さまざまな色を見せていきたい──春アニメ『バトルアスリーテス大運動会 ReSTART!』EDテーマ「桜舞い散る夜に」でアーティストデビューする近藤玲奈さんにインタビュー│ファンから募集した質問にも回答!
この曲で私自身も救われました
──「桜舞い散る夜に」はアニメ『バトルアスリーテス大運動会 ReSTART!』のエンディングテーマ。本作は、1997年から1998年にかけて放映されたアニメ『バトルアスリーテス大運動会』の完全新作となりますが、最初の放映当時は近藤さんはまだ生まれてなくて。お話をいただいたときはどのようなお気持ちでしたか?
近藤:自分のソロアーティストとしての曲がアニメのエンディングとして流れるって「どうなるんだろう?」とワクワクしました。単純に信じられないというか(笑)。流れてくる絵がどんな雰囲気なのか、キャラクターたちがどう動くのかも楽しみだなって。
──「桜舞い散る夜に」をいただいたときは、どんな印象がありましたか?
近藤:去年の夏、秋にかけてくらいの時期に「桜舞い散る夜に」とカップリングの「Listen~真夜中の虹」の仮歌を初めて聴いたんです。「桜舞い散る夜に」は、二度と会えないけど心はそばにいるよという歌詞で。悲しいけど前を向いていかなければいけない。“前を向いて行こう”とする明るさが逆に悲しさを漂わせていて、そこに桜を感じたんです。
桜は満開に咲いたらすぐ散ってしまうじゃないですか。そういう切なさ、儚さがこの曲に通じるのかなって。
実は最初に聴いたときは、いまと比べるとテンポアップした感じの、爽やかな感じの曲調だったんです。アニメのエンディングの映像に合わせるために少しアレンジされて、いまのゆったりしたテンポになりました。仮レコーディングをしたときはテンポアップのバージョンだったんです。本番のときに初めてこのテンポで歌ったので、そこは少し苦労しました。
──ゆったりとしたテンポだと、勢いでいけない分、言葉もより丁寧につむいでいかなければいけないイメージです。
近藤:そうですね。ところどころ表現方法を変えていかないと平坦になってしまうなって。テンポアップした曲を聴いていた分、迷いが生じてしまって苦戦したんですが、スタッフさんに「この曲は幸せっていうより、少しうつむいている感じ。悲しいけど、そう思わないようにしていたいって信じてるような曲」だと。それが自分のなかでしっくりきて、イメージが膨らんだんです。
その情景を思い浮かべながら歌ってみたら「さっきと全然変わりました」と言っていただけて私も自信を持って最後まで歌うことができました。
──アニメサイドからリクエストはあったんでしょうか?
近藤:レコーディングにアニメの監督さんたちが立ち会ってくださったんです。「こういうふうにしてほしい」というよりは「この言葉が作品の世界観に通じてます」と教えてくださって。歌う前にキーワードを知ることができたこともありがたかったです。
──近藤さんとしても、一つひとつの言葉の意味を丁寧に考えられていったんですね。
近藤:はい。歌詞の意味を考えて歌いたいなというタイプなので……。歌詞の情景が浮かぶように意識しました。夜って少し悲しい雰囲気で、対して桜は明るさや希望を感じるものだと思うんです。
その正反対の色が合わさったものが、主人公の気持ちを表してるんじゃないかなって。悲しくて暗い気持ちになってしまってはいたけど……MVにもある通り、最後に光が差し込んでくるのを見て明るい気持ちになって歩いていくという。
──そうした感情を表現したであろう、MVの色彩も絶妙でしたね。
近藤:そうなんです! シルエットで桜の存在をぼかしているところもあったり、ほんのり闇っぽい部分があったり。基本的にもやがかかっているような感じの雰囲気で、まさにこの曲の世界だなと。
──個人的にグッときたのが<桜舞い散る夜がくれた 再び会うためのエピローグ 会えない時間と距離を超えて歩いていこう>という部分。そして、それが今を生きる意味だと結んでいます。コロナ禍でみんなと会えなかった時期を思い出しながら歌ったのかなと思ったんですがいかがでしょう?
近藤:まさにそうですね。この2行は今の時代を思い浮かべるんじゃないかなって。去年はイベントもかなりの数が中止になってしまって、ファンの皆さんとお会いできる機会が減って……。ちゃんとファンの皆さんとコミュニケーションがとれなかったので心配になってしまったこともありました。
でもオンラインイベントという新しいシステムが導入されたことによって、直接は会えないけどコミュニケーションを取られる新しい手段ができて。あとTwitterやお手紙で応援してくれるかたもたくさんいて、よろこびを感じることも。
昨年、今年と、世界中のひとたちが同じことを願っていたと思います。「この事態が早く収束されるように」って。それって考え方によっては感慨深いことだなと思ったんです。
みんな知らない人ではあるけど、同じことを思っている。ある意味、家族のような存在とも捉えられるんじゃないかなって。
──なるほど。いまお話を聞いて思ったんですが、世界中の人に向けた言葉でもあり、大切な人に向けた決意の言葉でもあり……。
近藤:そうですね。聴くかたによっていろいろな解釈ができるんじゃないかなと思っています。私の場合、去年おばあちゃんが亡くなってしまって。大好きなおばあちゃんで……近しい人が亡くなったのが初めてだったんです。
とにかく涙が止まらない日々を過ごして、「大切な人がいなくなるってこんなにもつらいんだな」と感じました。立ち直れるのかなって心配だったんですけど、おばあちゃんもきっと私に前を向いてほしいと思っているだろうから「私もがんばらなきゃ」って。それで家族全員で立ち直ることができて。
そう思えたことで、ある意味一歩成長できたのかなと思いました。この歌詞を読んだときに、おばあちゃんを思い出しました。
──おばあちゃん、アーティストデビューが叶ってよろこんでくれているでしょうね。
近藤:アーティストデビューは伝えられなかったんですけど、作品のライブに遊びにきてくれたことがあって、泣きながら見てくれて。誰よりも私の活動を応援してくれていたんです。いつも電話をかけてきてくれて、「玲奈ちゃん、がんばってるね」って言ってくれて。きっといまも見てくれるんじゃないかなって思ってます。
思い出は心の中に仕舞っておけるもの。つらいことがあっても、想っていれば“いつだってそばにいる”ってことを教えてくれる曲でもあるんじゃないかなって思ってます。この曲を聴いたとき、自分にとって励みになったんです。
皆さんもコロナ禍でなかなか人と会えない状況だと思うんですが、大切な人と会えなくて悲しくなったときや、私と同じような思いを抱えたときに聴いてほしいなって。この曲の解釈は皆さんの経験が正解なんじゃないかなと思ってます。
──話が変わってしまうんですが、近藤さんはご家族ととても仲が良いんですね。
近藤:そうなんです。おばあちゃんが超絶天然な性格で、その血がみんなに流れてるんですよね(笑)。家族のLINEグループの名前が“ずっこけファミリー”(笑)。わいわいガヤガヤやっています。