音楽
斉藤朱夏1stアルバム『パッチワーク』インタビュー【前編】

「出会ってくれてありがとう 勇気をくれてありがとう」 みんなへの感謝と愛、メッセージを丁寧に紡いだ、世界にひとつの『パッチワーク』をプレゼント 超ロングインタビューで新曲を紐解く──斉藤朱夏1stアルバムインタビュー【前編】

デビューから約2年、“今”を全力で駆け抜けてきた斉藤朱夏さんが、8月16日(水)に1stアルバム『パッチワーク』をリリースした。

今作には、メジャーデビューミニアルバム『くつひも』、1stシングル「36℃/パパパ」の「パパパ」、2ndシングル「セカイノハテ」の表題曲、さらに初作詞曲含む新曲をまるっとパッケージ。アルバムの幕開けが「もう無理、でも走る」であることからも分かる通り、“みんなへの愛”だけでなく、ひたむきに前を見て進んできた彼女の生きざまも感じる作品となっている。

いつものインタビューより時間を多くもらい、アルバムについてはもちろん、ライブのことや、今の気持ちについてたっぷり語ってもらった。

「あの日のエネルギーはぜんぶ東京ガーデンシアターに置いていった」

──今回はアルバムのお話をたっぷりうかがえればと思っています。その前に、6月3日(木)の “斉藤朱夏レコ発ワンマンライブ「セカイノハテ」”(東京ガーデンシアター)のお話も聞きたいなと。朱夏さんの思いが伝わってくる、全身全霊のパフォーマンスでしたね。

斉藤朱夏さん(以下、斉藤):改めて自分はステージに立つ人間なんだなと感じた、と言いますか。あのライブでよりライブが好きになりました。一個何かが見えた感じがして。今まではステージに立つのは“好きだけど嫌い”という矛盾があったんです。

──実際、前回のインタビューでも「ライブっていちばん好きだけどいちばん嫌いな場所だから」とおっしゃってましたね。すごく緊張するからと。

斉藤:緊張は変わらなかったんです。こういうご時世だから、どれくらいの人がきてくれるのかも分からずでしたし、どんな光景が待ってるのかドキドキしてました。でもあんなにたくさんの方がいろいろなことに気を付けながら足を運んでくれて。もうそれにすごく感動してしまいました。

こういう状況だからこそやるライブの意味ってなんだろう、これからライブをやる上で何を伝えていくべきなんだろうって、たくさん考えさせられたライブになりましたね。「もっとああしたかったな」っていう気持ちもあるんですけど、あの日のエネルギーはぜんぶ東京ガーデンシアターに置いてきました! MCも“いま出てくる言葉”を全部言ったので、リハと言ってることが全然違うという(笑)。

──そうだったんですね(笑)。

斉藤:いつもそうなんですよね(笑)。肌で感じたものを返していきたいという気持ちが強いので、「私はこう思ってる」「これからみんなとこうしていきたい」って一つひとつ言葉を紡いでMCをしていきました。楽曲、MCで、いまの斉藤朱夏というものをあの時、あの瞬間に見せられたのかなと思います。

──ステージ中央からシルエットでの登場、すっごく緊張するだろうなって。

斉藤:ヤバいですよ、本当に(笑)。バンドメンバーが全員先にステージに立ってるから、まわりに誰もいなくなるんですよ。スタッフもいなくて(笑)。ひとりでいる時間が長かったので、すっごい緊張していました。

──ご時世柄、ファンの方も声が出せないから会場自体が静かですし。

斉藤:そうなんです! だからより緊張感が高まってて(笑)。(最初の)「くつひも」はいちばん緊張しました。「もうヤバイヤバイ」って(笑)。あとからみんなの顔やクラップが見られたから緊張がほぐれてきましたけど。

──「セカイノハテ」では熱いMCのあと、ものすごく高いキックを見せてくれましたね。

斉藤:ああいうパフォーマンスをする予定ではなかったんです(笑)。右に行く、左に行く、くらいは照明との兼ね合いも決めてはいるんですけど、その時に動きたいように動いている感じで、みんなからもらったものを身体と歌で返す感じなんです。あの時はキックしたくなってしまったんでしょうね(笑)。私も後から映像を見て「めっちゃキックしてる!」って。力強く、何かを壊そうとしてるんだろうな、この人って(笑)。

それだけもらったエネルギーが大きかったということなので、みんなに感謝です。声が聞こえなくても、どこからか声が聞こえてくるというのが不思議で、鳥肌が立つような感じでした。

──だからこそ、MCでの朱夏さんの言葉も今まで以上にストレートでしたね。

斉藤:言葉がまっすぐすぎるなって(笑)。それが良いのか悪いのかは正直分からなくて。だけどそれが私だから。あとはみんながどう受け止めてくれるかだなって。今までだったら、もう少し考えてストレートすぎる言葉って言わなかったんですけど、6月3日は考える余裕がなかったと言いますか。それほど自分がエモーショナルに高ぶっていたんだと思います。

▼斉藤朱夏 レコ発ワンマンライブ“セカイノハテ”レポート

斉藤朱夏 レコ発ワンマンライブ“セカイノハテ”レポート

──ワンマン後に開催された「EJ My Girl Festival 2021」にもお邪魔させてもらったんですけど、ワンマンとはまた違った、ギュッと凝縮されたライブでしたね。

斉藤:初めての有観客のライブイベントという事で、はじめましての方の心をどうやったら掴めるんだろうって。今できる自分の全てを発揮できえればいいなと思って暴れまくって帰りました(笑)。自分の色を残していきたいなって。

▼「EJ My Girl Fes 2021」-DAY 1- レポート

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──あの6月下旬の時点では、アルバム制作はどれくらい進んでいた状態だったんです?

斉藤:ちょっと待ってくださいね! スマホに入ってる予定を見るんで(笑)。……(スマホを見ながら)その週はMVを2本撮ってました! 次の週くらいから……あれ? えっ!?

──何が起きたんです?(笑)

斉藤:ここの週すごい! 「あめあめ ふらるら」のレコーディングして、「またあした」のプリプロとレックして「声をきかせて」のプリプロしてる……(笑)。

──「声をきかせて」はワンマンライブ後に作られた曲だったんですよね。

斉藤:そうなんです! 6月の最後の日に「声をきかせて」ができあがって。だからあの日のMCの内容もたくさん入っています。

──それにしても怒涛ですね(笑)。

斉藤:本当に怒涛でしたね(笑)。今自分でスケジュール見て驚きました。なかなか過酷なスケジュールでしたけど、その時はまったく気づいてなくて。あのワンマンで、歌がより好きになったし、音楽がもっと好きになったんだと思います。歌えることが幸せだからもっとプリプロとレックさせてくれ!っていうくらいの勢いで。もう楽しくてしょうがなくて「早く次のライブこないかな!」って。それくらい、6月3日は自分の中で大きな変化がありました。加えてアルバムの制作をしていたので、音楽と触れ合っていた期間が長くて。だからこそ、もっともっと音楽に対する意識が深まったのかなと。

──ライブを経てライブがより好きになって、アルバム制作を経て歌がより好きになって。

斉藤:アルバムを作るタイミングで「すごいものができると思います!」っていうなんかよく分からない自信があったんです。そうしたら最高なモノができました。制作期間ってどうしても落ち込むことがあったり、メンタルやばいかもって思う瞬間があったりするんですけど、今回はもう永遠と楽しくて。今までにない形での制作でしたね。

──とにかくずっと楽しいだったんですね。じゃあ、ポジティブになるために気を付けられてたってわけでもなく?

斉藤:とにかく楽しかったです。その中でもメンタルがワッ!と爆発するような瞬間もあったんですけど……ライブ以外にも自分自身が変わるキッカケがあったんですよね。年末年始のタイミングくらいにアルバム制作にあたって朱夏チームと話をしていたときに……話す中で、階段をひとつ登る感覚があって。それって自分にしか分からないんですけど、「今登れるから、今行かないとヤバいな」って瞬間があるんです。そこからずっと“楽しい”が続いています。ちょっと不思議なお話なんですけどね。

──そういうタイミングが定期的にあるんですか?

斉藤:自分の中で半年、1年くらいで巡ってくるんです。早くて3ヵ月くらい。でもそれがいつくるかは分からなくて、「あ、いまだ! いけー!」っていう合図があって。そこから走り続けてきた感じです。

ネガティブなこともあるにはあるんですけど、基本的にはポジティブにいられたなって。だから作ってても楽しかったです。私の頭の中ではずっとアルバムができあがっていたんですよね。パッケージも含めて。だから「それを言葉にして教えてください」ってよく言われていました(笑)。でも私自身は何かを言葉で伝えるのがとても苦手なタイプなので、1回の打ち合わせに3、4時間かかってしまうんですよ。それをチームのみんながすくい上げてくれて、受け止めてくれて、やっとアルバムができました。

 

 

──楽しい制作だったけど、1曲目は「もう無理、でも走る」(笑)。

斉藤:そう(笑)。これは私が階段を上がる前のお話なんですが、「もう無理!」って思っていた時期があったんです。スタッフと話をすればするほど、自分の未熟さを感じて悔しくて。で「もう無理、でも走りたいんです」ってポロりとこぼした言葉が楽曲になってしまったっていう(笑)。

──プロデューサーのハヤシケイ(LIVE LAB.)さん曰く「朱夏さんがとある場で心身ボロボロになって“もう無理~~~”となりつつ“でもわたし走る”とベソかきながらつぶやいた姿を見たスタッフが、その言葉を歌にしてあげたいという気持ちからはじまった」とのことで。

斉藤:そうなんです。「いまのその言葉を音楽にしたい」と言ってくれて。正直そのときの私って「無理」って思ってる姿をあまり見せたくなくて、まだ強がっていたんです。

だからこそ「それを楽曲にしたい」と言われたときに「えっ、本当に!? そんな姿見せて良いの!?」って。でもアルバムを作っていくうちに「そんな自分を見せても良いんだな」って思いました。だからこそ、すんなり歌うことができて。「これが自分だしな」と。

──それで<もう無理だ 動けないよ でも 心はまだ躍るだろ>と。

斉藤:もうまさに自分だなと思いました。「もう無理」ってネガティブな言葉に聴こえるんですけど、「それでも走り続ける」という言葉でポジティブに変わる。ネガティブとポジティブがあって、人間だからこそ、その2つは絶対的に持っているんだろうなって。私ってポジティブに見られがちなところがあるんですけど、「斉藤朱夏、めちゃくちゃネガティブな部分があるぜ」という部分も出したかったからこそ、歌い方もどこか人間臭くて。これ、受け止める側も少し大変だと思うんですけど……未来のことを考えて歌っているので、そういう部分が伝わればいいなって。

──<あとどれだけ息は持つだろう いっそ分からないまま行こう>って言葉もすごく泥くさいからこそ響くものがあります。「EJ My Girl Festival 2021」でサンボマスターさんの「できっこないを やらなくちゃ」をカヴァーされてましたけど、サンボさんの曲に近いような人間臭さがあるなって。

斉藤:私自身がサンボマスターさんの楽曲に背中を押されてきたからこそ、人間臭さ、泥臭さを歌を通して歌っていきたいなと。この曲に限らず、他の新曲もそうで「人間臭いアルバムにしたいんですよね」っていう話をよくしてました。どれだけ深く、自分の心を切り取れるかだなと思っていたので、今までよりも、深くふかく、掘り下げていきました。

──“人間臭い”ところ以外にも他にもテーマのようなものはあったのでしょうか。

斉藤:最初は白い光が見えてて……。

──白い光、ですか?

斉藤:あ、先に言っておくと私の頭の中って本当に変なんですよ(笑)。自分でインタビュー記事を見返すと「変だな」と思うことありますもん。

──そんなことないですよ(笑)。むしろすごく知りたい。白い光が見えたんです? ライブシーンとかではなく?

斉藤:本当に白い光と白い道。スピリチュアルな話に聞こえるかもしれないんですけど、本当にそのイメージが見えていて。そこからみんなと話していくうちに今回のアルバムが出来上がったんです。その白い道がこのアルバムに通じてるなと思うのは、“走る”“まっすぐに”って言葉が多いところで、それがずっと肝にあったのかなって。自分の中で白い光、白い道を走り続けたいという思いがあったんだと思います。

こういうのって寝る前とかにパッと思い浮かぶんです。「あっ、そうだこうしよう!」ってひらめいて、とりあえずメモして、それを伝えてることが多くて。そういう意味では、今回のアルバムって直感で動いてるところもあるなって。私自身が直感型なので、「これ!」って思ったらそれだけを見て、すぐに動いて、身体で覚えていく、すごく動物的な生き方をしているというか(笑)。

──それは分かる気がします。

斉藤:(笑)。だからこのアルバムも「これ!」って思ったものを伝えていくという感じでした。それが不思議とツギハギのようにつながっていって、最終的にパッチワークができて。なんだかんだ全部がつながっていたんだなと思います。

──寝る直前に思い浮かぶと言ってましたけど、それまでもひたすらアルバムのことは考えてらっしゃるんですよね。だからこそ、心の声が聴けるというか。

斉藤:たぶん考えてない時間はなかったと思います。このアルバムを通してなにが言いたいのか、タイトルはどうしようか……ずっと答えを考えていました。基本的に自問自答タイプなんですよ。ライブのときも「自分できるできる」「今まで精いっぱいやってきだから大丈夫、行こう!」って言い聞かながらステージに上がっているんです。この曲はそんな自分も表れている曲だなと思います。

──直感でどんどん動いていくという。

斉藤:自分で自分のことを見ていて「たまには休めばいいのにな」と思いますもん。

──でも休まないですよね(笑)。去年の自粛期間くらいじゃないですか?

斉藤:そうです(笑)。少し休んだけど、お休みが肌に合わないんですよね。「こんなに休んで大丈夫? なんでもします! デスクワークでもします!」って勢いでした。でもあの時期があったからこそ、今できることも増えたので、無駄ではなかったのかなとは思っています。無理やりにでも休んだことで「頑張れないときは頑張らなくていいんだな」って気づけたので……。

──そのメッセージはまさにこのアルバムにも入ってますね。

斉藤:頑張れないなら頑張らなくて良いと思うんです。MCでも言ったんですけど、無理だと思ったときは無理だから、やらなくて良いんじゃないかなって。焦ることがいちばん危険なことだと思うので、焦らずゆっくりと今できることを少しずつやればいいんだろうなって。

──朱夏さんがそれを言う日がくるとは。

斉藤:自分でもまだ、なかなかできないんですけどね(笑)。

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