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映画『トロールズ ミュージック★パワー』タイニー・ダイヤモンド役 木村昴インタビュー

映画『トロールズ ミュージック★パワー』タイニー・ダイヤモンド役 木村昴さんインタビュー|声優界でラップをやった源流になりたい

声優界の“一滴め”に

――この映画を通して音楽の歴史のようなものを理解できるのはすごくいいことだなと思いました。ポップミュージックがすべての音楽を奪って、また手を取り合っていくという。

木村:確かに。そもそもポップスっていうのが、総合音楽というか、“最先端”みたいな意味を持ってるのかなと思っていて。表現が合っているのか分からないんですけど、さまざまなジャンルが枝分かれして広がっていく音楽の中で、ポップスはそのいいとこ取りのような気がしていて。

どのジャンルにも分けがたいんだけど新しいもの、あるいはポップなものを「ポップス」って呼んでいるのかなという認識があります。

そういった意味で総合的な、誰もが聴ける、誰しもの手の届くところにある身近さがあるのがポップミュージックなのかなと。

今回の映画のテーマでもある「一緒にひとつのハーモニーを奏でる」という意味においては、ポップミュージックが大きな存在になるというのは理解ができますね。だからこそ「ポップミュージックがすべての音楽を壊した」ということも理解できるんですけど。

ラッパーの悪いところとして、ポップミュージックをすごい嫌うというのがあるじゃないですか(笑)。

――そうですね(笑)。

木村:チャートめっちゃ気にするじゃないですか。上位の音楽を本物と認めない、俺らのが本物だみたいなこと。でもそれをランキングに入ったことのない人が言うのはちょっと違うような気がします(笑)。

信念を持つのはもちろん大事だけど、でもどうせならみんなに聴いてもらいたいじゃないですか。「せっかくカッコいい音楽やってるならみんなに聴いてもらえばいいじゃん!」って、ラッパーに対しては少し思っています。

対して、「そういうこだわりは、もうどうでも良くな~い?」というところにポップスがある気がします。

今回の映画で興味深かったのは、タイニー・ダイヤモンドの存在やハマー・タイムの話など、「ラップミュージックというものがポップ・トロールの中にいた」っていうことなんですよね。

ラップはラップで「ゲトー・アイランド」みたいな島があって、その島の住人はみんなラッパー……というようなことではなくて(笑)。

――「ゲトー・アイランド」(笑)。

木村:ポップ・トロールにラッパーがいて、ファンク・トロールにプリンスDというラッパーもいる。それを見て、「あ、今のラップってそういう立ち位置なんだ」と分かったというか。ポップスに含まれてるんだと思うとテンションが上がりましたね。「なるほどね!」って。

ほんの数年前まではラップは、アンダーグラウンドというか、物好き感があった気がするんです。そういうのもあって最初は孤立した島をイメージしたんですけど、実際はそうじゃない。すごく素敵だと思いました。

結果、ジャンル分けっていうのは自分の信念をキープするためであって、人と音楽をシェアするうえでは何の意味もないんだということを考えさせられる描写でしたね。

例えばレストランで、俺がカニクリームパスタ、相手がペペロンチーノを食べたときに「うまいな!」「うまいね!」って話したとしますよね。でも、ふたりは違うものを食べているのに、その「おいしい」は違くない? って思うんです(笑)。

一同:(笑)。

木村:そういうのすごく気になっちゃうんです。いや違うの食べてんだからって(笑)。「俺のめっちゃうまい!」「マジで? 確かにうまそうだなペペロンチーノも」くらいの会話がしたいのに、「このペペロンチーノうまいわ~」「ね~、おいしいね~」みたいな。

「それ違うじゃーん!」って言いたくなるんですけど、そういう考え方がもう古いのかなって思わされましたね。「食べ物を一緒に食べてるこの時間がおいしくない?」みたいな考え方ができるようになればいいなと勉強になりました。

凝り固まっていたのは俺なんじゃないかと(笑)。「ああ、そうだ。いけねえ」と思いました。

――それはよくわかります……! そして、最後にお聞きしたいのですが、今、声優業界では「ラップといえば木村さん」「ラップの仕事は木村さんにお任せ」という図式になっていると思います。この状況をご自身ではどのように捉えていますか。

木村:そうですね……「声優のみんな、ラップしないでくれ」って思います(笑)。

一同:(爆笑)。

木村:まあ冗談なんですけど(笑)。

でも、現にラップをやる声優さんはいますから。その中でも、やるからには源流というか、“一滴め”でありたいなとは思います。いつの時代か「声優ってラップもするようになったよね」「いつからだっけ?」「確か、あのあたりで木村昴ってやつが始めたんじゃなかったっけ?」みたいに言われるような存在になっていけたらなと。

「日本でラップを始めたのは誰だっけ?」「いとうせいこう(※13)さんだ!」というような存在。「あの人、なにやってるかよく分かってなかったけど、調べてみたら最初のひとりだったの!?」「ちょっと……おみそれいたしやした」みたいな(笑)。

そんな存在になれたらいいなって思います。音楽はみんなのものですから、あんまり「僕が僕が」という考え方をするのも変なわけですし。


※13:いとうせいこう
日本のタレント。俳優、小説家、ラッパーなど、様々な肩書を持ち、マルチな才能で活躍。日本ではじめてメジャーリリースされたHIP HOPアルバムはいとうせいこうの『業界くん物語』(1985年)だと言われている。


[インタビュー/石橋悠]

 

1989年(平成元年)生まれ、福岡県出身。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者兼ナイスガイ。アニメイトタイムズで連載中の『BL塾』の書籍版をライターの阿部裕華さんと執筆など、ジャンルを問わずに活躍中。座右の銘は「明日死ぬか、100年後に死ぬか」。好きな言葉は「俺の意見より嫁の機嫌」。

この記事をかいた人

石橋悠
1989年福岡県生まれ。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者。

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作品情報

ストーリー

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歌って踊ってハグして、毎日ハッピーに暮らすポップ村のトロールたち。ある日、女王ポピーのもとに、ハードロック族の女王バーブからの手紙が届く。

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いま、世界中のハッピーを取り戻すための、ゆかいな仲間たちの壮大なアドベンチャーが始まる!
 

スタッフ・キャスト

監督:ウォルト・ドーン
エグゼクティブ・ミュージック・プロデューサー:ジャスティン・ティンバーレイク

声の出演:
アナ・ケンドリック
ジャスティン・ティンバーレイク

吹き替えキャスト:
上白石萌音
ウエンツ瑛士
仲里依紗
宮野真守
松本梨香
吉野裕行
平田広明
木村昴
斉藤壮馬
浪川大輔
ミキ・昴生
関智一
ミキ・亜生
速水奨 ほか

原題:TROLLS WORLD TOUR
配給:東宝東和、ギャガ
 
公式サイト
ドリームワークス・アニメーション公式Twitter
ドリームワークス・アニメーションYouTubeアカウント

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