映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』でハーレイ・クインを演じる声優キャスト・東條加那子さんインタビュー
インターネットと収録環境さえあればハリウッドの収録にも参加できる
――脱線ついでに覗いたいのですが、海外では日本のアニメはどのように見られているのでしょうか?
東條:日本のアニメはすごいんですよ。本当に!(笑)
ドイツでいわゆる“ゴールデンタイム”と呼ばれる時間は20:15から始まるんです。20時からニュースを流して、15分後にゴールデンタイムがスタートします。
――日本のニュース番組より遅いんですね。
東條:そして、そのゴールデンタイムになると子供向けチャンネルは、揃って日本のアニメを流し始めるんです。『ONE PIECE』や『NARUTO』、『ドラゴンボール』とかです。このチャンネルは特定の人だけじゃなく、誰でも見られる地上波のようなチャンネルです。
――日本のアニメだらけ?
東條:だから日本のアニメはめっちゃメジャーなんです。特に若い子や35歳以下くらいは、日本のアニメをよく見ています。これはドイツだけでなく、トルコやアフリカ、エジプトもそうです。
日本のアニメが何度も放送されるので、私は友達から「カナコ!このアニメ知ってる?」と、私の知らないアニメについて聞かれることが多いんです。
――それは気まずいですね(笑)。
東條:「それは30年も前のアニメだから覚えてないよ」と伝えても、「私の国では何度も再放送されてるから人気だ」と言われますね。
――日本人として誇らしいですね。
東條:それと日本のアニメが人気のおかげで嬉しいのは、『クレヨンしんちゃん』などのアニメで日本の文化を知ってくれることです。例えば「お弁当」とか「家庭環境」とかです。
ヨーロッパから見た日本なんて、すっごく遠くて、なんだかよくわからないアジアの国です。それこそ「寿司」くらいしか知られてなかったと思います。でも若い世代を中心に、アニメを通して日本の文化に触れてくれるんです。
――普通の若者でしょうか? アニメオタクやアニメファンのような特別な人々ではなく?
東條:それが、ごく普通の子供が見ているんです。私たちが日本で日本のアニメを見て育ってきたように、ドイツ語に吹き替えされた日本のアニメを見て育っています。だから、私はその吹き替えの現場によく呼ばれるんです。
――日本語のスペシャリストとして呼ばれるのですか?
東條:はい。スタジオにいるドイツ人の声優に、いろいろ教えています。あっちで暮らしていると、そういうお仕事もあるんです。ドイツでもアニメや声優のお仕事に関わらせていただけるのは、とても幸せなことです。
――いろいろな活動をされているのですね。
東條:させていただいてますね。家にもスタジオがありますし。
――え? 自宅にスタジオですか? どんな豪邸に住んでいるのでしょうか!
東條:あはははは! 豪邸じゃありません。でも、機材は揃っているので家からリモートで収録しています。アニメの収録もできるので、日本からのお仕事もお待ちしています。
――日本からのオファーも受けられるのですか?
東條:もちろん受けられます。ドイツだとリモートで収録するのは、珍しいことじゃありません。さすがに家で収録している人は多くないと思いますが、最寄りのスタジオとかを使えばできます。ドイツにいるスタッフが、ハリウッドにいる役者を遠隔で収録することはよくあります。
――すごい! 後で音声ファイルを送れば同じ結果が得られるのですか。
東條:役者がいるスタジオとディレクターがいるスタジオを繋ぎ、役者はマイク前で演じることになります。役者側のスタジオで声を録音するミキサーさんが後から声のデータを送る、というシステムとなります。
――従来のように、スタジオに集まって収録しなくていいと。
東條:集まる必要性がない作品は、そうですね。インターネットのおかげで、いまはすごくグローバルに仕事ができます。これからアニメもどんどんグローバルになって、日本の声優さんは海外で活躍できると思います。
――反対に東條さんのように、海外に暮らしても仕事を続けられそうです。
東條:できると思いますよ。さすがに少しは仕事が減るかもしれませんが。