【BLのことさらに知ってみませんか?】2020年一大ブレイクした、今さら聞けないBLドラマの世界【アニメイト編集部BL塾・応用編】
BLドラマに火がついたのは2016年だった
阿部:金センセイのBLドラマへの熱量がすごく伝わってきたところで、早速いろいろ教えていただこうと思います。
BLドラマが一大ブームとなったのは2020年ですが、その前からBLドラマの人気はあったのでしょうか?
金:まず2016年に中国で放送された『ハイロイン』という作品が爆発的な人気を博しました。大人気のBL小説の実写化だったことと、主演俳優二人のビジュアルも良かったことなどから配信1日でアクセス数が1,000万を超える人気ぶりで。中国国内での放送が禁止されるほど、社会現象になった作品です。アジア各国のファンミーティングではチケット販売開始すぐに完売することもありました。今は主演俳優の二人とも中国の様々なドラマに出演しています。
石橋:放送中止はすごいですね……!
阿部:中国のBLドラマ『ハイロイン』が先駆け的存在となり、徐々にBLドラマの注目が集まっていったという感じなのでしょうか?
金:2014年からタイでも『Love Sick(※3)』というBLドラマが放送されて人気になったのですが、一気に話題になったのは『ハイロイン』ですね。また、同じく2016年にはタイでBLドラマ『SOTUS/ソータス(※4)』が放送されて、そちらもかなり人気がありました。そのあと2017年に台湾のBLドラマ『HIStory(※5)』も盛り上がって……という流れだと思います。
※3:Love Sick
INDRYTIMESさんによるウェブ小説『LOVE SICK: The Chaotic Lives of Blue Shorts Guys』を原作としたタイのTVドラマシリーズ。富裕層のイケメンが通う男子高校で出会った二人がとある交換条件で偽装交際をすることになる。偽りの関係が次第に真実の愛へ変わっていくストーリー。タイ初のBLドラマであり、タイBLドラマ人気の先駆け的作品。
※4:SOTUS/ソータス
(C)GMM TV CO., LTD. All right reserved.
BitterSweetさんのオンライン小説を原作とし、2016年にGMMTVが制作したタイのTVドラマシリーズ。SOTUS(Seniority:敬意、Order:秩序、Tradition:伝統、Unity:団結、Spirit:精神の頭文字を取ったもの)と呼ばれる新入生教育制度のもと厳しい指導を下す大学生3年生のアーティットと、それに反抗する新入生のコングポップの関係性の変化が描かれる。
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※5:HIStory
(C)CHOCO MEDIA CO., LIMITED
ChangTing-feiがオンラインストリーミングサービス「LINE TV」向けに制作し、2017年から放送が開始した台湾のWEBドラマシリーズ。イケメン同士の純愛ラブストーリーをテーマに、毎シーズンごとに様々な登場人物と演出で構成されるオムニバス作品。台湾BLドラマの先駆け的作品で、3月14日にはシリーズ最新作『HIStory4 隣のきみに恋して~Close to You』が日本で配信。
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金:中国は『ハイロイン』の爆発的な人気からBLによる売り上げやファンからの熱意が高いことに気づき、いろいろと作品を出していました。新人俳優を売るのにも持って来いなプロモーションツールだったのも大きいです。ただ、中国ではBLコンテンツの放送や配信の審査が通りにくいこともあり、現在はBL原作でも実写化する際はブロマンスとして表現されています。
石橋:2016年に土台が出来上がって、宣伝の施策なども合わさり、どんどん話題が広がっていったということなんですね。
金:そうだと思います。順調に市場が大きくなっていくと同時に様々な国で準備していたBLドラマが2020年に放送され、爆発的に広がった感じですね。
阿部:日本では2018年に『おっさんずラブ(※6)』『ポルノグラファー(※7)』などのBLドラマがかなり話題になりましたが、それ以上に2020年は一大ブームとなった感覚があります。
※6:おっさんずラブ
2016年よりテレビ朝日系列で放送されている人気テレビドラマシリーズ。田中圭さん、吉田鋼太郎さんなどそうそうたるキャストが出演。地上波で実写BL作品が放送され話題に。
※7:ポルノグラファー
祥伝社の『号外on BLUE』『on BLUE』にて連載されていた丸木戸マキさんの漫画原作のTVドラマ。竹財輝之助さんが主演。とある大学生と官能小説家の不思議で甘美な関係が描かれる。
金:『おっさんずラブ』も日本だけでなく台湾・中国でかなり人気でしたが、2020年に放送されたタイの『2gether』はそれを上回る異常な人気ぶりでした。あまりの人気からテレビなどのメディアで取り上げられる機会が増えたことも人気に拍車をかけたのだと思います。
また、『2gether』以外にも2020年は話題のBLドラマが数多く配信されていたこともあります。日本では『チェリまほ』がかなり人気でしたし、ブロマンスですが中国のBL小説が原作のドラマ『陳情令(※8)』もものすごい反響でした。そういうビッグタイトルの多さも一大ブームとなった理由の一つかなと。
※8:陳情令
©2019 Shenzhen Tencent Computer Systems Company Limited
中国のオンライン小説サイト「晋江文学城」にて連載されていた墨香銅臭さんの小説作品『魔導祖師』を原作としたブロマンスドラマ。妖魔、邪鬼などが登場する中国のファンタジー作品で、それらを退治する修行者の姿が描かれる。ドラマ、アニメ、ゲームと様々なメディアミックスも行っている。
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阿部:なるほど……。Rakuten TVでは2017年から台湾BLドラマ『HIStory』を配信されていますよね。2020年のBLドラマブームで変化を感じることはありましたか?
金:2019年から2020年にかけてRakuten TV内のBL作品の購入者数が19年から20年でおよそ7.7倍に増加しています。ただ、2017年の『HIStory』から熱量の高いファンの方はいらっしゃって、2019年に『ハイロイン』『SOTUS』を配信してさらにユーザーが増えて、2020年に『2gether』の配信でユーザー数だけでなく年齢層の幅も広がった感じです。今ではRakuten TVとしてBLドラマは注力ジャンルの一つになりました。