【BLのことさらに知ってみませんか?】2020年一大ブレイクした、今さら聞けないBLドラマの世界【アニメイト編集部BL塾・応用編】
日本と海外のBLドラマの違い
阿部:日本と海外ではBLドラマのジャンルや表現などに違いはあるのでしょうか?
個人的には日本のBLドラマはオフィスラブなどの大人の恋愛が多く、海外のBLドラマは学園ものが多い印象があるのですが……。
金:まず一つ違うのがタイなどは小説原作で実写ドラマ化することが多いです。中国だと人気の「耽美小説(=BL小説)」が実写化されています。
阿部:なるほど! 日本だと『ポルノグラファー』『チェリまほ』、最近ドラマ化された『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男(※9)』も全てマンガ原作ですね。
※9:絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男
Twitterで大人気となり祥伝社から発売された紺吉さんのコメディ漫画作品。登場人物全員がBLになってしまう世界でBLにならないように奮闘する主人公が描かれる。俳優・犬飼貴丈さん主演で2021年3月CSテレ朝チャンネル1にて放送。
金:また、学園ものの原作小説がドラマ化されることが多いです。日本だと学園ものは比較的高校生が多いと思うのですが、最近のタイBL小説は大学生同士が多くて。大学生で理系のイケメンが王道的に出てきます(笑)。
石橋:へぇー!
金:先ほどお話した中国BLドラマ『ハイロイン』や韓国での初BLドラマ『君の視線が止まる先に(※10)』は高校生、タイの人気BLドラマ『SOTUS/ソータス』『2gether』は大学生なので学園ものは多いですね。弊社が運営するユーザー・コミュニティ参加型の字幕付き動画配信サービス「Rakuten VIKI」でも学園ものは人気だと言っていました。
※10:君の視線が止まる先に
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韓国初のBLドラマ作品。古くからの友だちであり主従関係でもある二人。ある日、現れた一人の転校生の存在により、二人の関係が変化していく。2020年10月には日本で劇場公開。
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阿部:BLの中でも学園ジャンルは王道ですよね。
石橋:学園ものや青春ものって世界共通だから誰でも見やすいというのも理由としてありそう。
金:成熟されていない純粋な気持ちは学園や青春の方が描きやすいのかもしれません。爽やかでキュンキュンしたいなら学園ものなのかなと。とはいえ、最近は本格的なサスペンス作品が出たり、今年の夏頃にはヤクザ系の作品が出たりと学園もの以外の作品も増えてきています。
阿部:タイBLはコメディ作品も多い印象があるのですが、実際いかがですか?
金:コメディ要素のないドロドロした作品やシリアスな作品もありますよ。ただ、一般作はあまりみていないため、言い切れないのですが、コメディタッチのドラマも多いのかもしれません。さらにコメディだとライト層が出やすい傾向がありそうですよね。さらにコメディだとライト層も入ってきやすいので人気が出やすい傾向はあるかもしれません。日本でも『おっさんずラブ』『チェリまほ』はコメディで人気も高いですよね。
阿部:たしかに! コメディ作品も世界共通で人気が出やすいのかもしれないですね。
金:一方でタイBLドラマには特有な点がいくつかあります。基本的にタイBLドラマは3ヵ月くらいかけて12~13話毎週放送します。そして、ドラマ放送前から放送時には俳優さんたちの活発なCP活動(カップリング活動)が、ドラマも盛り上げる原動力になります。
石橋:カップリング活動……?
金: SNSなどでは一般的にCP活動と言われているものですね。ドラマのファンミーティングやイベントを実施したり、プライベートでも主演俳優の二人がSNSを活用して二人の日常を共有したりします。
役になりきるでもなくインスタライブで二人が寝る前に仲良く会話している姿にファンが喜び、口コミが拡散されていく。
付き合っているわけではないけど、ドラマの枠の外でも二人の仲良し姿が見れるのって、ファンにとってはすごく嬉しいことだと思います。
阿部:タイBLの『TharnType/ターン×タイプ(※11)』ではファンミーティングで結婚式をしたのが大きな話題になりましたよね。
※11:TharnType/ターン×タイプ
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MAMEさんによるウェブ小説『TharnType Story』が原作とし、2019年から2020年にOne 31チャンネルとLINE TVで放送されたTVドラマシリーズ。ゲイを嫌う大学一年生のタイプは同じく大学一年生の新入生・ターンとルームシェアすることになる。優しくイケメンのターンだったが、性的指向がゲイであると気づき、さまざまな嫌がらせでターンを部屋から追い出そうとするタイプとそれに対抗するターン。二人の関係性の変化が描かれていく。
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金:そうなんです! そういうプロモーション活動が上手いんですよ。制作会社はYouTubeチャンネルを開設して動画をアップしているので、最初から見ていなくても面白さやカップリング活動が口コミなどで話題になって視聴者が増える。結果的に回を重ねていくことに盛り上がっていくという感じですね。
石橋:なるほどな~。訴求の仕方が日本とは違う……。
金:タイの場合は俳優さんの所属事務所が制作したり、大きく関わってることが多いこともあるんです。人気のBLドラマを制作しているGMMでは所属している新人俳優を出演させてブレイクさせています。最近では有名な人も出演していますけど、そういう経緯からカップリング活動がやりやすいのもあるかと。
また、そもそも日本はドラマより実写映画の方が多い気がするので、宣伝が一時的なもので終わってしまいますよね。
阿部:日本だとBLマンガが一冊完結の作品ばかりなので、連続ドラマにしづらいのかなと個人的には思っていました。基本的に性描写もあるため、レーティングを付けられる映画になってしまうのかなと。
金:なるほど! それは気づかなかった視点です。
あとは制作費の問題が大きいと思います。タイBLはドラマ内に広告的な形で特定の商品を使用しています。ずっと同じ飲み物を飲んだりお菓子を食べたり。企業と提携を組んで制作費をつけられるから、BLドラマの制作が活発なのかもしれません。
韓国のBLドラマを制作する方と話したところ、BLドラマだと広告がなかなか入らないそうで……日本はBLに対する認識は変わってきていますけど、そもそも商品を広告としてドラマに出すことはあまりしないですよね。
石橋:おもしろい! 日本ではBLに限らず「これ美味しいよ!」みたいに商品を宣伝することはないですからね。
金:ドラマの中に出てくる商品や協賛した商品を紹介するイベントに主演二人を呼んで、ドラマの話しをしながら商品の紹介をするとかも結構あります。
石橋:タイと同じレベルで盛り上がる作品をつくるのはハードルが高そう……。
金:ただ日本でも『おっさんずラブ』『チェリまほ』などは海外でも人気があります。昨年Rakuten TVが制作出資した『Life 線上の僕ら(※12)』が韓国で放送後、主演の白洲迅さんの過去作品が急に売れ始めたり、俳優さんたちのインスタのフォロワーが急激に増えたりしています。なので、今後も日本がBLドラマをつくれば確実に海外でも人気が出ると思います!
※12:Life 線上の僕ら
©「Life 線上の僕ら」製作委員会©常倉三矢/芳文社
花音コミックスにて発売された常倉三矢さんによる漫画作品。高校時代に出会った二人が惹かれ合い成長していく姿が丁寧に描かれ「泣けるBL」として話題に。2020年には俳優の白洲迅さんと楽駆さん主演で実写化。
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阿部:IPがこれほど豊富にあるからこそ、盛り上がるBLドラマが増えてほしいですね。
石橋:下地はできているので、もしかしたら今年や数年後にはドーンと売れる作品が出てきてもおかしくないかも!
金:逆に日本のBLマンガを原作にして、海外がドラマを制作する可能性もありますけどね……!
阿部&石橋:たしかに……。