LiSA テレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編オープニング&エンディングテーマ「明け星 / 白銀」インタビュー|LiSAさんが語る梶浦由記さんの楽曲へのこだわり、そして自身が歌唱に込めた想いとは?
MVのロケは「炎」のジャケット撮影と同所で。恐ろしい敵の襲撃に備えも?
――MVはどんなテーマや場所で撮影されたのでしょうか?
LiSA:「無限列車編」と一緒に楽しんでほしいなと思って、作品の世界観を感じられるMVになっています。「炎」のジャケット撮影をした廃線の線路で、ちょうちんや炎も使ったり、トンネルで撮影したり、作品に寄り添った映像になったかなと。劇場版の「無限列車編」をご覧になってくださった方には、例えば列車を降りた後に煉獄さんが戦っているシーンにも見えたり、列車が走っているように感じてもらえたり、重ねて楽しんでもらえるかなと思います。
――約1年ぶりの同じ場所での撮影はいかがでしたか?
LiSA:久々に来たので懐かしかったんですけど、季節は少し秋めいていて肌寒さも感じるような。ただヤマビル対策がみんな大変でした。血を吸われないように気を付けてと言われたけど、私の衣装の露出度が高くて。全身にミントを塗ってヤマビル対策をしたのですが、雨も降っていたのでスースーして、私だけ季節感が違うような感じでした。
――ヒルには吸われないで済みましたか?
LiSA:何とか大丈夫でした。でもスタッフさんが吸われてしまいましたけど(笑)。
エンディングテーマ「白銀」は、LiSAさんらしいヤンチャさも。曲頭のコーラスやタイトルに梶浦さんのこだわりも
――同じく梶浦さん作のエンディングテーマ「白銀」はエレキのリフが心地よくテンポを刻むアッパーチューンで、サビもエモいですね。
LiSA:最初に聴いた時から、キャッチーで聴きやすくて、皆さんが歌いやすく、入りやすい楽曲だなと思いました。1Bの「まだ足りないこんなもんじゃない」はフレーズと一緒に感情がのっているのがすごく好きで。やんちゃな感じで、私のためにこの歌詞を入れてくれたんじゃないかと思ったくらい、寄り添ってくださった楽曲だなと思いました。
――曲頭や2A前の雄たけびのような「オーオーオー」もインパクトがありました。
LiSA:その部分だけは私の声だけではなくて。梶浦さんがコーラスの声も入れたいとおっしゃって、別の方の声も入っています。私の解釈ですが、ED映像でも鬼殺隊など様々な人たちが登場するように、『鬼滅の刃』は炭治郎一人で戦っているわけではなく、いろいろな人たちと一緒に戦っていくわけで、それを表現しているんじゃないかなと。
――なるほど。「絆一つに背中を預け」からもそう感じますね。タイトルは「銀」の意味、そして「雪景色」を表す言葉で、作中の風景ともリンクしている気がして。
LiSA:梶浦さんはタイトルにすごくこだわられていて、「銀」だけでも「しろがね」と読めるけど、「白銀」と表現したいと。
――「白銀の刃に変わる」という歌詞がありますが、「明け星」にも「白い道を行く」とあって、ある意味、白はテーマやコンセプトカラーみたいなものになっているのかなと?
LiSA:私も『鬼滅の刃』で「白」と聞くと、炭治郎が雪の道をずっと歩き続いていく様子が浮かんできますから。
――そして対照的な「業火の淵へ、まっすぐに」は煉獄のイメージのようであり、その前の「置いてきた物語ともう失くせないものがある」は、鬼に襲われて失ってしまった家族への想いも感じられたり、「無限列車編」のいろいろなシーンや想いが散りばめられていて。
LiSA:そうですね。個人的にはDメロも好きなんです。前半戦の「ギリギリに研ぎ澄ませ 銀色に尖るまで」などすごく突き進んでいく感じなのに、後半戦は「弱かったんだ あの時」からフレーズも美しく流れているし、弦楽器も印象的で。弱さもきちんと吐露しながらも「進んでいくんだ」という強い気持ちが表れているので。
いつかライブで皆さんに歌ってもらえたら
――この曲はロックっぽい曲なので、レコーディングでも歌いやすかったんじゃないですか?
LiSA:「明け星」よりも、わかりやすく表現してくださっていて、きっと梶浦さんも私がどんなフレーズが好きなのかわかってくださっていたんじゃないかなと。私も炭治郎を想いながら歌っていましたが、2番の「欲しがって欲張って 未来の胸ぐら掴んで捩じ伏せろよ」は「LiSAさんだから書いたの」と梶浦さんがおっしゃっていました。「私は胸ぐら掴まないけど、LiSAさんなら掴むはず」と(笑)。
――そういえば「オーオーオー」もライブで、みんなで歌えるようなフレーズですし、ライブチューンとも言えますよね。
LiSA:「Rising Hope」(5thシングル)の「僕は要らない まだ見たい未来があるから」で手を広げるとみんなが歌ってくれるように、この曲でも歌ってくれないかなと思うし、みんなが歌ってくれたらきっと楽しいんだろうなと想像しています。
――ジャケット写真のコンセプトやどんな撮影だったのか、ご紹介お願いします。
LiSA:ゴシックっぽい感じで、赤と青そして和洋折衷なイメージで、作品の世界観も表しています。アニメ『鬼滅の刃』自体が赤のイメージがあるし、更に「無限列車編」の物語、赤やオレンジなど熱のあるイメージと闇と夜のイメージを表現できたらいいなと思いました。
――LiSAさんの表情もせつなさや艶っぽさがありますね。
LiSA:「明け星」の「太陽を朱く閉じ込めて」に完全に引っ張られています(笑)。
――廃墟っぽい雰囲気もありますが撮影場所はスタジオなんですか?
LiSA:倉庫っぽいスタジオで撮影しました。照明の雰囲気など、汽車のライトに照らされている夜のような感じだなと思いながら撮影していました。
20枚もシングルを出せて幸せなアーティスト人生。印象深かったシングルを挙げるとすれば?
――今年ソロアーティスト活動10周年を迎えたのに続き、シングルも今作で記念すべき20枚目になりましたね。
LiSA:私自身は「まだそれだけしかリリースしてなかったんだ」という気持ちです。アルバムやミニアルバムも多いし、シングルもタイプ違いでカップリング曲を変えて収録していたので、曲自体が多いので。
――そうなんですね! ソロデビューした時にシングルを20枚も出せると思っていましたか?
LiSA:まさか。それどころか10年続けられるとも思っていなかったですから。ソロ活動を始めた頃は、CDが店頭に並んだり、CDショップの試聴機に入るのが特別なことだったので、憧れていたデビューからシングルを20枚もリリースできたことはありがたい歌手人生だなと思っています。「もう10年経ったんだ」とか「もう20枚目なんだ」という部分では早かったように感じますが、1つひとつのことが濃厚でした。
――20枚のシングルの中で印象深い曲や、制作した時に苦戦したことなど想い出深く残っていることはありますか?
LiSA:印象深いのはやっぱり1stシングルの「oath sign」ですね。デビューミニアルバム『Letters to U』の後で、初めてのシングルであり、自分名義での初のタイアップだったので、重いものに押しつぶされそうになりました。レコーディングの時、緊張感や表現したいことが表現できない悔しさに直面して。途中で中断するくらい、めちゃめちゃ泣いた記憶があります。
オープニングテーマを歌わせていただくことになって『Fate/Zero』は、ソロデビュー前に活動していた『Angel Beats!』内のバンド「Girls Dead Monster」のイメージとはまったく違うし、「自分が納得できる表現を入れなくては」という責任も大きくて。
――でもLiSAさんの音楽性を皆さんが認識するきっかけや指標になった曲になったと思います。
LiSA:他にも「シルシ」(7thシングル)は印象深いですね。初めてのバラード曲のシングルで、当時はバラード曲が少ないので有名でした(笑)。
「シルシ」はTVアニメ『ソードアート・オンラインⅡ』 《マザーズ・ロザリオ》編のエンディングテーマで、キャラクターの心情に寄り添う曲でした。シングルとしてリリースすることになった時、ちゃんと歌を届けることに意識が向くようになった気がします。
「Girls Dead Monster」の「一番の宝物」以来、“LiSAのバラード曲“と呼べるものもありませんでしたし、それを超えるものを自分が作れるんだろうかと。自分がグッときて、「どうしてもこの曲を歌いたいんだ」という曲じゃなければ意味がないとも思っていて。長年試行錯誤してきた中での「シルシ」だったので、すごく思い入れがあります。
――バラード曲が歌えるようになると音楽性やライブのセットリストの幅は広がりますよね。
LiSA:それは大きかったですね。バラードに苦手意識もあって、「私は歌のうまさで勝負していない! 私はライブ力で勝負してるのよ」と自分に言い聞かせていたので(笑)。イベントやアニソンフェスなどに出演すると他の出演者の皆さんもちろん歌が上手なので、「自分が勝てることって何だろう?」と探した時、「ライブ力だな」と。歌をうまく聴かせるという意味でのコンプレックスがすごくあったんですよね。だから「シルシ」を歌えた時に「自分にしか歌えないバラードがある」とコンプレックスも解消できた気がします。