【BLのことさらに知ってみませんか?】「BL成長期」の2020年を総まとめしてみた!の巻 【アニメイト編集部BL塾・応用編】
2020年オススメ作品
阿部:ここからは毎度お馴染み、個人的に読んでよかった商業BL作品を5作品紹介していきます。
まずは「このBLがやばい 2021年度 BLコミック ザ ベスト20」でも2位だった『オールドファッションカップケーキ(※20)』。絵の美しさ、ストーリーの良さはもちろんいいのですが、背景などの空間の表現やセリフ一つひとつの言葉の表現がとても繊細で美しい。綺麗な絵本を読んでいる気持ちになります。
※20:オールドファッションカップケーキ
大洋図書から発売された佐岸左岸先生の漫画作品。平凡な毎日に退屈気味な部下に愛される39歳のサラリーマン・野末。無愛想だけど信頼における29歳の部下・外川とひょんなことから一緒にパンケーキを食べに行くことに。外川による野末のアンチエイジング作戦が始まる。
阿部:2つ目に『僕らの地球の歩き方(※21)』。「BL」より「旅」が軸となっている作品かもしれません。作者のソライモネ先生ご自身の旅の経験が反映されているのだろうと感じられるほど、旅の描写がとにかく細かい。
※21:僕らの地球の歩き方
マッグガーデンから発売されたソライモネさんの漫画作品。仕事を辞めた朝日は恋人の深月と世界一周の旅に出る。異国の文化や人との出会いから様々な価値観に触れ、自身の価値観をも変えていく。人生が変わるジャーニーラブストーリー。
石橋:一足先にセンセイから借りていたのですが、これは本当にとても面白かったです。
阿部:登場人物が旅を通してさまざまな土地、文化、価値観に触れていくことで、自分自身の価値観に変化が生まれていく様子が、とても繊細に描かれていて、大好きな作品です。続き物なので、今後も楽しみ。
石橋:黒髪メガネだしね!(笑)
阿部:最高ですよね……。(しみじみ)
そして、3つ目に選んだのが11月に発売された『いびつなボクらのカタチ(※22)』。シングルファーザーで娘を育てる男性と、娘のピアノの先生の恋愛模様が描かれた作品です。
※22:いびつなボクらのカタチ
徳間書店から発売された見多ほむろさんの漫画作品。数年付き合っていた彼氏に置手紙一つで振られたピアノ講師の佑真。実家で一人暮らしをする母親が怪我をしたという報せを聞き、慌てて実家に帰ると見知らぬ男が。偶然知り合った母を気にかけてくれた伊吹は男手一つで娘を育てている。しかも伊吹の娘・舞花は佑真のピアノの生徒だった。家族ぐるみの付き合いが始まり、お互いを意識し始める。
阿部:恋愛要素はもちろんあるのですが、私が一番感じたのは「家族観」でした。一般的な家族の形とは少し違う環境に身を置いている攻めと受けが出会い、価値観をすり合わせていくことで、自分たちの正解を見つけていくような心温まるお話です。
石橋:そういう作品もあるんだなと思いつつ、たしかにそういったテーマは時世にも合っていますね。
阿部:いろんな家族の形があってもいいよね、と肯定してくれるような作品でとても良かったです。
4つ目がちょっと不思議なファンタジー作品『ハレとモノノケ(※23)』。山に住んでいる高校生の少年と見た目は普通の人間だけど実は不老不死のモノノケである青年のラブストーリー。
※23:ハレとモノノケ
一迅社から発売された灼さんの漫画作品。山で一人暮らしをする高校生・八潮の前に現れた、不老不死のモノノケと名乗る男・トキ。八潮についたケガレを落とす名目で、トキとの奇妙な共同生活が始まる。
阿部:日本の伝承がテーマになっている作品で、作中で描かれるちょっと不思議な風習や言い伝えに懐かしさと発見を感じ、ノスタルジックな気持ちにさせられます。また、順当に歳を取っていく少年と不老不死である青年の「命」や「寿命」に対する価値観の違いに切なさを感じる作品でもあります。世界観とストーリーの妙に加え、美しく繊細な絵柄に癒されました。
石橋:おもしろそう! こういう人外のパターンもあるんですね。
阿部:見た目は普通の人間なので、人外が苦手な方でも気にせず読める作品だと思います!
最後に選んだのはこちら、『同級生(※24)』シリーズのその後が描かれた『blanc(※25)』。泣きました……。
※24:同級生
茜新社の『OPERA』にて連載されていた中村明日美子さんの漫画作品。男子校に通うバンドマンの草壁光と優等生の佐条利人の甘くて酸っぱい青春ラブストーリー。2016年に劇場アニメ化。
※25:blanc
茜新社の『OPERA』にて連載されていた中村明日美子さんの漫画作品。『同級生』シリーズの草壁光と佐条利人のその後が描かれる。20歳になった二人の行方とは。
石橋:あはははは。今日一番感情がこもっている(笑)。
阿部:『同級生』と出会ったのが、高校生くらいのときで草壁と佐条とちょうど同じ年齢だったんですよね。この2人の人生をシリーズ通して約10年見守ってきた私としては感無量でした。
『同級生』から共通しているのですが、「好きで一緒に居られればそれだけで幸せ」ではなく「好きで一緒に居たいからこそ辛いことがある」というメッセージが伝わってくるんですよね。『blanc』も同様で、ある側面から見たら大団円かもしれないけど、ある側面から見ると切なさが残るような。本当に良かった……。
石橋:なんだかずっと近くで勝手に寄り添ってきた人たちの人生を見ているということですもんね。しかも、10年も……そりゃ泣くでしょ。ファン一同ありがとうございました! ってなりそう。
阿部:長い付き合いのある友人の結婚式に参列したような気持ちになりました(笑)。
以上、2020年個人的にオススメの作品でした!