『ゾイドワイルド ZERO』ヒロイン・サリー役・千田葉月さん エバーグリーンなロックナンバー「名もなき旅」制作秘話|インタビュー
本人も知らなかった「名もなき旅」制作秘話
──「名もなき旅」には、どのような気持ちで向かったのでしょうか。
千田:サリーちゃんの声を当てるようになってから半年が経って、今だからこそ乗せられるサリーちゃんの思いがあるなと思ったんです。
自粛期間中に、始まったばかりのころの台本を読み返して、サリーちゃんはどう成長していったのか改めて考えました。荒廃した地球を再生するために突き進んで、最近は仲間が増えて。
でも、サリーだけではなく、レオ、バズ、アイセルさん、みんなそれぞれの葛藤があって。そんなキャラクターたちの背中を押したいなと思いながら歌っていきました。
──等身大の、フレッシュでストレートな歌声に千田さんとサリーちゃんの人柄を感じました。
千田:自分の思いをそのままぶつけました。ストレートに言うことしかできないので(笑)。
──全体的にすごくかっこいい曲なのですが、サビは明るくてキャッチーで。高音のコーラスと相まって、柔らかい心地よさを感じます。
千田:コーラスキレイですよね! 私のストレートな声を優しいコーラスが包み込んでくれているので、優しい球体のようになっていて。あれは私ではなく凛さんの──。
島崎:後ろから口挟んで申し訳ないのですが……実はあのサビのウーハーの声は僕なんです。
千田:ええええ!? うそ! 凛さんじゃなかったんですか!?
──私もてっきり女性の声だと思っていました。
島崎:他はすべて凛のコーラスなんですが、サビの包み込むコーラスは僕のほうで頑張りましたね(笑)。声が高いので、実は得意なんですよ。
──千田さんと島崎さん。サビでひそかにコラボレーションが行われていたんですね(笑)。
千田:衝撃(笑)。今日いちばんのビックリかも(笑)。
声優アーティスト・千田葉月の旅はこれからも続く
──「名もなき旅」には、キャラクター、聴き手を応援する言葉が散らばっていますが、特に<感じるまま進めばいいんだ>という言葉は、心に響くものがありました。千田さん自身もそう感じるような出来事があったのでしょうか?
千田:ありました! 最初のほうのアフレコのは悩むことが多かったんです。どう表現すればいいか分からなくて、ワードひとつに固執したこともあったんですが……そのときに日笠さんが「もうちょっと楽しんでいいんだよ?」って声をかけてくれたんです。「一つひとつの言葉に真剣に取りくむことはもちろん良いことだけど、まずは楽しまないと、心が動かないよ」って。
その言葉を受けて、そういえば、最近楽しめていなかったなと。それからは、台本を読んだときに自分が素直に思った気持ちを大切にしようと思ったんです。まさに<感じるがままに進めばいいんだ>って。
そのままの気持ちでいいんだということを学んで、そのメッセージをキャラクターやみんなに伝えたいなと思いました。この曲を聴いてくださったかたに「大丈夫だよ!」って伝えたいなと。
──葛藤や複雑な感情も入っている曲ですよね。
千田:そうなんですよね。例えば<諦めないのは 君と私 どっちでしょう?>にある「君」というのは、周りの方々だけじゃなくて、自分自身も含んでいるだろうなと思って。
また、<懐かしい声に 背中押されて>という歌詞は、自分の過去にも重ね合わせながら歌いました。自分のやりたいことが分からなくなる時期って誰にもあると思うんです。
私もオーディションの時期、ほんっとうに悩んでて。自分の好きなアニメ見て、初心を思い出していた時期がありました。よく専門学校時代の友だちと「お互い頑張ろうね!」とともに肩をたたいたり、背中を押したりしあっているのですが、その子たちにも刺さってくれたらいいなと思っています。
──いまそれこそ皆「名もなき旅」を歩いている途中だと思うのですが、千田さんの旅に名前をつけるとしたら?
千田:太鼓でドンドン進んでいく旅って感じですかね(笑)。いろいろなことが分かってない状態なので、道自体分かっていないんです。どっちの方向に進めばいいのか分からないので、「いけいけいけドンドン!」って感じです(笑)。たまにぶつかって、道じゃないってわかったら道を戻ってまた進む……という。
──(笑) 具体的な道は分からないにしても、未来予想図はありますか?
千田:声優としての目標は本当にたくさんあるんです! 「キャラクターに“ありがとう”と言ってもらえるような声優になる」という志を大切に、技術や経験を積んで大成していければなと思っています。アーティストとしては……カッコいいアーティストに憧れがあるので、いつかそういうアーティストになりたいです。
──千田さんは透明感があって、どちらかというとかわいいイメージがあるのですが、千田さんとしては“カッコいい”に憧れがあるんでしょうか。
千田:女子高だったせいか、強くカッコ良い女性像に憧れがあるんですよね。専門学校の先輩にカッコいいかたがいたんですよね。
社会人として働きつつ、劇団を立ち上げられていて「あなたみたいになりたいです!」といつも言っていました(笑)。『ゾイドワイルド ZERO』も見てくれているそうで、いつも「見てるよ!」と声をかけてくれるんです。そのたびに鼓舞されています。
──「名もなき旅」のリリース日は誕生日。今年はどんな一年になりそうですか?
千田:自分にとって、最高の誕生日プレゼントです。年を重ねることが楽しみになる日がくるとは。やってみたいことはたくさんあるんです。高いところが苦手なので克服したい(笑)。
高所が苦手なのに、いつか山には住みたいんです。東京育ちなので、自然に囲まれた場所に憧れがあります。きれいな星を見てみたいなぁ。
[インタビュー&文・逆井マリ 写真・相澤宏諒]