『スター・ウォーズ：ビジョンズ』「The Duel」レビュー｜ジャパニーズサムライがSWの世界にいた！ 番傘型ライトセーバーを振るうシスに挑むローニンがカッコ良すぎる！【全作レビュー連載第1回】

ジョージ・ルーカスが公言する日本文化からの強い影響──そして、創造のルーツである日本へ『スター・ウォーズ』が還ってくる！

日本を代表する7つのアニメスタジオが独自の“ビジョン”で9つの新しい物語を描くビッグプロジェクト『スター・ウォーズ:ビジョンズ』がディズニー公式動画配信サービス Disney+ (ディズニープラス)で独占配信中です。

アニメイトタイムズでは、特別タイアップ企画として、9作品になぞらえて、9人の編集者とライターが1作品を担当し、作品の魅力に迫るスペシャルレビュー連載をお届けします。

連載1回となる本記事では、『スター・ウォーズ』の世界観で侍剣戟アクションという異色かつ大胆なチャレンジを成し遂げた『The Duel』をレビューします。

前述したとおり『スター・ウォーズ』は日本からの影響を多大に受けていますが、戻ってきた先の日本がカルピスの原液のような濃度の日本らしさを提示したのが、この『The Duel』と言えるでしょう。

アニメファンによりわかりやすくご紹介するとしたら、『ニンジャバットマン』『アフロサムライ』『SAMURAI 7』『サムライチャンプルー』『ニンジャスレイヤー』のような作品群に近い、という感じでしょうか。このあたりの作品にビビッと来たら本記事を読むといいでしょう。間違いなく、あなたが求める侍アクション作品がここにあります！

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The Duel

あらすじ

旅を続ける浪人の男とドロイド。

その日、2人が立ち寄った村は長い間、日々、野盗集団による過酷な暴力の犠牲となっていた。

だが、村人達は意を決し少しずつ集めた金で雇った用心棒達と行動を起こす野盗集団と用心棒たちの戦い。当初は優勢にみえた用心棒達だったが、現れた野盗の女ボスによって形勢は逆転する...番傘型の赤いセーバーを携えた彼女はシスだったのだ。一部始終を見ていた浪人は真っ直ぐシスの元へと向かっていく。

神風動画

テレビアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズのオープニング映像や、企画・制作を手がけたテレビアニメ『ポプテピピック』が大きな話題を呼び、映画『ニンジャバットマン』が世界的にも高く評価されたアニメーションスタジオ。代表の水﨑淳平氏が1998年に個人事業主として活動を開始し、2002年に有限会社神風動画を設立した。3DCGだけに囚われることなく、技法を融合させた独自のアニメーション表現を追求し、躍動感のある演出や、独自のストーリー性や世界観が特徴。

アニメイトタイムズ的注目ポイント！

時代劇度：★★★★★
ルーカスへのラブレター度：★★★★★
これが見たかった度：★★★★☆

時代劇と『スター・ウォーズ』が交わる不思議な体験

まず本作を語る上で外せないのが、その日本っぽさでしょう。主人公の浪人が立ち寄った村は日本の戦国時代によくあるような農村で、村人が着ている衣服や暮らしぶりもまさに日本の時代劇そのもの。

しかし、家屋の屋根に注目すると謎の機械が設置されていたり、村人が謎の機械を触っていたりと、SF大作の『スター・ウォーズ』ならではのテイストが散りばめられているのです。

このチグハグ感が逆にマッチしており、欧米人が日本SF侍アクションをイメージして作った作品を逆輸入して、日本的な解釈をふんだんに盛り込んでブーストをかけたような世界観が構築されています。

しかも、神風動画ということもあり3DCGで製作されているのですが、画のタッチがまるで墨絵のようなモノクロで、若干のノイズがかかったような映像はまさに往年の侍活劇映画を彷彿させられます。

ここでお察しの良い方は気づいたかもしれません。浪人、農村、野盗、モノクロ、剣戟……どこかで見たことはありませんか？　そう、日本が誇る映画監督・黒澤明さんの『用心棒』や『七人の侍』です。本作を手掛けた水野監督は、主人公の浪人のイメージを『用心棒』の三船敏郎さん（浪人の桑畑三十郎役）と語っており、その影響を受けていることが伺えます。

冒頭でも例に挙げさせていただいた『アフロサムライ』『SAMURAI 7』は黒澤監督の影響をもろに受けている作品ですし、もちろん『スター・ウォーズ』の生みの親であるジョージ・ルーカスも黒澤監督の大ファン。そして、『スター・ウォーズ』自身も、黒澤映画からたくさんの影響を受けていると言われてます。

黒澤映画のリスペクトがジョージ・ルーカスによって『スター・ウォーズ』の中に影響を与え、そして黒澤監督＆日本映画へのリスペクトと『スター・ウォーズ』へのリスペクトと、アニメで混ざり合い開花したのが、つまるところ『The Duel』と言っても過言ではないのです。