うのか。そこには、様々な表情で思い出を語りながらも、笑顔で未来の楽しみを語ってくれる彼女がいた。
ベストアルバムは“最強の名刺”
――2014年から6年ぶりのベストアルバムになります。今の心境は?
茅原実里さん(以下、茅原):実は2枚目のベストアルバムをリリースすることが自分の頭にはなかったので、お話を聞いたときに「ベストアルバム!?」ってびっくりしました。
でも、よく考えたら色んなアーティストさんが10周年、15周年、20周年とアニバーサリーのタイミングでベストアルバムをリリースしているので、私も2枚目のベストアルバムをリリースできるくらい活動を続けてこれたんだなと、喜びを改めて実感しました。
――なぜベストアルバムをリリースするのがご自身の頭になかったんでしょうか?
茅原:そうですね……。多分10周年のときにベストアルバムを1枚リリースしていたので、次は20周年で出すっていう感覚になっていたんだと思います。
でもまわりを見渡すと、15周年のタイミングでも様々なアーティストさんがベストアルバムを制作しているなぁと思って。10周年からそこまで時間が経ったような気がしていなかったんですけど、でも振り返るとそんなこともなかったなと。ここ5〜6年の間で色んな変化もありましたし。
15周年でこうやって、またベストアルバムを制作させてもらえるのはありがたいことだなと思いましたね。
――なるほど。今回のベストアルバムのコンセプトは何だったのでしょうか?
茅原:Disc1は、10周年に出した『SANCTUARY ~Minori Chihara Best Album~』以降のシングル曲とアルバムのリード曲、それに加えて過去にリリースしてきた楽曲のいわゆる鉄板の曲をまとめました。
「茅原実里といえばこの曲だよね」っていう名刺代わりになるような楽曲たちを選びましたね。あと15周年の記念ソング「We are stars!」。
Disc2は、プロデューサーの方から、「キャラクターソングを集めたアルバムにしませんか?」と提案していただいた形です。
キャラソンアルバムはずっと憧れがあったんですけど、曲によってレコード会社も全然違いますし、ハードルが高そうなイメージがあって……。でも色んな役を演じて素敵なキャラソンを歌ってきているので、そういうアルバムを作るタイミングが来たらいいなと、昔からずっと思っていたんです。
だから今回のベストアルバムにキャラソンを収録できるというのは、すごく嬉しくてありがたいことだなと。それでこの2枚構成になりました。
茅原実里名義の楽曲で私を知った方もいれば、アニメから知ってくれた方もいらっしゃると思うし、キャラソンから入ってくださった方もいると思います。色んな入り口から私のことを知ってくれたり、ファンになってくれた方がいらっしゃると思うので、どこから入ってきてくれた人でも楽しんでもらえるようなベストアルバムにできたら良いなって。
最新曲の「We are stars!」も入ってるし、今の茅原実里もしっかり感じてもらえるという内容にできたらベスト。名刺ですもんね、ある意味ベストアルバムって。最強の名刺。
――確かにそうですね。「とりあえずこれ聴いて」っていう意味でも。
茅原:本当そうですよね。これ聴けばもう分かっちゃう!!そこにキャラソンの存在が寄り添っているのはすごく意味深いです。歌手としても声優としても歩んできた歴史がこのベストアルバムに詰め込まれているっていうのは、すごいありがたいですね。
――しかも長く応援している方だと特に「2枚目のベストアルバムか!」と感慨深いですよね。
茅原:感慨深いですよね。私もそうだけどファンのみんなもそうだと思います。同じ気持ちでいてくれる気がします。
今回はリリース順に収録しているんですけど、去年の15周年のライブでもリリースしてきた「純白サンクチュアリィ」から最新のシングルまでをリリース順に全部歌っていくライブをやらせていただきました。
「このタイミングのこの曲でファンになった」というそれぞれの想いがやっぱりあって、それはファンだけじゃなくてスタッフの方もそうなんです。「ここからチームの一員になった」って振り返りながら楽しんでもらえていたみたいで。
このベストアルバムを聴けば、キャラソンを含め、ファンのみんなも各々のタイミングを思い返しながら楽しんでもらえるんじゃないかなと思いますね。
――時系列になっているのはいいですね。
茅原:1枚目の『SANCTUARY ~Minori Chihara Best Album~』がそうだったので、今回もそうなりました。タイトルも「SANCTUARY」以外には思い浮かばなかったので、「『SANCTUARY Ⅱ』でいきましょう!」っていうことで。
――冒頭の1曲目から5曲目(「純白サンクチュアリィ」「Paradise Lost」「TERMINATED」「境界の彼方」「FOOL THE WORLD」)くらいまでは特に人気の曲が詰まっていると思います。この辺はやはり茅原さんとしても外せなかった選曲だったのでしょうか?
茅原:前回のベストアルバムに収録されていましたけど、もう一回入っている曲は茅原実里の楽曲として、絶対に外せない曲!……って言い切りたいのですが……やっぱり悩みはしました(笑)。
――ベストアルバムを作るときって、どうやって楽曲を選ぶんですか? スタッフさんと話されているとは思うのですが。
茅原:会議で話しながら決めました。でも割とスムーズだったような気もします。「これ、これ、これ、いやこれじゃない、じゃあこれだね」みたいな。決まるのは早かった気がします。
キャラソンアルバムは、私が入れたいというものをリストアップして、ほとんどそれが叶った形でした。大人の事情で収録できないものもあったんですけど、ほとんど入れたいものが入れられた感じです。
キャラソンのこだわりとしては、とにかくソロで歌っているものを収録しようと思いました。グループやユニットのものも含めたら、とんでもない数になると思うので(笑)。
それこそ『涼宮ハルヒシリーズ』だけでも膨大な曲数なんです。いつぞやは一年の間に『ハルヒ』関連の曲だけで何十曲レコーディングしたんだろう? みたいな年もあって。あの時は本当にすごかった。
――スタッフさんと話しててもパっと決まったというのは、チームとして意思疎通がちゃんとできている、意識共有ができているということなのでしょうか?
茅原:もちろんそうですし、ライブも定期的にやらせていただいているので、ファンのみんなが感じているものをしっかり共有している部分も強いと思います。
だから、「これを選んだら間違いないね」「これ入れた方がいいね」っていうのは一致しているんだろうなと思います。
――そういう意味ではライブのセットリストを作る感覚に近いのかもしれません。
茅原:私をあまり知らない人にも聴いてもらって「いいな」って思ってもらえる作品になっていたらいいですよね。
最近のシングル曲は割としっとりしてる曲が続いていたので、最近茅原実里を知った方が昔の曲達を聴いたらどう思うのかなって。
「会いたかった空」のテンポは早いけど、とてもエモーショナル。「ありがとう、だいすき」も「みちしるべ」も「Remained dream」も「エイミー」しっとりしている。
昔に比べると、今そういう楽曲を求められたり与えられたりする頻度が増えてきたということは、ステップアップのタイミングでもあるのかな、なんて感じています。
――個人的な意見としては、“歌えるようになった”というのが大きいんじゃないでしょうか?
茅原:うーん、どうなんでしょう?(笑) 難しいですよね。勢いで誤魔化せない楽曲たちがどんどん増えていっているという感じです(笑)。成長し続けていかないと楽曲に置いていかれてしまうので努力します。
でも、やっぱりキャラソンは良いですよ〜。どっちかといったらDisc2の方がDisc1よりもワクワクしています(笑)。本当はDisc1がメインなんですけどね(笑)。