『新サクラ大戦 the Stage』の第2弾が12月17日より上演! アニソン界のレジェンド&『サクラ大戦』シリーズの全音楽担当の田中公平さんが感じたキャスト陣の覚悟とスゴさとは?
声優の声質や音程合わせて作られた楽曲を、舞台版のキャストが歌いこなすスゴさ
――この『サクラ大戦』シリーズの音楽は現在に至るまで先生が担当されていますが、『新サクラ大戦』の楽曲制作の際に意識されたことはありますか?
田中:まずゲームのために楽曲を制作していて、それぞれのキャラクターを演じる声優さんの声質や音程などを意識して曲を作っているので、舞台のキャストの人たちは大変だと思います。声優さんに合わせた曲を歌わなければいけませんから。
アナスタシア役の(平湯)樹里さんは宝塚歌劇団出身ですが「宝塚でもこんなに高い音を出したことがないです」と言われました。それでも「頑張れ」と言ったら「出るようになりました」と(笑)。
『新サクラ大戦』の次のゲームが出るのがいつになるのかはわからないけど、その間を舞台がつないでいくことで、舞台用の曲を作っていくし、その曲たちは彼女たちの声質や音程に合わせるので、もっとシンクロ率は高くなると思います。
――あと『サクラ大戦』といえば代名詞的な曲「檄!帝国華撃団」がありましたが、『新サクラ大戦』でも「檄!帝国華撃団〈新章〉」があります……。
田中:聴いた時、どう思いましたか?
――イントロを聴いた瞬間に「あっ、『ゲキテイ』だ!」と思いましたが、Aメロに入ると変わっていて。サビではまた「ゲキテイ」っぽく入りつつ、その後はコーラスなど変わっていて。懐かしさと新鮮さを持ち合わせながら、キャッチーさはそのままですごい曲だなと。
田中:よかったです。作るのに苦労したので。
――関根さんは「新ゲキテイ」の難しさと歌うことへのプレッシャーを感じていたとおっしゃっていました。
田中:さくら役はサビの「走れ!」の音が出る人じゃなければいけないと思っていましたが、関根さんは出たんですよね。ゲームやアニメでさくら役を演じた佐倉綾音さんも出て、表でF♯まで出るんです。MISIAさん並みですよ。関根さんにも試しにやってもらったらできたので、「できる人はあまりいないからやってもらおう」と。それが関根さんを選んだ理由の1つです。
――そんな難しい曲なのに、殺陣をしながら歌うのも大変だとも。
田中:それは私が悪いのではなく、演出・脚本の伊藤(マサミ)君が悪いんです(笑)。「最初に殺陣をしながら『新ゲキテイ』を歌いたいんです」と言ってきて。「それは無理だよ。ハードルが高すぎるよ」と返したら「いや、頑張ってもらいます」と。もう曲芸みたいなものですよ。実際、花組メンバーはよくやっていたと思います。
――各公演回のたび、幕が上がる直前はすごく緊張したそうです。
田中:毎回、体調の微妙な変化もありますからね。上の音がキラキラとよく出る時とうまく出ない時もあるし、回数を重ねるごとにのどを酷使するので、だんだんとのどがガラガラになっていくものですから。ケアも含めて、みんなしっかり取り組んでくれたと思います。
深まっていくキャストとキャラクターとのシンクロ率。危険が伴う殺陣も練習量と覚悟でカバー
――先生が感じた『サクラ大戦』シリーズの舞台との相違点をお聞かせください。
田中:まず大きな違いは声優さんがやっているか、舞台俳優さんがやっているか、ですね。声優さんがやる場合はきっちりシンクロしているので借り物感もないけど、舞台俳優さんがやると借り物感が出てしまいがちで、「俳優さんがやっているキャラだよね」と感じさせてしまうんですよね。
私はそれが嫌で、どうにかしてシンクロしてほしいという気持ちがあったので、『新サクラ大戦』のキャストのみんなにはゲームをプレイしてもらったり、歌い方を教えたら、稽古や舞台を重ねるにしたがって、しゃべり方や歌い方だけでなく、性格まで同化していって。
寒竹(優衣)さんなんて、あざみそのままで、普段から冗談で「ごじゃる」とか言ってるし(笑)。舞台も2回目になって、だいぶシンクロも進んでいるので、そこはぜひ見てほしいですね。
声優さんで舞台をやってほしいという声もいただきますが、キャスト全員のスケジュールを合わせるのだけでも難しいし、稽古をする時間も必要なのでまとまった時間をいただくことも不可能です。1回切り、1日限りなら可能性はあるかもしれないけど、一過性のものにはしたくないですから。
――あと『新サクラ大戦』は殺陣も激しいし、危険も伴いますからね。
田中:そう。更に今回は上海華撃団と倫敦華撃団が加わって、より激しくなるので。
――『新サクラ大戦』のキャスト陣に舞台俳優や経験者がそろっていることも納得です。
田中:でも彼女たちも最初から殺陣ができたわけではなくて、関根さんはこの舞台まで殺陣をやったことがなくて。それがあそこまでできるようになったのはずっと練習していたからで、休憩中も時間を惜しんでやり続けていて。まるで命を賭けているように見えたし、応援したくなりますよね。
――稽古場は平坦で、実際のセットで演じるのも劇場入りした時が初めてだったそうで。
田中:稽古場にも建て込みはあったけど、実際の寸尺はとれませんから。だから稽古場と違うことで起こるケガやアクシデントが怖いので、よく注意するように言っています。階段を降りながら殺陣と歌を同時にする時は正面を見ながらなので、階段が見えないんです。よくあんなことできるなと思います。
――『新サクラ大戦』の初めての公演にしてはかなり求められるレベルが高いですね。
田中:それも伊藤君のせいだから(笑)。でも彼女たちならできるという確信と信頼があるからだと思います。すごい稽古もしているし、彼が主宰する劇団「進戯団 夢命クラシックス」の舞台も見に行きますが、すごいんですよね。そのレベルをこの舞台にも求めていることがよくわかります。