声優・楠木ともり Birthday Candle Live『MELTWIST』レポート|無数のキャンドルに囲まれての配信ライブ――カヴァー曲やオリジナル曲をアコースティックアレンジで披露
声優・楠木ともりさん、21歳の誕生日である2020年12月22日(火)に、「Kusunoki Tomori Birthday Candle Live『MELTWIST』」が開催された。たくさんのキャンドルに包まれながら歌う幻想的なアコースティックライブ。カヴァー曲はもちろん、自身のオリジナル楽曲も、新たな魅力が感じられた、素敵な夜となった。
無数のキャンドルに囲まれての配信ライブ!カヴァー曲やオリジナル曲をアコースティックアレンジで披露
キャンドルの優しいあかりが無数に灯るなか、カホンの音が会場に鳴り響く。そこに楠木ともりの歌声が重なって、ライブがスタートした。オープニングは、Official髭男dismの「ニットの帽子」のカヴァー。彼女が18年から開催しているワンマンライブでは、カヴァー曲をよく歌っているのだが、今回は冬という季節にピッタリの曲を選んだのだという。それにしても、キャンドルに囲まれて歌うという画がとても幻想的で、普通のライブでは見られない景色だったので、思わず見入ってしまった。
「離れた場所にはいますけど、同じ空間を、時間を、音楽を溶かしあって共有していきたいと思いますので、よろしくお願いします」とメッセージを送り、彼女がリスペクトし、これまでも幾度となくカヴァーしてきているアーティスト・さユりの曲から、今回は「葵橋」をセレクト。こちらもアコースティックな音色がとても心地よく、徐々に感情的になっていくヴォーカルと、それに寄り添うように響くヴァイオリンが印象的だった。
続いてORIGINAL LOVEの90年代の名曲「接吻」。両親からの影響もあって選んだ曲だというが、渋い男性ヴォーカルの曲を女性が歌う良さというものが存分に感じられて、また違った世界観で楽しめた。
「私は歌詞を見るのがすごく好きなんですけど、次に歌うのは特に歌詞がお気に入りの曲で、アップテンポな曲とバラードを聴いていただきたいです」と伝えて歌ったのは、「Stand Up,Baby」(ハルカトミユキ)と「心做し」(蝶々P)。ここでは表現者としての確かな成長と、彼女の得意とするところがよく出ていたと思う。「歌詞が力強くて生々しくて、ずっと心に響いてくる感じがある」と直後のMCでも語っていたが、歌詞への共感の強さが、その表現力に繋がっていたように思う。
たくさんのアニメ作品に携わることができた2020年。世界が一瞬で、これまでと違う状況になってしまったが、その中でも「作品への愛は変わらなかった」と話すと、今度は自身がヒロインとして出演していたTVアニメ『デカダンス』から、EDテーマ「記憶の箱舟」をカヴァーする。
作品への想いの強さが感じられる歌唱で、アーティスト・楠木ともりとして歌っているが、ナツメを演じていた声優・楠木ともりとしての感情も抑えきれずに歌に乗っている感じがまた感動的だった。歌詞に合わせて、時折画面に向けて優しい笑顔を見せていたのも、ドキッとする演出。そして、自身のデビュー曲「ハミダシモノ」をアコースティックアレンジで披露する。1番はピアノと歌だけという大胆な構成だったが、やはり自身の曲で、数多く歌ってきただけのパワーと説得力がある。後半はバンドも加わり、ヴァイオリンやベースのカッコよさに心奪われてしまった。
コロナ禍もあって、2020年にデビューしたアーティストは、思うような活動ができなかったというのは事実で、そのことはとても残念ではあったが、その中でも“繋がり”を大事にしている彼女は、「みんなの声援でがんばれました。距離は離れたし、会う時間も減ったし、寂しい時間も過ごしていたけど、SNSなどでの言葉を通じて、みなさんとの距離はグッと縮まった1年だった」と語る。
そして、これからもみんなに恩返しをしていきたいと伝えると、ここからは自身の1st EPのカップリングを「眺めの空」「ロマンロン」「僕の見る世界、君の見る世界」を3曲続けて歌っていく。ヴァイオリンがいたことも大きいが、それぞれのアコースティックアレンジも新鮮で、またこれまでとも違う景色を見せてくれた。「僕の見る世界、君の見る世界」では、“きみと”のところで、カメラに指差したり、カメラ目線で歌ったりと、ファンを喜ばせるシーンがたくさんあったのもうれしいところ。
録画ではなく、生でライブをやっているということで、ファンからのコメントを読むコーナーがあったのだが、それを言った瞬間にコメントが殺到し、コメントの回転が早すぎて読めなくなるというプチハプニングもあったが、ファンとの交流を楽しむ時間があるのは、生でのライブならでは。これも新しいライブの形だなと思いつつ、ライブのセットに関して、キャンドルが100本くらいあることや、自身の隣のテーブルに置いてあるキャンドルは、雑誌の企画で手作りしたものだと紹介していた。
そして今回のライブタイトル『MELTWIST』について。メルトとツイストをくっつけた造語で、「目の前にある画面を溶かして、一緒の時間を共有して、離れた場所からだけど集まって、新しい形を私たちで見つけて楽しんでいこう」という思いがこもっているという。メルト=溶けるには、たくさんの意味があって、こういう状況でざわつく心も、温かいアコースティックアレンジのキャンドルライブで、溶かしていこうよという意味も込めているのだそう。
MCのあと「私が家族や友人やみんなのことを考えて書いた曲です」と伝えて、優しいメロディの「バニラ」を歌う。歌詞をじっくり聴いていると、やはり浮かんでくるのは家族への愛。誕生日当日のライブということもあって、ジーンと心にしみた。歌い終わっての「21年間、本当にありがとうございます」というひと言も感動的だった。
そしてラストナンバーは「アカトキ」。画面が一気にオレンジに包まれる。アレンジが、少しハネたリズムで軽やかな感じになっていて、みんなで楽しもうというムードに包まれていた。サビでの「アップデートしていこうよ」という部分は、ライブを見ている人誰もが、思わず口ずさんだのではないだろうか。みんなでひとつになれる曲だし、それこそライブを重ねていけばいくほど育っていく曲なんだなと感じた。曲自体がアップデートされ続けている「アカトキ」は、公式YouTubeチャンネルにリリックビデオがアップされていて、ダウンロード&ストリーミングも開始しているので、そちらもチェックしてほしい。
最後に、2021年春に2nd EPをリリースすることを大発表! 「こだわりにこだわりまくったみなさんへの贈り物になります。みなさんへの感謝の気持ち、2020年過ごして感じたこと、いろんなことを詰め込んだ作品になる予定なので、楽しみにお待ちいただければと思います」と告げて、ライブを締めくくった。
本人も言っていたが、次は生でライブを見てみたい。だけど、こんなにたくさんのキャンドルに灯されてのライブは、なかなか見られないものだと思うので、そういった意味でも本当に素晴らしいバースデーライブだった。
[文・塚越淳一]
楠木ともり「アカトキ」配信中
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