「AD-LIVE 2020」演出・川尻恵太さんが語る即興劇の苦労&初参加キャストに期待すること|インタビュー
「AD-LIVE」を裏で支える川尻さんが思う苦労
――演出面では、どんな苦労がありそうですか?
川尻:そもそも「AD-LIVE」は即興劇なので、キャストさんが持ってきたキャラクター設定の通りに進むわけではありません。
そのうえ本番中に出てくる情報はその場で肉付けされることがほとんどなので、僕らは効果を使ったり彩-LIVE(ゲストキャスト)を出したりしてうまくストーリーが運ぶよう導く必要があります。
だけど今回は海上で閉じ込められている設定なので、新たな人や物を次々登場させることが難しいんです。今まで以上にキャストさんを信用しつつ、うまく道標を作ってかなければいけないなと思っています。考えるだけで大変そうです。
……とは言っても、本番になってみないとわからないんですけどね。
――いちばん苦労するのはそこですよね。本番にならないとわからない。
川尻:キャストさんにはどんな方向性で行くのか事前に聞き取りをするので、「なら、こういう小道具を準備しておこう」といった準備はできるんですけど、本当にそれくらいですし、実際に本番で使えるかはわかりません。それを各公演やっているのはやはり大変です。このあたりは、今年に限らずですが。
――確かに。「AD-LIVE」では同じことは起こらないですからね。川尻さんは本番で何が起こっていて、キャストさんたちが何を計画しているのかできる限り把握し、それまで起きたことも踏まえながらゴールにたどり着く最善の方法を考え出すわけですから、集中力も相当なものです。
川尻:なので、どの公演も本番中の記憶はほとんど無いです(笑)。瞬発的にやっているから記憶に残らないんでしょうね。
2019年は2時間前に設定が決まるので一層集中して臨んでいましたが、今回はさらにすくい上げる力が必要なのかなと思っています。1を拾って10に膨らませてあげないといけないというか。
――では、過去に参加した公演(2016〜2019年)で一番大変だったのは、2019年でしょうか?
川尻:実は大変にもいろいろあるんです。準備が大変だったのは2017年ですね。それまで設定は全公演共通だったのですが、この年はテレビ番組だったり宇宙船だったりと設定が12公演全部違ったので、それぞれに用意するものが違い準備段階から大変でした。
本番の演出で大変だったのは、2018年の10周年記念公演。5人でやった公演ですね。5人全員の願いが叶ったら終わりという流れだったんですけど、5人をコントロールしたことがなかったのでとにかく難しかったです。
しかも計4公演しかなかったので、練度を上げることができず……。その場のひらめきで全部やらないといけなかったんですよね。大千秋楽ではすごいことが起こっているので、ぜひ見ていただきたいです。
――大千秋楽の、クライマックスですよね。観客がどよどよしていました。
川尻:僕らも含めてみんなどよどよしていました(笑)。「AD-LIVE」の怖さが全部詰まっている回です。思い切り宣伝してしまいますが、Blu-ray&DVD(「AD-LIVE 10th Anniversary stage~とてもスケジュールがあいました~」11月18日公演)が発売されているので、ぜひご覧ください。