【そろそろBLのこと知ってみませんか?】いまさら聞けない商業BLの世界!「アニメイト編集部BL塾」開校【前編】
2020年、BLコンテンツの供給がやばい
阿部:2020年は続々と商業BLマンガ作品が映像化されているんですよ。2018年4月に放送されたドラマ『おっさんずラブ(※8)』を皮切りに、BLへ寛容な人が増えた印象があります。
※8:おっさんずラブ
2016年よりテレビ朝日系列で放送されている人気テレビドラマシリーズ。田中圭さん、吉田鋼太郎さんなどそうそうたるキャストが出演。地上波で実写BL作品が放送され話題に。
石橋:『おっさんずラブ』はすごい人気でしたもんね。
阿部:同じく2018年にFOD(フジテレビオンデマンド)配信と関東圏の地上波放送がされた商業BLマンガ『ポルノグラファー(※9)』の実写ドラマも反響が凄まじく、2019年には続編もドラマ化されました。2018年はまさにBLコンテンツの転換期だったような気がします。
※9:ポルノグラファー
祥伝社の『号外on BLUE』『on BLUE』にて連載されていた丸木戸マキさんの漫画原作のTVドラマ。竹財輝之助さんが主演。とある大学生と官能小説家の不思議で甘美な関係が描かれる。
石橋:僕らはネットメディアですけど、テレビの影響はすごくあると常々感じています。最近、洋画の吹き替えとしてアニメによく出演している声優さんがキャスティングされていると、アニメイトタイムズのアクセス数が増えますし。
テレビの影響はまだまだすごいんだなって思います。やっぱり家に帰ってテレビをつけるという習慣は今でもありますよね。
阿部:誰でも見られるのは大きいですよね。そんな感じで2018年以降から映像コンテンツがとても増えました。特に2020年のBL映像コンテンツの供給がハンパじゃない。
石橋:そんなにすごいんですか?
阿部:まず2019年にフジテレビが立ち上げたBL専門映像レーベル「BLUE LYNX」から、2020年は3本のアニメ映画が制作されています。
2月に公開された『囀る鳥は羽ばたかない(※10)』は、初のR18指定BLアニメ映画でありながら、ミニシアターランキングで公開初週1位を記録。ほかにも昨年ノイタミナ枠で放送された『ギヴン』が8月、人気BLマンガの『海辺のエトランゼ(※11)』が9月に公開予定となっています。
同じく今年の2月に公開された商業BLマンガ『性の劇薬(※12)』の実写映画化も話題になりました。こちらもR18指定の作品です。
※10:囀る鳥は羽ばたかない
大洋図書の『ihr HertZ』にて連載中のヨネダコウさんの漫画作品。ヤクザの若頭で好色家の一面がある矢代と付き人兼用心棒の百目鬼力(どうめき ちから)が惹かれ合っていく様が描かれる。ヤクザものならではのヒリヒリとしたスリルの中に矢代と百目鬼の複雑な関係が上手く織り込まれた人気作。
◆『囀る鳥は羽ばたかない』作品情報
◆『囀る鳥は羽ばたかない』公式サイト
※11:海辺のエトランゼ
祥伝社の「onBLUE comics」にて連載中の紀伊カンナさんの漫画作品。小説家の卵でゲイの橋本駿と高校生・知花実央の恋愛ストーリーが描かれる。「心が洗われるようなボーイズラブ」というキャッチコピーがつけられるほどのピュアな関係が話題に。
◆『海辺のエトランゼ』作品情報
◆『海辺のエトランゼ』公式サイト
※12:性の劇薬
フューチャーコミックスの『BOYS FAN』にて掲載された水田ゆきさんの漫画作品。自殺を図ろうとした元エリートサラリーマンの桂木の前に現れた謎の男・余田。余田は桂木にありとあらゆる「性」を与えることで桂木に「生」を感じさせる、というストーリー。過激な内容ながら100万DLを突破する人気作。
石橋:(タイトルを検索してとある画像を発見し)おお……これは……! すごいの見つけちゃった……。
阿部:かなり過激な作品だったので、実写映画化されると決まったときは大変驚きました。ただ、こちらの『性の劇薬』は、「富川国際ファンタスティック映画祭」「ボストンLGBTQ+映画祭」にノミネートされるほど評価が高い。Netflixに配信されたので、ぜひご覧になってみてください(笑)。
石橋:一人でこっそり見ます(笑)。
阿部:9月には行定勲監督、関ジャニ∞の大倉忠義さん主演で『窮鼠はチーズの夢を見る(※13)』の実写映画も公開予定と盛りだくさんです。
※13:窮鼠はチーズの夢を見る
小学館の『NIGHTY Judy』にて掲載された水城せとなさんの漫画作品。サラリーマンの大伴恭一と大学時代の後輩・今ヶ瀬渉の恋愛模様を描いた作品。BL作品ながら女性キャラクターとの恋愛模様も描くなどリアルな心理描写が人気を博している。
◆『窮鼠はチーズの夢を見る』作品情報
◆『窮鼠はチーズの夢を見る』公式サイト
石橋:そんなにいっぱいあるんですね!
阿部:はい。また最近では、海外のBLコンテンツが日本で盛り上がりを見せています。「タイBL」とか。
石橋:「タイBL」……? タイってあの国のタイ?
阿部:今、タイで放送されているBLドラマが日本でとても流行っているんですよ。『2gether The Series(※14)』というドラマがかなり流行って、「タイBL」という一つのジャンルを確立させました。
あとは中国で人気のBL小説『魔道祖师(※15)』のアニメが2020年9月に日本で配信予定されています。アジア圏を中心にBLがアツい! というお話でした。
※14:2gether The Series
JittiRainさん原作の小説を原作としたHousestories 8とGMMTV制作のタイのTVドラマシリーズ。偽装恋愛だった大学生二人が本当の恋愛に発展するストーリーが描かれる。タイはLGBTQコミュニティが活発な国のひとつでもある。
※15:魔道祖师
中国のオンライン小説サイト「晋江文学城」にて連載されていた墨香銅臭さんの小説作品。妖魔、邪鬼などが登場する中国のファンタジー作品で、それらを退治する修行者の姿が描かれる。ドラマ、アニメ、ゲームと様々なメディアミックスも行っている。
石橋:すごい! BLはワールドワイドになっているんですね。
BLを語る上で重要な「攻め・受け・リバ」
阿部:さて、BLの基礎知識が身についてきたところで、BLの魅力についてお話していこうと思います。
石橋:センセイ、お願いします。
阿部:BLって男性どうしの恋愛が描かれている“だけ”と思われる人もいると思いますが、BLの中にもさまざまな設定やテーマが潜んでいます。少年マンガや少女マンガにスポーツやファンタジー、コメディなどがあるように、実はBLにもあるんですよ。
石橋:噂には聞いています。僕が取材させてもらった『ファインダーシリーズ』は?
阿部:あれは裏組織系(ヤクザやマフィアを題材にした作品)ですかね。
石橋:裏組織系……。アウトなレイジ系ですね。
阿部:あれは違いますが……。いや、見方によっては……。
石橋:センセイが思考の迷路にハマりそうなので進めましょう。そういえば、BL好きな方は裏組織系が好きな方が多いですよね。やまねあやの先生がインタビューで「女子が入れない禁断のゾーンを覗いてみたい」と仰っていて、なるほどと思いました。
阿部:非現実的だからこそ魅力的に感じるの、分かるな……。
とはいえ、BLはやっぱり恋愛が主軸です。恋愛を繰り広げるキャラクターたちも物語の肝となってきます。そして、この恋愛を繰り広げるキャラクターたちを語る上では欠かせない要素がこちら。
阿部:ここテストに出ます。
石橋:あはは(笑)。これはさすがに分かりますよ!「リバ」もギリギリ分かります。
阿部:「リバーシブル」の略ですね。攻め受けが特に決まっていません。基本的にこの3つの言葉は挿入の有り無しで決まる表現だと思っています。「精神的に攻めっぽい(受けっぽい)」というようなキャラクターもいるんですけどね。
石橋:これ難しいですよね。挿入のない作品もありますよね? その場合はどう見ているんですか?
阿部:どっちでもいいと言う人もいますけど、私の場合はこっちが攻めであってほしい、受けであってほしい、と思って見ているかも。
石橋:なるほど。もし解釈が違ったとき大変そうだな……。