子安武人×子安光樹の親子声優対談!「令和に平成、昭和のお芝居も見せられる声優を目指す」
光樹さんが声優を目指した理由と子安家の教育哲学
――ありがとうございます。ここからは光樹さんが声優を目指したキッカケについてお聞きしたいです。
光樹:僕は小さい頃から父の声優という仕事については理解していて。遊んでいるゲームや見ているアニメから父の声が出てくるのを当たり前のように受け入れていました。友だちにも普通に話していたので。
中学受験をして、(武人さんの方を見て)付属校にも入れてもらって。大学でも勉学を積み重ねてきましたけれども、小さい頃からあった(父の仕事への)憧れやキラキラとしたものを忘れられずにいて。
ずっとその想いが胸にあって。大学で勉強したり研究をしていく中で「こうじゃないな」と思ってしまったんです。研究室という空間に閉じこもって研究に没頭するよりも、なにか発散していきたいという思いが強くなってきて。
そんな自分は研究者には向いていない。沸々と胸の中にずっとあった「声優になりたい」という想いが出てきたのが大学1、2年生のことです。そのことを父に打ち明けたのは...大学4年生の時でした。
――え!?4年生って就職先が決まってる時期じゃないですか?
武人:(身を乗り出して)そう!本当そうですよ(笑)!
光樹:もともと大学院にいくつもりで推薦をいただいていたんです。研究室でも実際、「大学院に進みます」という話をしていたので。...この場を借りて謝罪させて下さい。皆さん、本当にすいませんでした!
――迷いに迷った末に一念発起で声優を志したとうことだったのですね。ただ、大学に通いながら声優活動をされている方も決して珍しくないと思います。完全に役者一本で進むこと決めた理由などはあるのですか?
光樹:覚悟ですね。声優になると決めた時点から「子安武人の息子」ということに大きな意味が出てきますし。中途半端なことは絶対にできません。それに、どうしても研究を続けながら声優もやるというイメージが自分の中に持てなかったんです。
――本当に一大決心だったんですね。光樹さんが「声優になりたい」と打ち明けた時、武人さんはいかがでしたか?父親として、業界を代表する役者として、率直にどう思ったのか訊かせて下さい。
武人:(少し間をおいて)自分の息子が僕の仕事である声優になりたいと言ってくれる。それは、嬉しいことではありました...。ただ、正直「そのタイミング?」っていう(笑)。率直に思ったのがこれでしたね。いい大学にも入ったし。きっと、どこにでも就職できるだろうし。
――父親としては、これまで勉強を頑張っていたところだって見ているわけですしね。
武人:ええ。嬉しさと言うより、戸惑いですね。「え、なんで?」って。でも、そのことについては彼や家族みんなとも話をして。さっきのように彼の決意を聞いたら、まあ半ば戻れない感じの強い想いがあるので「じゃあやってみるしかない」っていうところに落ち着きました。
うん。いくら止めても納得しない部分があっただろうし。成功する、しないはともかく「一度自分で経験してみないと、人生的に納得せず次には進めないだろうな」と思いました。
親としてやらせてあげられるのであれば、彼の人生にとってプラスになるんじゃないかと思うしかなくて。彼がその挑戦を望んでいるのだから、彼の未来を考えて、そうしてあげようと思うようにしました。最終的には「納得するまでやってほしい」なって。
――光樹さんの告白に驚いたものの、意志を尊重した結果だったのですね。少し話は変わりますが、子安家の子育てとはどういうものだったのでしょうか。光樹さんを育てていくなかで大切にしてきたことなどもあれば教えていただけますか。
武人:うーん。色んなことをやらせてみたりとかはありますけど、やっている本人が嫌だとなればすぐに辞めても何も言いませんでした。例えば、光樹のほかにも娘がいますが、彼女にバレエをやらせてみるけれども、途中で本人が「バレエがあんまり好きじゃない」となったら辞めることも止めませんでした。
本人にとってプラスになるであろうことの提示はするけれども、本人の希望でやりたくないのなら無理強いをさせないスタンスでしたね。光樹のときもそうで、まずはいろんなことをやらせてみる。彼がギターをやりたいといえばギター教室に通わせてあげたりとか。
叶えられるものは可能な限り叶えてあげようと。そういう積み重ねがあったなかで、本人の口から「役者になりたい」と言われれば否定はできないですよね。
光樹:うちは否定しないもんね。
武人:どっちにしても反発されるので。自分がそうだったから特に。「ダメだ」と言われて「はい、分かりました」と納得する人ってそうそういないじゃないですか。
隠れてコソコソ続けますよ、絶対に。だったら素直に応援する側にまわりたいなと。みんなでバックアップして、みんなで頑張って行こうぜ!という方が分かりやすくていいですよね。
光樹:本当に色々やらせてもらっていて。実際、やってみたから分かることって沢山ありました。ギターや高校の将棋、勉強もそう。結局どれをやるにしても本気で打ち込まないと高みに届かないなというのが、子安家の教育で分かった話なのかなと。
武人:まあ、当たり前の話ですけどね(笑)。
――「あれをやりたい」と言われた時に否定されない家族というのは素晴らしいですね。1番身近な存在に否定されないからこそチャレンジできるというか。
光樹:じゃあ、なんで僕ビビりなんだろう?最近よく感じることがあって、ラジオでも「気を回し過ぎてる」みたいな話をしていますし。
武人:確かに気を回しすぎなところはあるね。それがビビりと言われればそうなのかもしれないけれども、今はSNSのようなものもあるし。そう考えると今どきの子供なのかな?
まわりの顔色を伺いすぎるという感じなのかもしれないですね。そのことがいけないとは思わないですけど、なにか最初から選択肢を減らしているような、もったいない感じはしますよね。一歩踏み出すまえに辞めちゃうようなもので勿体ないな、と。
――一歩踏み出す勇気を持って欲しいということですね。
武人:ええ。このラジオに関しては生放送ではないですから。何か変なことを言ってしまってもある程度のことは大丈夫だという認識でスタッフさんとやっているので。
そこはもうちょっとまわりを信用して(心を)預けてほしいなと思っています。あくまでも狭い自分の範囲で物事を考えすぎているのかなって。
僕は本当にいきあたりばったりで喋っているけれども、それはきっと何とかしてくれるだろうな、とか。間違っていたら怒られるだろうな、とか、そういう感覚を持っています。
それは仲間内でこれからやっていくにしたとしても、信用とか信頼とか、そういうことをしていければ、もっとやりやすくなるんじゃないかなと。こういうことを今はできなくても、これから学んでいければと思います。
光樹:頑張ります...!