『回復術士のやり直し』とのコラボレーションが生んだ栗林みな実の新しい世界――OP主題歌「残酷な夢と眠れ」は、激しく振り切ったナンバーに|インタビュー
TV アニメ・ゲーム主題歌を中心に活躍するシンガーソングライター・栗林みな実さんが、1月27日(水)にアニメ『回復術士のやり直し』OP主題歌「残酷な夢と眠れ」をタイトルに掲げたシングルをリリースします。
TVアニメ『回復術士のやり直し』は2021年1月13日から放送が始まったばかりの、最強の回復術士・ケヤルの復讐をめぐるリベンジ・ファンタジー。ケヤルが復讐をすることになった残酷な経緯、ケヤルの復讐内容が過激かつダークなため、「TVアニメ化は難しいのではないだろうか」とささやかれてきました。これまでTVアニメ『君が望む永遠』をはじめ、TVアニメ『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』、TVアニメ『プラネット・ウィズ』など、幅広くアニソンを歌ってきた栗林さんにとっても、ここまで“救いの部分のない”作品を彩るのは初とのこと。
その「残酷な夢と眠れ」の作詞を手掛けたのは栗林さんの曲をデビュー当初から手掛けている畑 亜貴さん、作曲は栗林さん本人、編曲はおなじみの菊田大介 (Elements Garden)さん。主人公ケヤルに寄り添った、ヘヴィに疾走するロックチューンとなっています。重々しい緊張感のなかに、キャッチーさが巧妙に混ぜられているのは、この最強タッグで作ったことと、栗林さんの表現力があってこそ。
今回のインタビューでは、「残酷な夢と眠れ」についてはもちろん、栗林さん流のアニソンとの向き合い方についてもうかがいました。
「本当に救いの部分がない」今まで関わった作品とは違った世界観
――『回復術士のやり直し』主題歌のお話をもらったときは、率直にどんなお気持ちでしたか?
栗林:ずっとアニソンを歌い続けてきましたが「またひとつ自分の新しいアニソンが増えるんだな」と。それがまず嬉しかったです。原作やシナリオを読ませていただいたところ、本当に救いの部分がない作品で。今まで関わった作品のなかで、ここまでの(復讐に特化した激しい)内容の作品がなかったので、新しい表現にも挑戦できるなって。それを念頭に置いたうえで、自分はどういう歌を作ろうかを考えていきました。細かい話ですが、新しい歌い方が発見できるんじゃないかなと思って。全部含めて楽しみな気持ちでしたね。
――栗林さんの曲って、どんなにシリアスな曲でも必ずどこかに光や希望があって。曲をいただいたときに、まずそれを探したんですが……「あ、あれ!? ない!」と(笑)。
栗林みな実さん(以下、栗林):そうなんですよね(笑)。私が今まで歌ってきた作品って暗さはあっても最低限一筋の光はあったんですが、この「残酷な夢と眠れ」には希望がないんです。恨みに対して復讐を貫くこと、迷わないっていうことに対しての光はあるかもしれませんが……。
畑さんの歌詞を読んで「一行目からグッと掴まれた」
――作曲はご自身で。そして、作詞は畑 亜貴さん、編曲は菊田大介 (Elements Garden)さんが手掛けられていますが、制作はどこからスタートしたのでしょうか?
栗林:私から「畑さんに歌詞をお願いしたい」とリクエストさせていただいたんです。それで歌詞を先に書いていただきたいとお願いしました。その歌詞をいただいてから、私が作曲をして、菊田さんに編曲していただくという流れです。
もともと私が畑さんの歌詞がすごく大好きで。この作品でぜひ畑さんとご一緒したいなという気持ちがあったんです。復讐というテーマに対して、畑さんだったらすごくステキなものにしてくれそうだなと思って、(レーベル側に)「ダメ元で良いので、お話してもらえませんか?」とお願いしたところ、了承していただけて。
――栗林さんから畑さんには何かお願いしたんです?
栗林:いえ、私からは「お願いします」とだけしか伝えていないんです。歌詞をいただいたときは感動しました。制作がある程度進んだ段階で個人的に連絡を取らせていただき、「ありがとうございます」とお礼は伝えさせていただきました。
――タイトルからしてすごく畑さんらしい言葉ですよね。
栗林:そうですね、本当に。
――歌詞を読まれたときの感動について、詳しくおうかがいしてもいいでしょうか?
栗林:畑さん自身がアーティストじゃないですか。だから言葉に音としてのリズムがあるんです。受け取ってすぐに曲が浮かんできて、音楽としてイメージできて。普段も歌詞から書くことが多いのですが、畑さんの言葉のおかげで、よりスムーズに作業することができました。本当に自然と。サビが完成したときに、自分のなかで“できた!”という感覚がありましたね。
――最初の<無知は罪 恥知らぬ者の勝利>という射抜くような言葉がすごく突き刺さってきて、考えさせられてしまって。
栗林:すごいですよね! もうあの言葉だけでグッと掴まれたんです。
――この冒頭の一行に込められた声に栗林さんの強いエネルギーを感じたんですが、レコーディングでもやはり気合いが入る部分なのでしょうか。
栗林:ああ、ありがとうございます。そこはすごく意識しているところなんです。テレビで流れたときにしっかり聴こえるように歌っていました。
――疾走感があってカッコいいロックチューンですが、表現するのはやはり難しかったです?
栗林:難しかったです。いい人を捨てるというか(笑)。優しさは置いておいて、この世界を貫く!という感情の持っていきかたに少し悩みました。そうした精神的な部分を込めつつ。でも自分で歌詞を書かなかったことで入り込めました。
菊田さんのアレンジがとにかく素晴らしいので。そのオケに声を乗せると「かっこよく歌う」って意識せずともカッコよく歌えるんです。だから難しいは難しいんですけど、スムーズに歌うことができました。
――ところで、この曲がどう映像にのるのか、そしてどんな映像になるのか……というのは、原作ファンは気になるところかと思います。(インタビュー段階では)まだ放送が始まっていませんが、栗林さんはオープニング映像をご覧になられていたりするんでしょうか?
栗林:(笑)ですよね。実は私はまだ拝見していなくて。たぶん皆さんと一緒にリアルタイムで見ることになるかと思います。楽しみに待っているところです。ただ、あれだけ激しい作品じゃないですか(笑)。どこまでどんな感じになるのかなって気になってます。まったく予想ができないところも含めて、毎週楽しくチェックしようかと思っています。ハッシュタグで検索をかけて、みんなの感想を眺めながらアニメを見たいなと。