アニメ映画『思い、思われ、ふり、ふられ』山本理央役・島﨑信長さんインタビュー|“片思い”は切ないからこそ美しい
島﨑さんにとっての“片思い”とは?
――本作は“全員片思い”というストーリーで、さまざまな想いが交差しますが、島﨑さんにとって“片思い”はどのようなものだと思いますか?
島﨑:(真剣に考える島﨑さん)……手に入らないものほど、余計に欲しくなるときありませんか?
――ありますね。
島﨑:やっぱり手の届かないものに、人間はより憧れを抱くところがあると思うんです。なので、片思いは成就しなくても、きれいな思い出になったりすると思います。
たとえば、30、40、50歳になっても学生の頃に好きだった高嶺の花、告白もできなかった“あの人”という思い出は、すごく美化されるんじゃないでしょうか。
手に入らないからこその美しさというものが、片思いに限らず、いろいろなものに対してあると思うんです。
いわゆる、トゥルーエンドのように、どこか切なさを残したものはとても美しく感じたり……。
――確かに!すぐ成就する恋よりも切ない恋のほうが、いろいろな感情が入り混じるので美しく感じるときはあります。
島﨑:もちろん、みんなハッピーになってくれたら嬉しいですけど、“別れ”のほうが作品として美しいときもあると思うんです。
そういう美しさを、片思いは持っているのかもしれません。楽しい、苦しい、恋に恋するようなワクワク、いろいろな想いが片思いにあると思いますが、どこか美しさみたいなものが、僕はある気がします。
――ちなみに、島﨑さんはハッピーエンドと片思い、どちらが好みですか?
島﨑:片思いの美しさも好きですが、やっぱり温かい気持ちになれるハッピーエンドが好きです。なので、くっつくまでの話も好きなんですけど、くっついた後の話も大好きでして。
くっつくまでの話は片思いにもなり得るので、どうなるのか分からないからとても美しいですし、ちょっとどこか非日常感もあってドキドキしてしまう。
くっつくとそれがどんどん日常になっていくんだと僕は思っています。「結婚は人生の墓場」という言葉がありますが、日常を積み上げられる、そういう時間を持てることはとても幸せなことだと思うんです。
付き合うまで、結婚するまでの過程はどこか非日常であって、付き合って結婚してずっと一緒にいるようになってくると日常になっていく実感が生まれる。でも、そんな日常の中でも探そうと思えば、新しいこともいっぱいあると思います。
両想いにはそんな生命力に溢れた美しさが、片思いには儚い美しさがあるのかもしれませんね。
――由奈、朱里、理央、和臣の4人の片思いにも、美しさは感じられたのでしょうか。
島﨑:はい。特に、由奈ちゃんの“私を振ってください”と言って告白するシーンはとても美しくて理想的だと思いました。
ふられると分かっていても伝える切ない美しさと、次の一歩を踏み出すために想いを伝えるという生命力に溢れている、とても温かいエネルギーなんです。
由奈ちゃんは切なくて美しいのに、とても温かくて力強さもある片思い。僕の中では、由奈ちゃんの片思いが最強です!
――由奈ちゃんは作中ですごく成長しますよね。
島﨑:めちゃくちゃ強くなります! やっぱりそれでも、朱里よりも周りは見えていないこともあるので、由奈ちゃんがこれから社会に出ていって、いろいろな場やいろいろな人と接するようになったときに、またどのような成長を見せるのか楽しみですし、老婆心ながら、このまま変わらずにまっすぐな心を持ってほしいと思ってしまいます。
もちろん4人とも片思いだけの要素じゃなくて、前に進むという要素を強く持っています。理央はずっと切ない想いをしてきましたけど、前に進むために行動して前に進みますし、ちゃんと自分の気持ちを伝えます。
踏ん切りをつけることは辛いことでもありますが、みんな切ないけれども前に進んで頑張っているところもあるんですよね。
――最後に、映画を楽しみにされている方へメッセージをお願いします。
島﨑:アニメーション映画『思い、思われ、ふり、ふられ』が公開されることになり、本当に嬉しいです。お先に映画を拝見しましたが、本当に素敵な作品に仕上がっています。
この作品は原作からそうですし、僕らよりも先にスタートを切ってくれた実写映画もそうですが、随所にリアリティを感じるというか、年齢・性別関係なく誰が見てもどこかに共感できる部分がある作品です。
だからこそ、すごく引き込まれ、物語に入り込むことができ心も動かされる。
自分が関わらせてもらった作品ですが、実際に映像を観て、僕自身すごくエネルギーをもらいました。ぜひ皆さんにもご覧いただいて、前向きなエネルギーを受け取ってもらえたら幸いです!
――ありがとうございました!
[取材・文/福室美綺 撮影/相澤宏諒]