『半妖の夜叉姫』“作品愛”を語りつくす! 半妖の姫たちを演じる松本沙羅さん、小松未可子さん、田所あずささんインタビュー!
アフレコで大切にしているのは“空気感”
――このご時世なのでアフレコの収録が小人数で行われたとうかがっています。なかでも夜叉姫たちは最後に録ることが多いそうですが、収録はどのような様子なのでしょうか。
松本:こういう状況ではありますが、お芝居は生モノなので、絡みのある人となるべく一緒の時間帯に収録できるようにしてくださっているんです。
先にあずささんだけ入るときがあったり、私たち(とわ・せつな)が入ることがあったり、他のキャストの方とも絡みながら収録を進めてきました。3人は絡みが多いので、一緒になることが多いんです。
田所:逆に絡まないと(もろはの場合は)あんまりお会いできないっていう(笑)。もろはは竹千代、獣兵衛さんのチームと録ることも多くて。
小松:そうなんですよね。もろはが単独行動をすることが多いので、置いていかれるパターンもあるので、会わないこともあるんです。「もろは、ごめんね……」って(笑)。
田所:……さびしいですね(笑)。
小松:(笑)。入れ替わり立ち代わりで変わっていくシーンを重要視して録ってもらっていますが、こういう収録だともしかしたら会えないかもしれないゲストキャラクターの声優さんともガッツリと絡むことができているんです。
そうしたなかで、先輩の声優さんたちから「娘がアニメを楽しみにしてて」ってエピソードを聞けることもあって。『犬夜叉』の影響を受けている自分たちもいれば、娘さんたちがアニメを見ている声優さんもいるので、作品愛を語ることもあるんです。
短い時間ながらも、キャスト同士のコミュニケーションがとれている作品だなと思いますね。
――今お話を聞いていて3人の仲の良さを感じたんですが、3人で収録前などにお話しする機会も多いんですか?
小松:収録の前後に話しています。
松本:話しますよね。収録に行くと次回分の台本が置いてあるんです。到着するとまずそれをこっそり読んで「読んだ?」って確認をしたり(笑)。
小松:頭を抱えたりね(笑)。みんな仲が良いんですよ。
田所:収録が終わったあとに、出演者で『犬夜叉』のコラボカフェに遊びに行ったこともあるんです。犬夜叉ファミリーに入れていただいている感があってありがたいです。
――お互いの演技に刺激を受けることも多いのではないでしょうか。
松本:そうですね。最初にいただいた資料が高橋留美子先生がデザインされたキャラクターデザインと簡単な相関図だけだったんです。「この3人がオーディションの対象です」と聞いて、「夜叉姫たちに声がついて動いたら、どういうキャラクターが生まれていくんだろう」って。
でもいざ収録が始まっておふたりのお声、お芝居を目の当たりにしたら「ああ、なるほど!」って自分のなかで腑に落ちました。でも、最初はとにかくおふたりに迷惑をかけないようにと思って――。
小松&田所:いやいやいやいや!
松本:いやいやいやいや!(笑) もう「ダメだちゃんとしなきゃ!」って思っていて。2人からもらえるものがたくさんあります。
ただ、先ほどの話にもあったように、もろはとは別行動になることが多いんです。でも一緒に絡めなかったとしても、こっちでシリアスなものを作っていたら、もろはのシーンで面白くなったり、逆もしかりってこともある。場所は離れていても血はつながっているんだなって感じることが多いんです。
収録のスタジオに行ってテストがはじまって、そこで受け取るものもたくさんあります。「(もろはたちに)こうやってもらえてるから、もっとがんばろう」って。
田所:うれしいです。実はオーディションのとき、もろはちゃん以外のふたりの役も受けていたんです。でも正直にいうと声が想像つかなかったんですよね。実際に一緒に収録させてもらったときに(ニヤっとしながら)「これだ」と(笑)。
小松:「これだ」(笑)。
田所:それぞれ役にピッタリというのは間違いないんですが……なんというんでしょうか。「ああ、もうこれしかない!」と答えをみたような感覚でした。
とわちゃんは現代で過ごしてたけど、現代でも馴染めないような描写があって。でも、戦国時代にも馴染めてないっていう、めっちゃくちゃ揺れるキャラなんですよね。
だから、ちょっとズレた発言をすることもあるんですけど、沙羅さんのまっすぐで誠実なお芝居が「あ、とわちゃんは自分なりの信念があってこの言葉を言ってるんだな」って感じさせる。
すごく難しい役どころなのに、とわちゃんのことを味方したくなるような演技で、すごく好きなんです。人柄がすごく滲んでいるんですよね。
小松さんの演技には、殺生丸さんがめっちゃ滲んでいて「すごい!」と。女性だから、成田(剣)さんのお芝居を滲ませるってめっちゃ難しいと思うんです。その強さを出しながらも、14歳のかわいらしさも出ている。
自分もオーディションを受けていたので、その難しさは痛感していて。せつなちゃんの幅広さを引き出しているのも、小松さんの腕だなって思っています。デレたときがすごくかわいいんですよね(笑)。
小松:うれしい、ありがとうございます!ころあずちゃん(田所さん)の言っていたように、それぞれのキャラクターに“人柄”が出てると思うんです。
とわって見た目がキリッとしてていて、一見男の子っぽい印象を受けるんですけど、でもすごく人懐っこいんですよね。多分どの時代でも生きていけるんじゃないかなって。日暮家で育てられたということもあって人が好きなんだろうなと。
妖怪に対してもそうで、殺生に関しても「ダメだよ殺すなんて」って考え方で。ケンカは強いけど、命の重さは分かっているっていうか。そういう人懐っこさが沙羅ちゃんにもあるんですよね。
コミュ力が高くて、現場ではどの方に対してもフラットに接してて、話してて楽しくて。話の楽しさの引き出しのようなものが、とわに近い部分があるなって。とわのセリフだけ見ると「めんどくさいな」「ウザイな」ってなりがちなんですけど、その人懐っこさが加味されることで柔らかくなるというか。
せつなも「悪くない」って感覚になってるのかなと(笑)。
もろははまさしく犬夜叉とかごめの血を受け継いだお芝居をストレートに演じていて、最初に声を聞いたときに「まさしくこれだ! もろはだ!」って思いました。
ころあずちゃんじゃないと……あの犬夜叉のガサツな部分と、かごめの芯の強さ、しなやかさって出ないんじゃないかなと。ころあずちゃんのなかにある、お茶目な抜け部分のようなものがもろはに重なって、もろはが可愛いんです。
犬夜叉のキャラだけ引き継いでしまっていたらガサツなだけの女の子になってしまうところを、かごめならではの強さとかわいらしさが加わっていて。もろはにはどこか抜けた部分があるから、せつなも喋ってて許せちゃうんですよね(笑)。これはころあずマジックですよ。
せつな的にも2人が“愛せるひとたち”だから、最初はストレートに受け入れられなくても、ちょっとずつこの3人を受け入れていってるんだろうなと……まあ親族ですし(笑)。
――さきほど松本さんがおふたりには迷惑をかけないようにとおっしゃっていましたが、そういったプレッシャーは強かったんです?
松本:はい。「そんなのただの甘えだろ!」って頬っぺたをひっぱたかれるくらいのものかもしれませんが、私は(アニメーションの)経験が少ないこともあって……。
小松&田所:いやいやいやいや……!
田所:むしろ私のほうが「ふたりについていかなきゃ」って気持ちでいっぱいなんですよ。いつも落ち込みながら帰っています(笑)。
松本&小松:いやいやいや!(笑)
――いやいやの大合唱に(笑)。
松本:もう本当に内心ドキドキなんです。毎回収録に行く直前に、(沈んだ声色で)「ああ、今日がんばろう……ああ」って独り言をつぶやいていて(苦笑)。
実際に収録現場でおふたりのお芝居と絡めると「ああ、そうだ! そうだよね!」って元気が出るんです。物語的にもふたりに「しっかりしろ!」って言われるシーンが多いので、すごく響いています。
――キャラクターとしても、松本さんとしても。そうしたシーンで気を付けてること、意識されていることってありますか?
松本:どちらかというとカチッとやりすぎないように意識しているんです。1から10までしっかりお芝居を作りすぎてしまうよりも、おふたりに引っ張られたり、逆に引っ張ったりってところは堅め過ぎず、おふたりと現場で作っていこうと。それは第1話の前から気を付けていました。
小松:ストーリーのはじまりとして、とわが第一声になることが多いんです。つまり、第一声目でとわがこの物語の勢いを出してくれるんです。
私は逆にそれに助けられています。「よし今日もとわが振り回してくれるぞ!」「とわ、がんばれよ!」って。
松本:(笑)。
小松:とわとせつなは“静と動”という感じで。とわはエネルギーのある子なので、何事も全力なんですよね。その勢いを最初から持ってきてくれるので、引っ張ってもらっています。現場の雰囲気として。
田所:確かに。収録が始まってとわの声を聞くと「夜叉姫、はじまった!」って感覚ありますね。
松本:うれしい、ありがとうございます。いつも仲良くしてくださって。本当に「何を差し上げたら良いですか?」という状態です(笑)。
田所:第1話から「せーの」で一緒にスタートできたのがよかったのかなって。現場の雰囲気が「みんなで一緒にやっていこう!」っていう和気あいあいとした感じなんです。私はめっちゃ小心者なので救われています。
――それぞれの現場ならではの雰囲気ってあると思うんですが、『犬夜叉』イズムのような空気感というのものあるんでしょうか。
小松:『犬夜叉』チームは『犬夜叉』チームとして既にできあがっていたものがあるんですが、そのチームの感覚を制作チームもキャスト陣も引き継いでいるように思います。
もともと作品が好きで知っているからこその“解釈の一致”のようなものがあって、絆も強いんです。
特に沙羅ちゃんはしっかり台本を読み込んできていて。「ここは、こういう演技で良いでしょうか?」って疑問、質問を明確に持ってきて####――。
松本:(慌てた様子で)え!? 見られていた……!?
小松:ふふ(笑)。音響監督さん、監督の佐藤照雄さんがそうした質問や疑問もしっかり受け止めているんです。明確に答えが決まっている現場の場合はそういったことを聞きづらかったり、答えづらかったりすると思うんですが、ディスカッションする余地がかなりある現場なので。受け止めてくださるし、そこを踏まえて「いくらでもやりましょう」ってスタンスできてるのが、すごく良いなって。
――すごくステキなチームなんですね。
小松:はい。さきほども言った通りなんですが、単純にみんな仲が良いんです。
松本:それはすごく感じますね。全員でコミュニケーションが取れていて“チーム感”のようなものを感じます。
田所:でも、そうした雰囲気っておふたりが作ってくれてるような気がしてます。先輩たちも居心地がよさそうというか(笑)。
私は緊張しちゃってあまり話せないタイプなんですが、ゲストキャラを演じる方々に、作品の説明をしてくたり、話しかけてくれたりするから、優しい雰囲気が常に流れていて。
そのおかげで、私も先輩たちとお話することができて、獣兵衛役の小山(剛志)さんを今では「兄貴!」って呼べるようになって、竹千代役のファイルーズあいちゃんもすごく話しかけてくれて。ファイルーズあいちゃんと小山さん、私の3人で掛け合うシーンも多いので、柔らかい現場の雰囲気を作ってくれて本当に救われました。