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- 福室美綺
- 福岡出身。触れた作品にすぐハマる、ちょろさNo.1ライター。親友であり敵のような複雑な関係性が大好物です。
――櫻井さん自身が本作で惹かれたシーンはありましたか?
櫻井:物語の中盤にあるフーシーがシャオヘイに語るシーンです。この場面が分岐となり、結末に向かって歩み始める転換点になります。
フーシーがシャオヘイにわかってもらおうと思いを吐露したところ、逆に疑問を持たれてしまう。シャオヘイの幼なさ故の鋭い指摘に、フーシーは痛いところを突かれた形になってしまいます。
フーシーの葛藤は相当なものだったでしょう。察するに余りあると言いますか、本当に気の毒に思いました。諸手を挙げて賛成できなくとも、理解を示すことはできるというか。共存共栄の可能性を図ったこともきっとあるでしょう。だから、シャオヘイの疑問も理解できるんです。
でも、彼はその段はとうに過ぎて、違う答えに辿り着いていました。“それではダメなんだ”とシャオヘイと相対するる場面は、別の歯車が動き出す大事なシーンなので、丁寧に表現するよう心がけました。
――そのシーンもそうなんですが、個人的にフーシーに感情移入していました……。
櫻井:味方が増えて嬉しいです(笑)。もしかしたら、彼に心を寄せてくれる方が多いのかもしれません。
――そのように感じる理由は?
櫻井:2020年はそういう年です。当たり前だったものが当たり前じゃなくなる瞬間を目の当たりにするなんて、思いもよりませんでした。当然、将来や未来に対する不安も生まれますよ。
いつもの生活に取り戻したい・元の世の中をもう一度見たいという気持ちを誰もが持っているんじゃないのかな、と。
――ある意味、今の状況で私たちが感じていることと、フーシーが自然を取り戻そうとしている気持ちと重なる部分があるのかもしれませんね。
櫻井:しっかりと己を保つことができて、きちんと現実に目を向けられるのであればそういう気持ちに浸るのも悪くはないと思いますが、そこに引きずられて自分を見失ってしまうのは良くないですね。
この作品の見せ方はかなりクールな感じですし、観てくれた人へきちんとバトンが渡る終わり方をしているので、ちゃんと伝わると思います。
だからこそ、フーシーに想いを寄せる人もいるんじゃないかな、と思います。
――また、公式で「この作品と出会って自分の原点を再確認することができました」とコメントされていましたが、櫻井さんが再確認できた“自分の原点”とは?
櫻井:幼い頃に声優の存在を知り、将来を決めるタイミングで“声優になりたい”と、引っ込み思案の自分が一念発起した経緯を思い出しました。
子供ってキャラクターそのものが喋ってると思うじゃないですか。声優さんが声を当てているなんてわからないので。純粋というか、裏側を知らないというか。
そういう感覚は、大人になるにつれて色あせていくものですし、どうしても大人の目線になってしまって、紐解くような見方をしてしまう。
けれども、この作品は何度も劇場に足を運びたくなるような、子供の頃に味わったワクワク感や良い余韻が残るので、あの頃のピュアな気持ちが蘇りました。
――最後になりますが、作品をご覧になる方へメッセージをお願いします。
櫻井:年齢問わず楽しめる作品です。社会問題や人間の業がドラマに反映されていて、エンターテインメントしつつ考えさせられる内容になっています。
年齢性別問わず楽しめる懐の大きな作品なので、たくさんの方に観ていただきたいです。劇場でお待ちしております。
[取材・文/福室美綺 写真/塚越淳一]
福岡出身。触れた作品にすぐハマる、ちょろさNo.1ライター。好きな作品は『Free!』『NO.6』『十二国記』『ギヴン』『新世界より』など。好きな声優さんは保志総一朗さんと坂本真綾さん。ハッピーエンドよりも意義のあるトゥルーエンドや両片想いが大好物な関係性オタクで、主にイベントレポートやインタビューを担当しています。最近はVTuberがマイブーム。
『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』
11月7日(土)全国ロードショー
原作/監督:MTJJ
プロデューサー:叢芳氷、馬文卓
副監督:顧傑 脚本:MTJJ、彭可欣、風息神涙
作画監督:馮志爽、李根、周達炜、程暁榕、鄭立剛
美術監督:潘婧 撮影監督:梁爽 3D監督:周冠旭
音響監督:皇貞季 音楽:孫玉鏡
制作会社:北京寒木春華動画技術有限公司
音響監督:岩浪美和 音響制作:グロービジョン
配給:アニプレックス、チームジョイ
シャオヘイ:花澤香菜
ムゲン:宮野真守
フーシー:櫻井孝宏
◆『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』
中国漫画家、アニメ監督のMTJJ及び寒木春華(HMCH)スタジオが制作したアニメ作品。2011年3月17日から動画サイトで公開した後人気が上昇し続け、中国アニメを代表する作品まで成長。劇場版が制作され、中国国内での興行収入は3.15億 人民元(約49億円)。日本国内では上映直後から高い評価を得ており、拡大公開されることとなった。
◆MTJJ(アニメ監督・漫画家)
『羅小黒戦記』の原作となるWEB版フラッシュアニメの作者。原作となるWEBフラッシュアニメはその後WEBコミック化されるが、その際の作者も同じくMTJJ。原作WEBアニメは現在bilibiliはじめ中国各配信サイトで配信されており、bilibiliにおける総配信視聴数は28話計で2.3億。
◆北京寒木春華動画技術有限公司
上記MTJJが代表を務める北京のアニメ制作会社。前身はMTJJが創設した「羅小黒戦記工作室」で、設立は2012年。原作となるWEBアニメおよび本作『羅小黒戦記』含め羅小黒シリーズの著作権を保持。
人間たちの自然破壊により、多くの妖精たちが居場所を失っていた。
森が開発され、居場所を失った黒猫の妖精シャオヘイ。
そこに手を差し伸べたのは同じ妖精のフーシーだった。
フーシーはシャオヘイを仲間に加え、住処である人里から遠く離れた島へと案内する。
その島に、人間でありながら最強の執行人ムゲンが現れる。
フーシーたちの不穏な動きを察知し、捕えにきたのだ。
戦いの中、シャオヘイはムゲンに捕まってしまう。
なんとか逃れたフーシーたちはシャオヘイの奪還を誓い、かねてから計画していた「ある作戦」を始める。
一方、ムゲンはシャオヘイとともに、人と共存する妖精たちが暮らす会館を目指す。
シャオヘイは、新たな居場所を見つけることができるのか。
そして、人と妖精の未来は、果たして――
特典付き全国共通前売券
9月5日(土)発売
特典:シャオヘイ アクリルストラップ(数量限定)
価格:1,500円(税込)
※特典には数に限りがございます。無くなり次第、前売券のみの販売となります。
※劇場の詳細は追って発表いたしますので、公式HPをご確認ください。
公式サイト
公式Twitter(@heicat_movie_jp)
(C) Beijing HMCH Anime Co.,Ltd