TVアニメ『ふたりはプリキュア』の声優・本名陽子&ゆかな、西尾大介監督、鷲尾天プロデューサーがクロストーク「子どもたちに嘘はつきたくない」
ふたりがプリキュアになった理由
──ここで改めて“ふたりがプリキュア”になった物語について教えてください。キャストを選ぶオーディションに本名さんはバイトを抜け出して参加したとか。
本名:そうです。当時、芸能活動を再開したものの、行き詰まりを感じていまして……(※本名さんは中高生の時にジブリ作品『おもひでぽろぽろ』や『耳をすませば』に出演。大学に進学後、学業に専念するため一時休業していた)、そんな時にオーディションのお話をいただいたんです。
「これを最後のチャンスにしよう!」とオーディションに臨みました。ただどうしてもバイトの代わりの方が見つからなくて、バイトを抜けてオーディションに行くことに。自分でも「よくあんな無茶したなぁ」って思っています。
それでオーディションに駆け付けたのですが……会場に行ったはいいものの、テレビシリーズのアニメは初めてだったのでその雰囲気に圧倒されてあたふたしていたら、小浜さんが「早めに出たい方はいらっしゃいますか?」と聞いてくれたんですね。
本来はオーディション会場でそういうことって聞かれないんですよ。仮にそういう方がいても先に事務所を通して伝えているはずなので。ですが、私はここぞとばかりに「はい!」って手を挙げて。
ゆかな:「はい!」って言ったの、鮮明に覚えてる。「えっ、ここで!?」って(笑)。
本名:多分みんな「え!」ってなったと思うんですよ(苦笑)。
一同:(笑)
本名:必死だったんです。「とにかくバイトに戻らなきゃ」と。でもあとから思い返すと……自分はなぎさとキャラクターが離れていて、共通点が見いだせない。
むしろ憧れに近いような存在だと思っていたんですけど……土壇場での思い切りの良さが、オーディション会場でポロポロこぼれ落ちていたなと。
ゆかな:うん。はたから見たら、ポロポロ出てたよ(笑)。
本名:私一応、芸歴が長くてですね。
──はい、もちろん存じ上げております(笑)。
本名:にも関わらず、その時だけはそんな行動をとってしまいまして……。
西尾:(吹き出すように笑いだして)もうね、この説明の仕方がキャラクターそのもの。なぎさそのものだよ。
ゆかな:そういうことがあって、なぎなぎの順番が早くなったんだよね。それで、ふたりで一緒にブースに入ることになったんです。私はその日もう少し時間に余裕があったので、そのあと他のかたとも一緒にブースに入って掛け合っていましたが。
本名:最初は私はほのか役、(ゆかなさんは)なぎさ役で受けていたのですが、チェンジして演じたんです。
──オーディション段階で同じブースに入っていたって奇跡ですね。
鷲尾:それは凄いですよね。僕もちょっとビックリしたかな。
──おふたりに選んだ決め手というのはなんだったんでしょう。
西尾:僕はこの2人しかいなかったですから。オーディションをやったときの印象、雰囲気が「この人たちだな」と。
これは他のインタビューの繰り返しになってしまいますが、優劣をつけるわけではなく、他のかたたちも素晴らしかったんです。でも、この2人を見たら……「この2人なんだろうな」と。そのままですけど(笑)。
当時は本名さんとは初対面だったし、2人についてそこまでよく知っているわけではないんですが「この人たち、(キャラクターのセリフを)普段から言いそうだな」って予感があった。あとから本名さんには「自分のイメージやこれまでの役柄となぎさは全然違うんですよ」と言われて「えーうっそー!」って(笑)。
鷲尾:西尾さんはこの話をすると否定をするんですけど……なぎさとほのかというキャラクターは、西尾さんの持つ2つの側面だと思っているんです。
今バーッと話しているときの外面はなぎさなんですよ。だからオーディションのときは「外で話しているときの自分を表現できるひとって誰だろうな?」って考えながら、なぎさを選んでいたと思うんです。
その一方で「いつも自分が一人で深く考えていることを表現してくれる人は誰だろう?」ってほのかを見ていたと思う。
無意識だと思うんですけど。その感覚がこの2人のオーディションのときにバチッと合ったはずなんですよ。ふたりが役を入れ替えたときに、こっち側の空気感が変わった気がしましたから。
西尾:自分だと分からないけどね。
鷲尾:でもそれは随分経ってから気づいたんですよ。「ああ、そうか。そういうことだったのか」って。