音楽
fripSide『超電磁砲T』OP「final phase」に託した想い

「fripSideに寄り添ってくれた『超電磁砲』に恩返ししたい」──7年振り『とある科学の超電磁砲』とのコラボレーション! OP曲「final phase」を八木沼悟志、南條愛乃が語る

「final phase」制作を振り返って

──「final phase」の制作についてさらに詳しくお話を聞かせてください。制作にあたっての最初のとっかかりのようなものはなんだったんでしょう?

八木沼:アニメサイドの皆さんから「こういう内容になります」と資料をいただいて。僕は『超電磁砲』が好きですから、ノベルもコミックも日々追っているんです。だから「次は大覇星祭をやるよ」って言われたときに「あ、やっぱりな」と(笑)。だから比較的容易に制作に入れました。

──個人的にタイトルの“final”という文字を見て少しドキりとしたんです。これにはどういう意図があるんでしょう。

八木沼:それにはそんな重い意味はなくて。今までも美琴の状態、物語によって曲名を考えてきているんです。レールガンのストーリーと共に一緒に歩んできましたが、今回は……

あんまり言ってしまうとアニメのネタバレになってしまうので控えめにしますが、端的に言えば今回のアニメの山場に焦点を当てた題名です。最後までアニメを観ていただけたら、このタイトルは120点だな!ってなると思いますよ。

──そういうことでしたか。では南條さんが「final phase」を聴いたときの反応というのは、どんなものだったんでしょうか。

八木沼:僕はいつも反応を気にしていないので分からないですね。「完成したよ~歌って~」って(笑)。

──(笑)実際どうだったんでしょうか。

南條:イントロど頭がすごくキャッチーでしたね。今回はこうなるんだ!と。『超電磁砲』の曲って始まりから熱いというか、すぐに何の曲かわかるじゃないですか。そこに新たな仲間が加わった感じでした。

 

──ところでfripSideの特徴でもあるシンセの音が「final phase」でよりブラッシュアップされている印象がありました。最新作なので当たり前かもしれませんが“最新”感がすごくあったというか。八木沼さんのなかでは、どんなこだわりがあったのでしょうか。

八木沼:アルバム曲、タイアップ以外の曲を作っているなかで、新しい音、アプローチ……日々いろいろな実験をしているつもりなんです。10年もやってると世の中の音楽の流れや機材が変わってきていますから。

たとえば今回でいうと「sister’s noise」「only my railgun」と比べるとテンポが実は速いんです。同じ、もしくは近いように聴こえるかもしれないんですが、随分テンポアップしているんです。

──具体的にはどれくらいテンポアップを?

八木沼:「only my railgun」のBPMが143くらい。今回は149なんです。以前は149のテンポでこのような曲のアレンジって僕はできなかったと思います。

fripSideでもっと速いロック曲はあるんですが、4つ打ちの曲の場合は難しいんです。重厚感と疾走感があって、それでいて速くて音を詰め込むのは……まあまあな経験がないとできないことだと思うんですね。

「only my railgun」「sister’s noise」を149に速めて聴いてもらうと破綻するのが分かると思います。クリエイターの皆さんじゃないと分からないお話かもしれませんが……今回何がいちばんうまくいったかといえば、149のテンポでこの曲調が破綻なく完成したことですね。

4つ打ちで速い曲自体はたくさんあるんですが、たいてい音を間引いてるんですよ。ユーロビートとかもそうですけど。でもそのままそれをやってしまうと古いというか。fripSideらしいアレンジで149を、しかも破綻なくできるというのは難しい。

実は149という数字にも裏があって。150でも、149.1でも破綻してしまうんです。ギリギリの数字なんですよね。148.9と最初悩んだんですけどね。「○○○.1」という細かい数字のテンポは、わりといつも挑戦しています。

──少しでもズレてしまうと違和感が生まれてしまうものなんでしょうか。

八木沼:「せわしない」、「やりすぎ」、もしくは「物足りない」という印象になるんです。もうこれは職人技だと思います。

 

──それで149というリズムに。でも150近いとかなり速いイメージがあるんですが、不思議とそういったことは感じませんでした。それにはマジックがあるんでしょうか。

八木沼:むしろ分からないのが僕にとって成功というか。速いけどそう感じさせない。以前の『超電磁砲』の曲と変わらないなって思わせられたら、僕の技術が生きてるということじゃないかなと。

──要素がギュッと詰め込まれた早い曲というのはここ数年音楽シーン全体に増えていますが、どういう背景があるんでしょうか。

八木沼:僕らの場合は、単純にアニメのオープニング、エンディングの作画が10年前よりも動くようになったからというのが大きな理由ですね。

カット割りも多いし、制作サイドに「今回はゆっくりやりたい」といった意思がない限りはスピード感を求められていて。その分89秒にもいろいろなものを詰め込めますから。そういう意味でも2020年に合わせる必要があるのかなと……

──確かにそうですね、今回のOPもすっごい動いていますし……。そう考えると『され竜』のOPバラード(「divine criminal」)って異例中の異例だったんですね。

八木沼:ああ、そうですね。確かにレアなケースです。事前に「バラードで」という指定をいただいてたので。あの曲……いい曲だよね(笑)。

 

──(笑)南條さんは「final phase」を歌われるとき、テンポのことは意識されていたのでしょうか?

南條:いや何も聞かされてはなかったですけど、曲資料もらって初めて聞いた時に、「めっちゃ早いな!」って思いましたよ(笑)。

fripSide“ならでは”のMV 今回は……

──シングル初回限定版にはMVに加え、TVアニメ「とある科学の超電磁砲T」MV for “final phase”(特別編集アニメ映像)収録……とあるんですが、これはどんな映像なんでしょうか?

八木沼:「final phase」のために作ってくれた特別編集アニメ映像がつくんです。カッコイイですよ。そちらも必見ですね。

──楽しみです。初回限定盤のMV自体はスカイツリーで撮影されていて。

八木沼:夜貸切りました。すごく綺麗でしたね。

南條:スカイツリーの中からの夜景も綺麗でしたね。展望台初めて登ったんですけど、東京って綺麗なんだなあって初めて思いましたね(笑)。でも深夜の撮影で、空調は切られてたので屋内でも寒かったですね……。

──それは寒そうです……。今回は普通のMVなのか!? と思いきや、最後にあの方たちが……。

八木沼:毎回笑いには挑戦していて、今回も芸人さんが出てくれました。実は僕彼らの大ファンなんです。皆さんにどう楽しんでいただけるか楽しみですね。
 

 

──10年間の集大成、ミュージッククリップ集も、4月1日にリリースされますね。

八木沼:結構埋もれたMVもあると思うんです。皆さんが気づけていないもの、「えっ、こんな凄い人が出てたの?」などがあると思うので一回ちゃんと見てほしいなと。

あと10年間のものがギュッと詰まっているスーパーベスト的な内容になっているので。fripSideというとライブのイメージが強いと思いますが、実はミュージックビデオも……大の大人が集まって本気でふざけてる。茶目っ気たっぷりなNBCと愉快なfripSideが一生懸命作ってきたMVを観ていただけたらなと。

SDの映像がブルーレイ化にあたってHDになる予定なんです。どこまで綺麗な映像に変わるかは僕もまだ未知数なのですが、なるべくいい状態で皆さんにお届けできればと思っています。

南條:ディスクを入れ替えなくても全部MV見られるのはとても便利だなあと!でも自分の10年前の姿から一気に見られると思うとちょっと恥ずかしいというか、恐怖ですね(笑)。

──「only my railgun」を2020 versionも収録されるんですよね。新録音とアレンジ見直しによる、新規MVになるそうで。

八木沼:はい。今作っているところです。「only my railgun」はあそこまで育ってしまった曲なので、僕がいまガチャガチャ変える必要はないと思っているんですよ。

音はかなりよくなると思います。南條さんの歌声も10年間で変わりましたし。ブラッシュアップした、でも安心できるオケに、南條さんのいまの歌声が乗る、と。あの曲は絶対に壊さないので。

 

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