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『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』富野由悠季監督インタビュー

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』富野由悠季監督インタビュー|「素人芸だった」と語る『逆シャア』への反省と、『閃光のハサウェイ』に向けて

「これはどうやっても終わりようがない」と思った

――『逆シャア』が上映されたのは今から約30年前になりますが、富野監督ご自身は改めて『逆シャア』を見返して、どのようなことを感じられましたか?

富野:30年前なんで安心しているけれど、作り手が自分の作品で安心しちゃうと劣化するだけなんで、やっぱりほめられないな(笑)。

――監督の中では30年前という意識はあまりなかったんですね。

富野:復刻版なんだけど、作品っていうのは復刻ということを意識せずに見られるものにしておかなければならないんですよ。だから、30年経ったから言えることですが、「なんでオリジナル(『機動戦士ガンダム』)のスタッフでできなかったんだろうかと」後悔している部分は今でもしっかりあります。

フィルムで見ると『逆シャア』のシャアってすごく無機質に見えるんだけども、本当のシャアはあんなに無機質なキャラクターではなかった。そういう意味では、安彦(良和)くんの描く線は特別で、ナナイやクェスと絡みの時にシャアがもっと優しく見えただろうから「これなら女性も好きになるな」と思えたかもしれない。この映画のシャアを見ても、女性が惚れるとは思えないですよね。

――無機質……なんですね。自分としては、大人になってから見ると、シャアは結構いい上司をしているなと感じました。

富野:実際、そこは制作していた当時から、劇の組み方としてすごく気をつけた部分です。「女に好かれる男ってなんなんだろう」ということをずっと考えていて、結果的に合格点とはいかなくても55か60点くらいは上げられる描き方はできたとは思っています。

――『逆シャア』は、アムロとシャアの戦いに決着がつく作品ですが、監督としてもそれは同じ思いでしたか?

富野:基本的にこれで決着を着けたつもりですし、決着を着けてしまったからこそ、それ以降の僕自身は腑抜けになってしまったということは自覚しています。今日みていて嫌だったのが、劇の組み立て方すべてが理想論じゃなくて、仕方なくこうなったという妥協をしているので、映画としてはあまりお勧めできないんです。

例えばサイコ・フレームの扱い方。もっと上手にやらなければいけなかったのに、ああいう形にしかできなかったのは無様だと思っています。

――サイコ・フレームの描き方について納得がいっていないと?

富野:これは当時も今もそうなんだけど、あれについてのアイディアが未だに出てこないの。今回見たときも、「これ以上のものが思いつかなかったから仕方ない」と感じたのが正直なところで、誤魔化して逃げたという感触がものすごく強いんです。ただ、同時にその誤魔化しての逃げ方としては上手だなと思いました。

それは、最後に子供が産まれるという必殺兵器を使ったからで、このおかげでそれまでのよくわからない展開をチャラにすることができた。それは全部承知の上でやっていて、制作していた当時、コンテの5分の4くらいを書き終えた段階で「これはどうやっても終わりようがない」と思った。

こうして見返すと、あのラストを思いついたから、それまでの流れはどうでもいいと思った部分がいくつか見えてしまうのが嫌なんですね。

だから『逆シャア』のファンには申し訳ないんだけれども、新しいファン層に「見てください」とは口が曲がっても言えないというのが、僕のこの作品への評価です。

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