テイオーステップを走りに落とし込んだら……こだわりのレースシーンに注目! 冬アニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』監督・及川啓さん×キャラデザ&総作監・椛島洋介さん×制作P・増尾将史さん スタッフインタビュー【連載第1回】
デザインは新キャラクターもモブも第1期よりさらに強化
――キャラクターデザインについてもお聞きします。デザインする上で特に意識した点はありますでしょうか?
椛島:ここ最近の話ではあるんですけど、キャラクターデザインをやるときに「デザインをとにかくニュートラルに持っていきたい」と考えています。クセをつけないことで、親しみが生まれると思うんです。
なので、最初に(ウマ娘たちの)デザインを作ったときに、宮崎駿さんのジブリラインとか、そういうところを下敷きにしました。実は目をそこまで大きくしていなかったりとか。とはいえ、白目を増やすと三白眼になってしまいます。だから、小さいながらも瞳はきちんと大きく、そういったところをデザインのベースに置いています。
あと、第1期は最後までトウカイテイオーの髪型が自分の中で決まらなかったんです。そこは今回改めて第2期用に作り直しました。第1期のキャラ表と見比べてみると、少し違っていたりします。
――具体的には、どういうことでしょうか?
椛島:最初に決めたトウカイテイオーのイメージから、表情集を描いている時点ですでにちょっと乖離していた部分があって。もう一度トウカイテイオーのデザインを見つめ直して、自分がトウカイテイオーに見えるように、わがままを言わせてもらいました。すごくミリのところなんですけどね。
それから、描く線が多いので、影をとにかく少なくして色で見せていきたいと。青の中に濃い青っていらなかったりしますから。とにかく走る作画のカロリーは甚大ですので、描く線を減らせば減らすだけ納品が早くなるといいますか。そのキャラクターのデザインが崩れないギリギリのところを狙ってやらせてもらったりしました。
――監督の方からこうして欲しいとお願いすることもあったのですか?
及川:『ウマ娘』のデザイン、特に第2期に関してはほぼ椛島さんにお任せしていました。
椛島:そうですね。監督からのリテイクはなかったですし、打ち合わせもなかったです(笑)。制作から「これをお願いします」と言われて、描いていました。
及川:少なくともデザインに関しては、椛島さんにお任せしておけば素晴らしいものがあがってくる安心感がありましたので。そういう意味では、「椛島さんに任せておけば大丈夫だろう」というのがこだわりですね。こだわりと言っていいのかわからないですけど(笑)。
――第1期のときからデザインも映像も素晴らしかったですが、細かなこだわりを聞いていると妥協していないことが伝わってきます。
椛島:妥協は一切なかったですね。
――第1期のキャラクターデザインを使い回せるから楽なのでは、と思ってしまう人もいそうですが。
椛島:そうなんですよ。実は、キャラクターデザインをやるようになってから第2期を自分メインでやるのは初めてなんです。だから、デザインそのまま使い回しでやれるぞ!やったー!と思っていたら、ものすごい量の新規キャラクターが出てきて(笑)。おいおい、これはちょっと話が違う、みたいな。でも、新しいキャラクターもみんな可愛いので、一人一人愛情込めてデザインさせていただきました。
増尾:僕的には“モブウマ娘”も好きなんですよ。椛島さんが制作スタッフたちと考査して作ってくれているので、脇で走っているウマ娘たちも注目じゃないかなと思います。
椛島:モブウマ娘のデザインは使い回しているものもありますけどね(笑)。制作上の都合もあるのですが、最大18人が同時にレースをする中で、全てのウマ娘を違うデザインにするのは正直現実的ではないんです。設定のコントロール自体が難しいですし。なので、ある程度の人数を作った上で、それ以外のウマ娘は、言葉は悪いですけど使い回してやっていました。ただ、第2期をやるにあたり、そこはもう一段強化していこうということで、追加でモブのデザインは増やしています。
――モブウマ娘たちもいい味出していますからね。
増尾:色はそのレースの競走馬や騎手のものを、色彩設計の中野(尚美)さんが作ってくれて、役割に応じた色にして頂いています。なので、皆さんにいろいろ考察してもらえればと思います。
及川:そうですね。第2期でも「このウマ娘はあの競走馬なんじゃないかな?」となるように作っていますから。
あと、ウマ娘ではない人間のモブも、第1話で登場したやつが後の話数でも登場したりします。最初は全く計算していなかった人もいるので、そういうところも楽しみにしてもらえたら嬉しいです。
――キャラクターの話でいくと、トウカイテイオーやメジロマックイーンもより深く描かれることによって、少しイメージが変わる部分がありそうですね。
及川:そうですね。第1期のメジロマックイーンってどちらかというとゴールドシップと一緒にいる感じだったんですけど、今回はゴールドシップがあまりちょっかいをかけなくなっています。
椛島:(ゴールドシップは)ひとりでルービックキューブをガチャガチャやっていますからね(笑)。
――ツインターボをはじめ、チーム<カノープス>のメンバーも気になるところです。
増尾:世代でいうとナイスネイチャはトウカイテイオーと同世代なんですよね。ブロンズコレクターとして有名で。
椛島:個人的にはナイスネイチャをまた描けて良かったです。第1期ではなかなか活躍の場がなかったんですけど、今回はいい存在感を放っていると思います。
無茶な要求にも応えてくれた、キャスト陣の迫真の演技
――デザインだけでなく、ウマ娘を輝かせるのにキャスト陣の演技も欠かせないわけですが、監督の方から演技面でのリクエストなどはあったのでしょうか?
及川:そうですね。今回は第1期に比べてシリアスなところが多めです、ギャグはギャグとしてありますので、その振り幅というかシーンに応じた演技はいろいろ要求しました。
――特に印象的だったキャストはいますか?
及川:やっぱり、トウカイテイオー役のMachicoさんです。迫真の演技で頑張ってくれました。トウカイテイオーに対する思いもすごく伝わってきたし、本当にありがたいなと思います。
増尾:酸欠で意識が一瞬飛んでしまい、「あれ? 私、何してましたっけ?」となるぐらい叫んでくれたシーンもあって。あそこはすごい気迫を感じました。本当にトウカイテイオーをMachicoさんが演じてくれて嬉しかったです。本人もトウカイテイオーにシンパシーを感じるというか、似ている部分があるらしく、愛をもって演じてくれていたと思います。あとは、メジロマックイーン役の大西沙織さんと実況役の明坂聡美さんですよね。
及川:(メジロマックイーン役の)大西さんは本当に上手くて、彼女の芝居は何も言うことがなかったです。皆さんは本当にイメージ通りの芝居をして頂いて、僕は満足です。
増尾:後半の話数でも、「こういう感情の流れで芝居をして欲しい」というオーダーに対して、結構質問が有りました、その上で迫真の芝居をして頂けました。こちらのオーダーに寄り添いつつも、やはり自分の中でキャラクターの芯はこうだと持っていらっしゃるのだなと感じました。
及川:ただ、反省したところもありました。僕自身もこだわりのあるシーンでは、演じてもらう前に声優さんに「ここは大事なシーンなので」と直接言わせて頂きました。そうした方が、いい演技になるのかなと思って。そしたら、あとで増尾くんに「檄というより、すごい“圧”をかけていました」と(笑)。
増尾:「増尾くん、内容説明しに行こう」と言うので、声優さんに何て話すのかなと思ったら、本当に一言「このシーン、大事なシーンなので」って言うだけなのです(笑)。おいおいと思って。
椛島:あははははは!
――それはプレッシャーですね(笑)。
増尾:そう思ったので、「このシーンは、こういう意味で大事なので、こういう風に演じてもらいたいんですよね、監督」ってフォローを入れました。
椛島:でも、キャストの皆さんはめちゃめちゃ期待に応えてくれていますね。芝居を聞いていて、何回泣きそうになったことか。
及川:本当に応えてくれています。
増尾:あと、実況です。実況も無茶な感じですごく喋るので、酸欠になるんじゃないかというぐらい体力を使いながら一生懸命やっていただきました。本当に申し訳ないなと思いつつ、すごくありがたかったです。
及川:(実況を演じる)明坂聡美さんは本当にそうですね。セリフが実際のカットの尺よりもちょっと短かった場合に、無理やりその場でセリフを足して帳尻を合わせていただき、いろいろ無茶な要求をしたのに対してもしっかり応えてくれて。そのおかげで、本当のレースみたいな臨場感を出すことができたと思っています、ものすごく感謝です。
――では最後に、改めて第2期の見どころを一言ずついただければと思います。
及川:見て欲しいのは、やっぱりトウカイテイオーの生き様ですね。そこを楽しんでもらえればと思います。
もちろん、それ以外にもメイショウドトウとマチカネフクキタルがまた活躍したり、本当にいろいろなウマ娘が登場します。第1話では後ろを歩いているだけのウマ娘も多いですけど、そういうところにも小ネタを挟んでいますので、楽しんでもらえたら嬉しいです。
椛島:自分からは「第1話のエンディングに注目してください」と。前回少し不完全燃焼だったところを今回はガチでいきたいとオーダーして、それにスタッフが全力で応えてくれましたので、注目して見て欲しいです。
増尾:僕は、トウカイテイオーとメジロマックイーンの成長ですね。成長に合わせて2人の考え方もどんどん変わっていきますので、視聴者の皆さんにはじっくり見守っていただき、最後は泣いてもらえたらと思います。
――ありがとうございました!
[取材/文:千葉研一]
インタビューバックナンバー
▼第1回 及川啓監督×椛島洋介×増尾将史スタッフインタビュー
▼第2回 Machico(トウカイテイオー役)×田所あずさ(シンボリルドルフ役)キャストインタビュー
▼第3回 沖野晃司さん(トレーナー役)×豊口めぐみ(東条ハナ役)キャストインタビュー
番組概要
放送情報
●第1話「トウカイテイオー」
シンボリルドルフに憧れて無敗の三冠を目指すトウカイテイオーは、次走の日本ダービーを目前に日本中の注目を集めていた。そして迎えた本番、入場規制が敷かれるほど盛り上がる中、トウカイテイオーは一番運のあるウマ娘が勝つとされるレースに挑む!
TOKYO MX:1月4日(月)24:00~
BS11:1月4日(月)24:00~
関西テレビ:1月4日(月)26:00~
サガテレビ:1月13日(水)24:25~
AT-X:1月11日(月)21:30~
※放送開始日、放送日時は予告なく変更になる場合がございます。予めご了承ください。
スタッフ
原作 Cygames
監督 及川 啓
助監督 成田 巧
シリーズ構成 Cygames
キャラクターデザイン・総作画監督 椛島 洋介
キャラクターデザイン 辻 智子
総作画監督 藤本 さとる
メインアニメーター 式地 幸喜・小畑 賢・中島 順・宗圓 祐輔
制作協力 P.A.WORKS
美術監督 岡本 穂高
色彩設計 中野 尚美
撮影監督 並木 智
3D 監督 吉良 柾成
編集 髙橋 歩
音響監督 森田 祐一
音楽プロデュース 岩代 太郎
音楽 UTAMARO movement
アニメーション制作 スタジオ KAI
製作 アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」製作委員会
キャスト
トウカイテイオー Machico
メジロマックイーン 大西 沙織
スペシャルウィーク 和氣 あず未
サイレンススズカ 高野 麻里佳
ウオッカ 大橋 彩香
ダイワスカーレット 木村 千咲
ゴールドシップ 上田 瞳
シンボリルドルフ 田所 あずさ
ナイスネイチャ 前田 佳織里
ツインターボ 花井 美春
イクノディクタス 田澤 茉純
マチカネタンホイザ 遠野 ひかる
キタサンブラック 矢野 妃菜喜
サトノダイヤモンド 立花 日菜
トレーナー 沖野 晃司
東条ハナ 豊口 めぐみ
ほか
・TV アニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』公式サイト
・TV アニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』公式Twitter(@uma_musu_anime)