音楽の冒険はまだまだ続く！「いろいろな自分を見せたい」「飽きさせたくない」くどはるの新境地は、“キャッチー”を意識した初めての胸キュンソング／工藤晴香さん 1stシングル発売記念インタビュー

みんなと一緒に映画を観ているような曲に

――そんな中でリリースされるシングルのタイトル曲「Under the Sun」は、くどはるさんの中でどういった立ち位置の曲になるんでしょうか。

工藤：“キャッチー”をひとつのテーマに制作したんです。1stシングルということで、私のことを知らない人にも聴いてもらえるように、分かりやすさはめちゃくちゃ意識しました。

ミニアルバムに関しては自己紹介というか。「工藤晴香ってこういう考えで、こういう生き方をしています」っていうものがギュギュっと詰まったものだったんですが、今作は私自身のパーソナルな部分は押し出しすぎないようにして。誰が聴いてもスッと入ってくるような、1stシングルらしさを詰め込みました。

――ということは、＜君がヒーローで 私がヒロインだ＞って歌詞は、くどはるさんとファンというよりも、物語のなかの登場人物なんでしょうか。物語性もすごくある曲ですよね。

工藤：映画の要素を入れていて。だから登場人物たちという感じですね。

――ああ、だから＜モノクロの映画＞ってところからスタートするんですね。映画をテーマにした理由というのは、何かあったんですか？

工藤：今作を作るにあたって「恋愛ソングはどうでしょうか？」という提案をスタッフさんにいただいて。挑戦したことがなかったですし、1stシングルなので、「じゃあ、恋愛ソングを書いてみよう」と。

「みんな経験したことがあるよね」というような、普遍的な内容を書きたいなと思って。自分自身を出さずに、あえて映画の世界観を入れることで、物語を見てる、少し離れた自分を書きたいなと。

だから（自分は）少し離れてるんですよね。これまでは私が主人公という感じが強くて。その姿を見せることで皆さんを励ましたい気持ちがあったんですけど、今回はみんなと一緒に見ている感覚です。

――曲は先にいただいていたんですか？

工藤：メロだけのデモをいただいていました。それを聴いたときに「夏っぽいサウンドだなぁ」と感じたのと、リリースが夏だと聞いていたので「じゃあ夏っぽい恋愛ソングにしようかな」って。

――メロディから得られる情報って大きいですよね。

工藤：すごく思います！　最初は悲しい曲にしようかなとぼんやり思っていたんですが、聴いたときに「あ、なんか違うな。じゃあポジティブな曲にしたいな」って。

――恋愛ソングというと悲しく切ない歌が多い印象なのですが、失恋はひとつテーマになりつつ、切なくもすごく明るい曲ですよね。

工藤：実際に歌詞を書くにあたって恋愛ソングを研究したんです。「リアル楽しい！充実！」というよりも、寂しい、切ない、会いたい、失恋……をテーマにした曲が異常に多いことに気付いて。

もちろんそれが悪いわけじゃなくて、恋愛で悲しい思いをしていたり、傷ついていたりする人のほうが多いのかなって。それなら私自身もそういう曲にしようかなと思っていたんですが、サウンドがいかんせんキャッチーでポップなので（笑）。

――晴れやかな日差しを浴びるような、眩しいサウンドですもんね（笑）。

工藤：そうなんですよ！（笑）　だからそこはすごく考えましたね。「どうしようどうしよう」と思いながらも。

――糸口となったものはあったんです？

工藤：サビは前向きにしたいなという気持ちがあって。起承転結を考えたときに、最後は笑顔で終わらせたいなと思ってました。だからBメロだけに切ない要素を入れてっていうメリハリを大事にして。最初に書いた歌詞は、全部“悲しい”だったので、ディレクターさんから「全部悲しいよ！　こんなにポップなのに！」とツッコミが入りました（笑）。

それでサビだけ明るくしたんですけど、「これだと前に進めていない気がする」と言われて、「ああ、確かにな」とリライトして。最後のほうにある＜私らしく朝を迎える＞＜エンドロールには君の名前を＞という前向きな言葉に結び付けられるようにしたいなと思っていました。

――個人的に＜つまんないノンフィクションは置いて行こう＞という前向きな言葉も好きなんですけど、後から加えた言葉だったりします？

工藤：ここは最後に完成したんです！　2CのあとのDメロだけが全然出てこなくて。「無理やり言葉を入れてとっ散らかるより、このDメロをなくしませんか？」って提案したんですが、「もう楽器のレコーディングが終わってるから無理だよ」って（笑）。だからすっごく悩みましたが、悩んだだけあって自分でも気に入っています。

――その言葉の前には＜鳥たちは私だけを乗せてゆく＞という、情景を想像させるような言葉があって。青空のような曲だからこそ、鳥もすごく似合うなと思いました。

工藤：良かったです。今まで登場していなかったものが突然出てきたなと書きながら思っていたんですが（笑）。でも「まあいっか！」って。

――歌詞の中に＜ありがとう＞という言葉があるじゃないですか。ここまでダイレクトに＜ありがとう＞って伝えるのは、おそらく初めてなんじゃないかと思うんですがどうでしょうか。

工藤：ああ……今まではなかったかも。

――Roseliaの「軌跡」に＜ありがとう＞を伝える場面がありますけど、作品の楽曲ですしね。

工藤：そうですね。確かに自分の作品でとなると、気持ちをダイレクトに出すっていうのはなかったんですが、恋愛ソングなので分かりやすい感情を見せたいなと思っていました。あまり難しくしすぎて純文学のような歌詞にしちゃうと、聴いていても分からなくなっちゃうだろうなって。