オリジナルTVアニメ『アクダマドライブ』メインスタッフ トクベツ座談会 ストーリー原案:小高和剛×監督:田口智久×プロデューサー:富永禎彦(studioぴえろ)
自分の想いに正直だから犯罪を重ねる、それが“アクダマ”
――では、それぞれのキャラクターの簡単なご紹介をお願いできますか? まずは“一般人”からお願いします。
小高:キャラクターとしては、“アクダマ”に翻弄される子ですね。
田口:そのくせ我が強い。
富永:監督が考えた裏設定が面白かったです。一度上司と不倫をしたとか、サークルクラッシャーとか。
田口:だから、他人につけ込めるんです。
富永:あとはどのキャラクターもそうですが、オリジナル作品ということもあって、声が入ったことでキャラクター造形がはっきり見えてきましたよね。
田口:そうですね。“一般人”だと、黒沢(ともよ)さんのオーディションテープを聞いたときに、「これが“一般人”だろうな」と直感しました。
――“運び屋”はいかがでしょうか?
小高:とにかく台詞の少ないキャラクターです。シナリオ会議でいつも「台詞、少ないね」って言っていました。“アクダマ”の中では一番目立つ行動を取る、ある意味、主人公的なキャラクターなんですが、なかなか台詞が増やせない。喋りすぎると“運び屋”らしさがなくなってしまうんです。
富永:それは確かにありましたね。
小高:でも、アフレコを見るといいバランスだったなと。あれ以上、べらべら喋ったらちょっと違いますから。
田口:梅原(裕一郎)さんのお芝居も素晴らしいです。抑揚はないのに存在感があるお芝居って難しいんですが、しっかり“運び屋”らしさを出してくださって。本当にうまい方なんだなって納得させられました。
――“喧嘩屋”はいかがでしょうか?
小高:いわゆる筋肉バカですね。でも、“チンピラ”と絡ませることで彼の魅力がかなり引き立ったなと。あれがなかったら、ただのウザい体育会キャラになっていました。
田口:バトルに対して一途な脳筋キャラクターで、ある意味、ピュアな奴です。
富永:自分が犯罪者だとは自覚していない“アクダマ”ですね。
小高:あとは武内(駿輔)さんで本当によかったなと。野太い声のキャラクターなので、おじさんっぽくならないか懸念していたんですが、武内さんのお芝居は野太い中にも若さがあって、かわいげがあるんです。フレッシュな印象になりました。
――では、“ハッカー”については?
小高:最初はもっと子供のイメージだったんです。でも小学生は違うし、中二病の中学生もちょっと違う。結果、さらに大人になった現在のキャラクターになりました。
田口:でも、中二病をこじらせているのは変わっていないですよね。あそこまで露骨に眼帯をしているキャラクターってなかなかいないなって(笑)。
小高:あと、彼のドローンがかわいいんですよ。キャラクター原案を担当してくれた小松崎(類)のアイデアなんですが、中二病感を表しているし、意外とかわいいものが好きなんだってギャップがあってよかったです。
田口:堀江(瞬)さんの青臭いお芝居もまたぴったりハマりましたよね。うまさ、かっこよさを変に押し出すんじゃなくて、「自分超イケてる」って調子に乗った感じを出してくださって、それが絶妙にマッチしました。
――そして、“医者”ですね。
小高:セクシー担当がいないということで峰不二子のようなわかりやすくセクシーな女性にしようと思ったんですが、制作が進むにつれ、ただの露出狂になっていきました(笑)。
田口:胸とか腰の強調の仕方が異常ですよね。今どきのアニメではなかなかいないタイプのキャラクターじゃないでしょうか。
富永:ビジュアルもそうですけど、ただの変な人ですよね。やっていることがほとんど医者じゃない(笑)。
――しかも緒方恵美さんが演じられるんですよね。
小高:さすが緒方さんでしたね。普通、セクシーなキャラも型にはまりがちなイメージがあるんですが、緒方さんはまったく想像のつかないお芝居を提示してくださって。ありがたかったですね。
田口:こういったセクシーな女性役は珍しいですよね。僕も何度かご一緒していますが、少年役のイメージが強かったので、意外性があって面白かったです。
――続いては“チンピラ”です。
小高:“チンピラ”は完全に賑やかしですね(笑)。
田口:一番、何もできない奴ですよね。
小高:そうそう。誰かに寄生しないと生き残れないタイプ。
富永:その流れで喧嘩屋と仲良くなっていきます。
小高:「何もできない」というキャラクター性を考えると必然ですね。
田口:でも、“アクダマ”同士の距離感を大事に描きたいという思いもありましたよね。あとは木村(昴)さんのお芝居が、こういう方向性でくるのかって驚きました。なんとなくチンピラ系のキャラクターって型にはまりそうなイメージですが、「かましに来てる」感じがあってよかったです。
富永:キャラクターデザインのCindy(H. Yamauchi)さんも第1話のアフレコのあと、おっしゃっていたんですよ。「いい意味で違ったから、第1話の画を直さないと」って。それぐらい想像を超えたお芝居でした。
――では、最後は“殺人鬼”です。
富永:このビジュアルで声優さんが櫻井さんってなると、なんとなく声のイメージがつきやすいんですが、蓋を開けたら実は……というのが面白いですね。
小高:まぁ、本物の狂人ですからね。いかに狂った様子を見せるかずっと考えていました。
田口:一番、描くのが難しいキャラクターです。
小高:感情線も無視しないといけないし。
富永:謎のポエムみたいなことをずっと言っていますし。
田口:でも、彼もまたピュアですよね。
小高:“アクダマ”全体がピュアなのかもしれないですね。自分の想いに正直だから、法律やルールを無視して犯罪を重ねてしまう。それが“アクダマ”なんです。