「SSR鉄平って?」――なぜ『ひぐらしのなく頃に』ファンは、北条鉄平で大盛りあがりしたのか
2021年7月からは続編となる『ひぐらしのなく頃に卒』の放送も決定し、いよいよ最終回を迎えたTVアニメ『ひぐらしのなく頃に業』。
完全新作となるエピソードであることが判明して以降は、常にSNSを中心に大きな盛り上がりを見せた『業』ですが、中でも大きな反響が起こっていたのが、登場人物の1人である北条鉄平に焦点があたったエピソードである第23話。
放送後には、「SSR鉄平」がTwitterのトレンド入りを果たし、公式Twitterもそれに反応して、鉄平のGIFや鉄平の描かれたシーンの原画が集中して公開されるなど、ちょっとしたお祭り状態に。
公式Twitterで行われた「もう1度みたい話数アンケート」においても、第23話は圧倒的な得票数を得ているようで、いかにファンに衝撃を与えたかということが分かります。
おはよう😃
— 宝亀克寿 (@houkikatuhisa) March 16, 2021
昨日は『ひぐらしの泣く頃に』で
演じた北条鉄平に6000を超えるフォロー、ありがとうというよりビックリしたというのが本音です。
励みにしてマスク、手洗い、三密で
コロナに対しても頑張る象🦣🦣‼️
青二の先輩であり、寿司友達の
古川登志夫ちゃんと話すと
心がホッコリする。
会いたいね pic.twitter.com/9u1IlvnsVa
▲旧作から北条鉄平の声を演じ続けている宝亀克寿さんも、その反響の大きさに驚かれている様子でした。
ただ、『業』から入ってきた方や、『ひぐらし』シリーズのライトファンの方々には、なぜ鉄平がここまで人気を集めているのかピンと来ていない方も少なくないはず。ここでは、その理由を解説していきます。
北条鉄平ってどんなキャラクター?
北条鉄平は、『ひぐらし』のメインキャラクターの1人である北条沙都子の叔父にあたる人物。沙都子の両親が他界したあと、兄の遺産を目当てに妻である玉枝と共に沙都子と悟史を引き取るも、鉄平たちに心を開かなかった沙都子に対し虐待を働きます。
しかし、妻である玉枝が4年目のオヤシロ様の祟りの犠牲者となり、悟史も失踪。北条家は、ダム建設に賛成して多くの村人からの恨みを買っており、居心地も非常に悪かったことから、鉄平は沙都子を捨てて雛見沢を離れ、愛人の元へと転がりこんでいました。
そんな鉄平が雛見沢に戻ってくることになるのが、「祟殺し編」と「皆殺し編」。愛人が消息不明となり、北条家に残ったお金を目当てに雛見沢に戻った鉄平は、沙都子にものを投げつけたり、ロクに学校に通わせず身の回りの世話を焼かせ、沙都子にとって大切な悟史の部屋を脅しに使うなど、数多くの虐待を働きます。
それまでの部活の日常が崩壊し、部活メンバーのいずれかが沙都子を助け出すべく、鉄平を殺害しようとしてしまうため、鉄平が戻ってきた時点で、梨花がそのカケラ(世界)での惨劇の回避を諦めるほど。
『ひぐらし』の世界には、完全な悪と呼べる人物はほとんどいないのですが、鉄平はその中の数少ない1人で、あらゆるエピソードで根っからの悪人として描かれてきたキャラクターでした。
そんな憎まれ役の鉄平ですが、実は『ひぐらし』ファンから忌み嫌われていたというわけではありませんでした。
「祟殺し編」において、鉄平は沙都子を救おうとする圭一にバットで撲殺されることになるのですが、「体格もよく、喧嘩慣れしているはずの鉄平が、平凡な中学生である圭一になぜ抵抗できなかったのか?」という謎に対し、「鬼隠し編」における真相(※1)を絡めて、「鉄平は圭一を正気に戻すため、あえて抵抗をしなかった」と解釈する、通称・「ワシを信じて……」ネタがファンの間で誕生。
※1:「鬼隠し編」のレナは、雛見沢症候群を発症し、疑心暗鬼に陥った圭一を最後まで信じ抜き、撲殺される直前にも「私を信じて」という言葉を残していたことが、後のエピソードで明かされています。
元々、雛見沢の住民から忌み嫌われることになる原因は鉄平自身ではなく兄夫妻にあったこと、鉄平たちに対して、沙都子がまったく心を開こうとしていなかったなど、鉄平にも多少は同情の余地が残されていたました。
またゲーム版のオマケシナリオである、キャラクター達がそのエピソード内の出来事を振り返るお疲れ様会では、「本当は子供が大好きで、沙都子と仲良く暮らしたい」といった趣旨の発言をしていたこともあり、鉄平を善人として描く2次創作が少なからず作られていたほど。
他にも鉄平の真意に気づき、「祟殺し編」での行動を圭一が後悔するMADムービーが作られたり、スクウェア・エニックスが主催した「ひぐらしのなく頃に大賞」の受賞作をコミック化して収録したアンソロジー『ひぐらしのなく頃に 語咄し編』内の「里恋し編」でも、沙都子をかわいがる“きれいな鉄平”が登場するなど、次第に一種のいじられキャラのような愛され方をされるようになっていったのです。