【BLのことさらに知ってみませんか?】「BL成長期」の2020年を総まとめしてみた!の巻 【アニメイト編集部BL塾・応用編】
映像コンテンツが劇的に増えた2020年
石橋:年末ということで、今回の講義は今年のBL動向を総まとめしていきたいなと。これを読めば何となくトレンドが分かるようなおさらいをみなさんと一緒にしていきたいです!
阿部:かしこまりました!
まず、2020年はとにかく映像化された作品が多かった。参考までに2019年の作品をまとめてみたのでそちらからチェックしてみてください。
阿部:2019年は片手で数えられる作品数でしたが、2020年はなんとこれだけ増えました。
石橋:これはすごい! なんでここまで増えたんですか……?
阿部:やはり2018年に放送されたTVドラマ『おっさんずラブ(※2)』の影響が非常に大きいと思っています。『おっさんずラブ』の反響からビジネスチャンスを感じ取った大人のみなさんが1~2年かけて映像作品を制作。そして、2020年一気に映像化されたのではないかと。
※2:おっさんずラブ
2016年よりテレビ朝日系列で放送されている人気テレビドラマシリーズ。田中圭さん、吉田鋼太郎さんなどそうそうたるキャストが出演。地上波で実写BL作品が放送され話題に。
石橋:なるほど。たしかに『おっさんずラブ』が転換期となって「私、BL好きなんです」と大手を振って言えるようになってきたとは思っていて。これまで頑張ってきたBL界が2020年にポッと花咲いたような感じがしますね。
阿部:これまで先人たちが頑張ってつくり上げてきた隠れた名作たちが、少し大衆向けの形となってメディア露出し始めた部分はありますね。
石橋:特に話題になった作品は『窮鼠はチーズの夢を見る(※3)』ですかね?
※3:窮鼠はチーズの夢を見る
小学館の『NIGHTY Judy』にて掲載された水城せとなさんの漫画作品。サラリーマンの大伴恭一と大学時代の後輩・今ヶ瀬渉の恋愛模様を描いた作品。BL作品ながら女性キャラクターとの恋愛模様も描くなどリアルな心理描写が人気を博し、2020年9月には行定勲監督、関ジャニ∞の大倉忠義さんを迎え実写映画化。
阿部:そうですね。『窮鼠はチーズの夢を見る』は公開から約2ヵ月で7億円を突破しています。もともと人気の作品であったこと、監督に行定勲さん、俳優にジャニーズの大倉忠義さんを起用したことが、この数字に結びついたのかなと思っています。
ほかにも、映画『性の劇薬(※4)』は国際的な映画祭でLGBTQのアワードにノミネートされたり、フジテレビのBL専門レーベル「BLUE LYNX」から公開された劇場アニメ『囀る鳥は羽ばたかない(※5)』『ギヴン(※6)』はミニシアターランキングで1位を獲得したりと結果を残しています。
※4:性の劇薬
フューチャーコミックスの『BOYS FAN』にて掲載された水田ゆきさんの漫画作品。自殺を図ろうとした元エリートサラリーマンの桂木の前に現れた謎の男・余田。余田は桂木にありとあらゆる「性」を与えることで桂木に「生」を感じさせる、というストーリー。過激な内容ながら100万DLを突破する人気作。
※5:囀る鳥は羽ばたかない
大洋図書の『ihr HertZ』にて連載中のヨネダコウさんの漫画作品。ヤクザの若頭で好色家の一面がある矢代と付き人兼用心棒の百目鬼力(どうめき ちから)が惹かれ合っていく様が描かれる。ヤクザものならではのヒリヒリとしたスリルの中に矢代と百目鬼の複雑な関係が上手く織り込まれた人気作。
※6:ギヴン
新書館の『シェリプラス』で連載中のキヅナツキさんによる漫画作品。2019年にテレビアニメ化。主人公・佐藤真冬を中心としたバンド仲間たちの恋愛模様が描かれる。TVアニメでは佐藤真冬を演じた矢野奨吾さんが作中のバンド「ギヴン」としてCDもリリースした。
阿部:また、10月から放送されたTVドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(※7、通称:チェリまほ)』もかなり話題になりました。ドラマ満足度ランキングでは1位、放送時にはTwitterのトレンドにも入るほど。
※7:30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい
スクウェア・エニックスの『ガンガンコミックスpixiv』で連載中の豊田悠さんの漫画作品。30歳まで童貞だったサラリーマン安達清は「触れた人の心が読める」という魔法の力を手に入れてしまう。そんなある日、イケメンで仕事のできる同期・黒沢の心を読んでしまう。黒沢の心の中は安達のへの恋心でいっぱいだった。Twitterとpixivで大人気のマンガが書籍化し、人気の高さから2020年には赤楚衛二さんと町田啓太さんを迎えTVドラマ化。
石橋:へぇー! すごいですね。
阿部:とはいえ、アニメは比較的数字としてもいい結果が残せているようですが、実写化は数字に結びついていないと感じる作品も多々あります。BLに限らず実写化は難しいのかも……。
石橋:BLに限らずマンガ原作の実写化を見ると、創作物だからこそ良いのに……と感じることはありますよね。二次元の絵だからこそ良いみたいな。特にBLは性描写のある作品も多いから、実写で表現すると生々し過ぎると感じる人も多そう。
阿部:ライトなBL作品とかならいいのかもしれないですけどね。なので、BL作品を映像化するならアニメやTVドラマの方が相性はいいのかもしれないと個人的には感じました。
石橋:でもこれだけの作品数が2020年に出たということは、今後のBL業界に確実に影響を与えると思うので、2021年以降も楽しみになりますね。