音楽
かくしごと、かぐや様は告らせたい ――時代を超えた名曲と、時代を駆け抜けてきたレジェンドの楽曲

『かくしごと』『かぐや様は告らせたい』――時代を超えた名曲と、時代を駆け抜けてきたレジェンドの楽曲、2020春クールアニメ注目の2曲を紹介

TVアニメ『かくしごと』のエンディングテーマ「君は天然色」、そして『かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~』のオープニングテーマ「DADDY ! DADDY ! DO ! feat. 鈴木愛理」。2020年春、同時期にアニメの主題歌に起用された2曲を歌うのは80年代、日本の音楽に新しい風をもたらした二人だった。ここでは今なお新鮮に響く2曲を紹介していきたい。

君は天然色|大滝詠一

今でもよく聴く懐かしいアルバムが何枚かあって、その中に、日本語ロックの元祖、はっぴいえんどの『風街ろまん』(1971年)と元祖J-POPといえる大滝詠一の『A LONG VACATION 30th Edition』(2011年)がある。ちなみに後者は、81年3月21日にリリースされた大ヒットアルバムのリイシューであり、はっぴいえんどはその大滝もメンバーでデビューから半世紀を経て未だ現役で活躍している細野晴臣、松本隆、鈴木茂らによるロックバンドだ。共に昨今、Youtube経由で海外でも話題になっているCITY POPのマスターピースとしても知られている。

なぜ、ちょくちょく聴きたくなるのかと言うと、それぞれのアルバムには、「風をあつめて」/はっぴいえんど(作詞:松本隆、作曲:細野晴臣)と「君は天然色」/大滝詠一(作詞:松本隆、作曲:大瀧詠一)が収録されていて、この2曲を日常で本当によく耳にするからだ。今現在でも、この2曲はCMソングとして流れている。つまりそれだけ普遍的で、多くの人に愛され続けている名曲ということになる。

しかも「君は天然色」は、4月クールのTVアニメ『かくしごと』のエンディングテーマにも起用されている。あの印象的なイントロが流れた瞬間驚いたが、カバーではなくオリジナルの大滝詠一の声が流れてきたことにさらに驚き、同時に嬉しさがこみ上げてきた。それにしてもサウンドといい、涼し気な歌声といい、なんとみずみずしく響いてくるのか…。イントロの華やかさ、そしてアウトロの切なさと余韻。さらに、はっぴいえんどでバンドメンバーとして同志だった松本隆の歌詞世界は、たった数分で映画を1本観たかのような彩りを与えてくれる。

この曲のサウンドのルーツ的な話は長くなるので置いておくとして、ここ最近の声優アーティストブームを見てきて、ひとつ気づいたのは、昭和のアイドル、歌謡曲テイストの楽曲が増えたことだ。それだけでなく自分が生まれる前に流行っていた昭和アイドルへのリスペクトを口にしたりカバーする声優も多くいた。

また、「これは昭和アイドルっぽい曲だね」と言うと、どこかに懐かしさは感じつつも、「すごく新鮮な曲だった」という感想が返ってきたこともある。これが今の子には新鮮に響くのか!と思ったものだが、歴史は繰り返すというのは、どうやら本当らしい。


ただ、これは想像なのだが、若い世代の親世代の青春がちょうど80年代くらいなので、幼い頃、知らず識らずのうちにそういう音楽に触れていて、だからこそ懐かしさを感じていたのかもしれない。ちなみに、その時代のアイドルの象徴であり、今も活躍を続ける松田聖子の4thアルバム『風立ちぬ』(81年10月)は、全作詞を松本隆が手掛けているし、タイトル曲を含めた半分は大滝詠一が作曲をしている。その他、この時代のポップスにおける彼らの功績は計り知れないものがあるので、ぜひ深堀りしてみてほしい。

そう考えてみると、70年代80年代の音楽を懐かしむ世代、それを新鮮に感じる若い世代が交差する今という時代に、名曲「君は天然色」がアニメに起用され、注目を集めているというのもうなずける。しかもそれが、大滝詠一のデビュー50周年と重なるというのも感慨深いことだ。


さらに言うと、松本隆は、安田成美の「風の谷のナウシカ」(作曲は細野晴臣)や、姫乃樹リカの「硝子のキッス」(『めぞん一刻 完結篇』)、「スタンド・バイ・ミー」(『YAWARA!』)、ランカ・リー=中島愛の「星間飛行」(『マクロスF』)、キャプテンストライダムの「風船ガム」(『銀魂』)など、アニメの主題歌やイメージソングの作詞を数多く手掛けてきているし、80年代を代表する作詞家の秋元康や作曲家の筒美京平も、ここ10年内でアニソンを手掛けているので、彼らが生み出してきたものは、アニソン界にも連綿と受け継がれていることは間違いない。


大滝詠一は、2013年に惜しくも逝去されているのだが、現在も、彼の残したレガシーはリリースされ続けている。「君は天然色(かくしごと Ver.)」も今年3月21日にリリースされたアルバム『Happy Ending』の初回生産限定盤のDisc2に収録されているので、これを期に、彼の音楽の軌跡を辿ってみることもオススメしたい。

また、オリジナルVerはもちろん、TVアニメ『かくしごと』に登場する女性キャラクター陣によるカヴァーを収録した、全曲が「君が天然色」という異例のアルバム『TVアニメ「かくしごと」イメージアルバム feat.君は天然色』もリリースされているので、そちらも要チェック!

 

DADDY ! DADDY ! DO ! feat. 鈴木愛理|鈴木雅之

さて、大滝らと同年代に活躍し、昨年、「アニソン界の大型新人」として堂々アニソンデビューを果たしたアーティストがいる。ラヴソングの王様・鈴木雅之、愛称マーチンだ。大滝とも親交が深かった彼だが、こちらはロック&ポップスではなく、日本のR&Bの礎を築いた人物と言われている。

80年にシャネルズとして、今も愛される名曲「ランナウエイ」でデビュー。その後83年に名前をラッツ&スターとし、「め組のひと」を大ヒット曲させ、ドゥーワップという歌唱スタイルを日本に広めていった(ちなみに、その次のシングル「Tシャツに口紅」は、作詞:松本隆、作曲:大瀧詠一によるもので、100曲近くもカバーされている「夢で逢えたら」も大瀧作品である)。

個人的に、TVアニメ『Gu-Guガンモ』のOPテーマ「ガンモ・ドキッ!」などは、「め組のひと」の匂いを感じるので、アニソン界にも少なからず影響は出ていたのではないかと予想している。

それから30年以上の時を経て、昨年『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』のオープニングテーマに起用されたのが「ラブ・ドラマティック feat. 伊原六花」だ。アニソン界にもファンキーな楽曲は増え始めたものの、アダルトなムード漂う楽曲というのはさほどなかったので、かなり新たな風を吹かせたと思っている。

そしてシャネルズからちょうどデビュー40周年のこのタイミングで、再びかぐや様と鈴木雅之のコラボが実現。オープニングテーマ「DADDY ! DADDY ! DO ! feat. 鈴木愛理」を完成させた。この曲も前作にも増してソウルフルでアダルトなのだが、どんなポップチューンも彼が歌うと、途端に大人なムードになってしまうから偉大だ。

また、今回フィーチャリングされた鈴木愛理(元℃-uteで、現在ソロアーティストとして活躍中)も、存在感のある美しいコーラスを聴かせてくれている。MVでも、彼女はスタンドマイクを自在に操り、キュートなだけではないセクシーさも醸し出している。この男女の掛け合いによるデュエットが、この曲の色気をよりパワーアップさせている。


ちなみにアニメには、こんなアダルトなムードはないのだが(笑)、男女の恋の駆け引きをテーマにしたラブコメなので、曲の内容やラヴソングを歌い続ける鈴木雅之の存在、そしてアニメの主人公・四宮かぐやと白銀御行の関係性を彷彿させるデュエットがアニメとの親和性を高めているのだろう。

さらに、アニソンに鈴木雅之を起用したという意外性や自らを「アニソン界の大型新人」というパワーワードのキャッチコピーを楽しんでいるその姿が、アニメファンの心を燻り、それが新旧2作共に、iTunes R&B/ソウルチャートで、約二か月もの間、現在も1・2フィニッシュを続けるという人気にも繋がったのだろう。


一方は色褪せない、時代を超えた名曲、もう一方はいくつもの時代を駆け抜け、なお一線で歌い続けているレジェンドの楽曲。この2曲が同じクールの主題歌になっているのは歴史的なことだと思う。

[文・塚越淳一]
 

大滝詠一 リリース情報

Happy Ending (初回生産限定盤)

 2020.03.21/アルバム/3,000円+税

大滝詠一 公式サイト
 

鈴木雅之 リリース情報

DADDY! DADDY! DO! feat. 鈴木愛理

 2020.04.15/シングル/1,364円+税

ALL TIME ROCK 'N' ROLL

 2020.04.15/アルバム/3,636円+税

鈴木雅之 公式サイト

(C)久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会
(C)赤坂アカ/集英社・かぐや様は告らせたい製作委員会
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