新世代のポップ・アイコン、ナナヲアカリ、TVアニメ『戦翼のシグルドリーヴァ』OPテーマはロックど真ん中で「君」を撃ち抜く

それでも前を向くことを歌った「クライソング」と優しい「ドラマ」

──カップリングはDECO27さんによるメロディックパンク色のある「クライソング」です。DECO27さんは数々のナナヲ楽曲を作られてきていますが、ナナヲさんからDECO*27さんにお願いされたのでしょうか？

ナナヲ：そうですね。DECO*27さんは長くお付き合いさせていただいているので、ナナヲのことも熟知してくださっていて。「ぜひ」という感じでした。

実は今回のシングルのテーマとして……“前向き”というものがあったんです。でも、弱さがあるからこそ前を向けるものだと思っていて。辛いものを背負ったうえで前を向く、ということがテーマだなと思ったんです。

そうしたお話を事前にお伝えしていました。

──確かに。天性でポジティブな人もいるとは思いますけど、弱さがあるからこそ、前を向けているひとが多いのかもしれない。

ナナヲ：ただ前向きなひとって悩みも少ないと思うし、もっとハッピーな曲を聴くと思うので(笑)。ナナヲの曲を聴く人ってやはり弱さや、何かを抱えているひとだと思うんです。そういう人たちが聴いて、ちょっと頑張ろうかなと思えるシングルになればいいなと思っていました。

──このタイトルにも納得です。曲を聴いたときはどんな印象がありましたか？

ナナヲ：とにかくサビが気持ちいいなぁっていう印象がありました。ナナヲはこの落ちサビが大好きで。良すぎて、みんなで「いえーい！」ってなってました(笑)。アコギ一本になってるところも好きです。

──歌詞には＜まだ頑張ってみたいから　僕の答えは “君の隣”だ＞という＜君＞という言葉があって。

ナナヲ：そうですね。この曲にもさっきお話した決意が反映されているんです。だから同じことを話してしまうことになるんですが(笑)。

──ファンの方にはどちらの曲も聴いて欲しいですね。強い思いを感じる2曲とは対照的に、3曲目の「ドラマ」は詩的で、キラキラしたやさしい曲ですね。

ナナヲ：そうなんです。「ドラマ」は日常の中にあるキラッとしたものがテーマになっていて。

LASTorderさんのキラキラした少女的な音と(蒼山)幸子さんの小説のような文章が合うだろうなと思い、お願いさせていただきました。前2曲がロックな曲なので。

きっと、アニメを見てくれた人が手に取ってくれるシングルだから「1曲はアニメにおける日常回のような曲が欲しいよね」ってマインドから生まれました。

幸子さんの歌詞は、キラキラした本を読んでいるような気持ちになるんです。実は、最初はもっと違う内容をお願いする予定だったんです。

でも、部屋のなかにいることが増えて、当たりの日常が当たり前じゃなくなって、みんな思うところがたくさんあるんだろうなって思ったときに、日常の中の幸せをテーマにした曲を作りたいなって。

──それで＜ちっぽけなこの今も　この世にひとつしかない確かなドラマ＞と、日常の尊さを歌にされているんですね。「ドラマ」のレコーディングも順調に？

ナナヲ：いえ、実は悩んだんです。綺麗に歌いすぎても無機質になってしまうし、かといって強く歌いすぎたら世界を壊してしまう……。そのバランスが難しかったんですよね。

それで自分のなかで出した答えは“徐々に上がっていく”(笑)。最初は日常の雰囲気ですが、気づきがあって、変わっていく。その気持ちを歌に乗せようと。

──個人的にはまるで「銀河鉄道の夜」を読んでいるような、そんな気持ちになりました。空に向かう電車に乗って、大切なものを改めて知るような。

ナナヲ：ああ、ステキ。ありがとうございます。

──カップリング2曲はコロナ禍の制作とのことでしたが、ナナヲさんとしては「音楽を作るってやっぱり楽しい」という感覚はありました？　先ほどの舞台のお話ともかぶってしまうかもしれませんが。

ナナヲ：もちろんありましたね。ただ、それと同時に……おうちにいることが増えて、ネットを見る時間が増えて「なんでそういうことを平気で言ってしまうんだろう」と思うような書き込みも見て……人の醜いところを見てしまって、いやな気持ちになることもあって。

これはフルアルバムのほうになっちゃうんですけど、そういう要素が入った曲が生まれました。だから結果オーライかなと思ったり。この期間があったからこそできた曲がちょいちょい入っています。

──アルバムはもう録りおえているんですか？

ナナヲ：曲自体は録りおえました！

──お疲れさまでした……！(拍手)めっちゃ聴きたいです。

ナナヲ：(笑)ありがとうございます！　おそらく終わっています、たぶん！

──アルバム『七転七起』の発売は12月ですが、今の時点で何かコメントできることってありますか？

ナナヲ：2年ぶりのフルアルバムってことで、とにかく進化した自分を見せられたらと思っています。「チューリングラブ」とか、「Higherʼs High」で知ってくれるかたも増えると思うので、そういう人たちが聴いたときに「シングル以外の曲も良いやん！」って思ってたらいいなって。