秋アニメ『魔法城でおやすみ』EDテーマ:ORESAMAインタビュー|80~90年代レトロディスコ&「どん欲」な歌詞、そしてタイトルに仕掛けた意味とは?
EDテーマ「Gimmme!」はオーダーでORESAMAらしい明るい曲に。造語である曲名の由来とは?
――アニメ『魔王城でおやすみ』のEDテーマ「Gimmme!」を制作するにあたって、アニメの制作サイドからオーダーはあったのでしょうか?
小島:80~90年代のレトロの音色とにぎやかさ、そして作品名に「おやすみ」とあるけど、ゆったりした曲ではなく、ORESAMAらしい明るい曲で、というリクエストをいただきました。
――それはORESAMAが得意とするサウンドですよね。
小島:僕もそう解釈して、僕らのディスコサウンドをベースにしたJ-POPにレトロ感や『魔王城でおやすみ』の要素をどう音色で散りばめていくか、考えながら制作していきました。
ぽん:歌詞のイメージに関しては任せてもらっていて。私が作品に対して最初に感じたどん欲さと、毎回描かれるテーマやスヤリス姫の目的が「良い眠り」とわかりやすいので、私もストレートな歌詞を書きたいなと。眠れない時の眠りたいという欲求は誰でも共感してもらえると思ったので、簡潔に眠りたい気持ちを歌詞にしました。あと言葉が重くなりすぎないように、軽快さを意識しました。
――普段、よく眠れるぽんさんだから、眠りへのどん欲さがライトに表現されているのかもしれませんね。
ぽん:お仕事終わりで家に帰って来て、「このドアを開けたら眠れる~」という時は若干、足元が少し浮くような感覚があるんじゃないかなと思って。そんな軽さや楽しさを詰め込めたかなと思います。
――あとタイトルの由来は「どん欲」を意味する「Gimme」だと思いますが……。
ぽん:タイトルの見た目でもどん欲さを表現したくて、「m」を1つ増やしました。
小島さんの重要な音楽エッセンスに、星の流れる音やオルゴール音などこだわりもいっぱい
――サウンドは軽快なディスコナンバーで、ギターやベースのカッティングした弾む感じはORESAMAっぽいですね。
小島:僕の音楽の重要な要素で、ギターとベースが絡み合うグルーヴ感はディスコである以上、絶対にやりたくて。ギターは今まで大好きなナイル・ロジャースをオマージュしていましたが、また1人、コリー・ウォンという尊敬できるギタリストに出会いまして、その影響もあり、新しいアプローチをしていて。原作のイメージを入れながら、僕らが作りたいディスコミュージックという意味でも挑戦ができました。
――ディスコティックなサウンドに「ラムのラブソング」などのバックで流れるような星がまたたくSEもワクワク感が出ています。
小島:あの音は「Gimmme!」を象徴する大事な音で、冒頭から入っています。エレクトロディスコでも似たような音が入っていたりしますが、レトロ感もあるし、大好きな音なので重要なポイントで入れました。
――サウンドがガラっと変わるところもORESAMAらしくて。ぽんさんのAメロ前のコーラスも最初のウイスパーボイスから急にエフェクトをかけたり、2Aではビート感が強くなって、よりダンサブルになったりして。
小島:多くの情報量を詰め込みたいというJ-POP的な発想です。1曲の中で様々な展開があるところがJ-POPの好きなところで。今回もそのテイストを入れようと、2番は違う感じにしました。2サビ後にもまた大きな展開を入れたくて、オルゴールの音を使いました。
ぽん:夢感があっていいよね。
小島:そう! せわしない夢のような。激しい音の展開から皆さんに想像してもらえるように意識しました。
ぽん:私は2Aのメロディが好きなんですよね。デモをもらった時から嬉しくて。2番が1番の繰り返しではなく、トリッキーなところが小島君らしくて。そこに歌詞をはめられた時の達成感といったら(笑)。
展開がガラっと変わる2番のAメロとオルゴール音がお気に入り
――今のJ-POPは音を重ねていく風潮が多い中で、ORESAMAは音の上塗りではなく、意外にシンプルな気がします。1つの楽器や音にしっかり存在感もあって。
小島:すごく嬉しいです! 自分では音を詰め込んでしまっているなと感じていたので。
ぽん:最近、音数抜きたがるよね?
小島:「洋楽のように音数が少ないトラックを」と思って作り始めるし、「Gimmme!」も楽器が少ない、クールなトラックを目指していたけど、作っているうちにこうなっちゃうんですよね。
でも自分が、それがいいと思って作っているので、無理に音数を抜くこともなく、そのまま出すのがいつものパターンで。それに誰かの隙間を誰かが埋めるという編曲の仕方なので、ボーカルがいなくなったら他の楽器、楽器がいなくなったらボーカルと、入れ替わり立ち替わりに音が入ってくるスタイルです。
――ぽんさんの歌声も心地いいなと改めて思いました。夜感がある曲で、グルーヴ感のある歌い方ではワクワクする感じ、曲頭の「おやすみ」などウイスパーボイスで歌っている声は誘眠作用があって。
ぽん:できれば最後まで眠らずに聴いてほしいですね(笑)。スヤリス姫が歌うOPテーマから本編までがとても楽しいので、私たちのEDテーマを含め最後まで楽しんでほしいという気持ちです。そしてできればフルで聴いていただきたいです。私のお気に入りの2Aも。
小島:僕のお気に入りは2サビのオルゴールです。以前、1曲を全部オルゴールアレンジしたことがあって、オルゴールの打ち込みってすごく楽しいけど、「楽曲の中では使えないよな」とずっと思っていました。でもこの曲調とこのメロディだからこそ、入り込めた気がして。睡眠というテーマにも合うし、やりたかったオルゴールを入れ込めたという達成感がありました。
ぽん:魔王城とオルゴールって親和性もあるよね。ファンタジー感とか。
小島:そのオルゴールの上に歌がのって、最後のサビに向かっていくという、理想の流れができたかなと思います。