自分が『ハイスコアガール』だけではない、そして頑張れば楽しいことがあると伝えたい――春アニメ『ざしきわらしのタタミちゃん』押切蓮介監督×主題歌アーティスト・ORESAMA座談会
ナーバスな世の中だからこそ毒弱めの優しい作品!?
――今作の見どころや注目ポイントは?
押切:全部に注目してほしいですね。絵、音楽、演出まで何もかも。僕自身ではマンガ家としてある程度のターニングポイントは超えたと思っているんです。
だからマンガという表現以外で何ができるかを模索している時期で、「こんなことができますよ」という自己承認欲求とアピールが強い作品でもあるので、おもしろい世界観を楽しんでほしいですね。
また監督をやらせてもらう機会なんて一生に何度もあることではないと思うので、僕自身が一番楽しいけど、2番目は皆さんであってほしいという気持ちもあります。
――70~80年代の4コマや大人のアニメで見たことがある描写がちょくちょく出てきて、ちょっと懐かしさも感じました。
押切:「ナウい」という言葉だったり、昔の感じを今、よく取り入れるんですよね。それは僕の趣味なんですけど。
――都会や若者あるあるに共感する人や、キモかわ系のキャラにハマる女子、懐かしく感じるおじさん世代など、いろいろな方へのフックがある作品だなとも思いました。
押切:たくさんの人たちが腹の中で思っていたことを代弁するような作品になっていればいいなと思っています。プロデューサーの人たちから毒が足りないと言われたんですけど、意識的に抑えています。
今の人たちはものすごくナーバスなので、すぐ傷つくし、泣くし、怒るし。そういう人たちに毒々しいものを届けてもなあと思って、若干弱めにしています。
「CATCH YOUR SWEET MIND」の歌詞を聴いた時、優しい作品で良かったなと思えたんです。ここでお二人と打ち合わせした時も「本当は優しい作品なんですよ」と言った気がする。
ぽん・小島:(笑)。
押切:曲を聴いた時、このコンセプトでよかったと思えました。
ぽん:ありがとうございます。
――ORESAMAのお二人が感じる、この作品の魅力とは?
ぽん:1日過ごすといろいろなことがあって、家に帰ると疲れ果てて、何もしたくなくなりますよね。そんな時、頭を空っぽにして、笑わせてもらえるのがこの作品の好きなところです。
小島:痛快で、すっきりして、少し毒もあるし、こういうことあるよなと現実社会の側面に改めて触れることができた気がして。
そして見終わったらタタミちゃんに愛情が湧いて。田舎から出てきて、最後に成長したのかわからないですけど(笑)、都会になじんでいるかもとほっこりと温かい心になれるんですよね。
ぽん:(登場するキャラの中で)タタミちゃん精神年齢一番大人説ありますよね。
押切:そうかもしれない(笑)。
――シングルのカップリング曲「ドラマチック」はオリジナルからライブを経て、リアレンジされたバージョンだとか?
小島:過去曲のリアレンジをライブでよくやっていますが、オリジナルを発表した当時よりも自分自身がスキルアップしたり、使えるようになった音やリズムを新たに入れることで新曲に生まれ変わったような感覚があるので、好きでよくやっていました。
それをリリースという形で音源として出したいな、今後も過去曲をリアレンジしていろいろな形でリリースしていけたらいいなという試みの第1弾がこの「ドラマチック-Dressup ver.-」です。
押切先生が『ハイスコアガール』を描く時に聴いていた曲が「ドラマチック」だったと知って、不思議な縁も感じました。
ぽん:導かれるように。
押切:すごく聴いていた曲で、「ドラマチック」で出会って、「ドラマチック」で終わる……終わっちゃダメなんですけど。
一同:(爆笑)
押切:だから自分の作品の主題歌シングルのカップリングに大好きな曲が入るということで、こんなにドラマチックな話はないと思います(笑)。
自分が『ハイスコアガール』だけではない、そして頑張れば楽しいことがあると伝えたい
――では読者の皆さんへメッセージをお願いします。まずはORESAMAのお二人から。
ぽん:ORESAMAとしては主題歌と劇伴を担当させていただいたので、最初からEDまで全部楽しんでいただきたいです。EDの30秒で興味を持っていただいたり、もっと聴きたいと思ってくださった方はぜひシングルを(笑)。これからも『ざしきわらしのタタミちゃん』とORESAMAの楽曲を楽しんでくださいね!
小島:主題歌だけではなく、初めての劇伴制作というチャンスを与えてくださった押切先生やスタッフの皆さんに感謝しています。笑って脱力できるストーリーになっていると思いますので、音楽も一緒に楽しんでいただけたらいいなと思っています。
主題歌しかORESAMAの曲を知らないという方には他にもいろいろなタイプの曲があるので、これを機に過去の曲を聴いたりしていただけたらうれしいです。
――最後は押切先生、お願いします。
押切:僕は『ハイスコアガール』の人と思われがちですが、それは非常に寂しいことで。『ハイスコアガール』だけではないということをこの作品で知らしめたいです。どうやら僕は運がいい人みたいで、自分の好きな人やものに囲まれて仕事ができて。頑張っていれば僕のように楽しいことがあるんだぞと、皆さんのお伝えしたいです。
ぽん:私は押切先生がタタミちゃんに見えてきました(笑)。
押切:そもそも僕の分身ですから。そんな分身と作品を愛してもらえたらいいなと思っています。大好きなORESAMAと一緒に作っているので、まずはこの世界観を見て、楽しんでほしいです。もしうまくいったら続きもやりたいです。
ぽん・小島:やりたいです!
押切:願わくば今後もORESAMAとコラボレーションできたらいいなと思っています。
ぽん:私たちも期待しています!
作品情報
『ざしきわらしのタタミちゃん』は2020年4月10日(金)20:00からdTV・dアニメストアほかにて配信スタート!
イントロダクション
かわいい! だけど毒舌!!! 令和新時代の、クセカワニューヒロイン“タタミちゃん”が大都会・東京に住まう幽霊や妖怪、そして人間たちをバッサバッサと切り捨てる……! “押切節”全開の、痛快ホラーギャグコメディ、ここに開幕!!
幸せを呼ぶキュートな妖怪・ざしきわらしのタタミちゃんが東京に憧れ、遠く岩手の遠野より上京。大都会に住む魑魅魍魎たち(幽霊や妖怪、人間)と生活していくお話です。
様々な出会いを通じ、ときにほっこり、ときに風刺の効いたストーリーでタタミちゃんの成長を描いていきます。
スタッフ
原作・監督・脚本・キャラクター原案:押切蓮介
アニメーション制作:ZERO-G
音楽:小島英也(ORESAMA)
製作:「ざしきわらしのタタミちゃん」製作委員会
キャスト
タタミちゃん:井澤詩織
大家:新井里美
くすぐり坊主:杉田智和
霊:佐藤恵
ぽんぽこ丸:上田耀司
イナノガワ:BBゴロー
カラオケ店店長:藤原啓治
お菊:香坂さき
カラオケ店店員:大塚琴美
ORESAMA「CATCH YOUR SWEET MIND」
2020年4月15日発売
1,200円(税別)
発売:エイベックス・ピクチャーズ