音楽
伊藤美来 9thシングル「パスタ」インタビュー

私はパスタになりたかったーー初の作曲に挑戦した伊藤美来さんの9thシングル「パスタ」インタビュー│カップリング曲はロマンチックに見せかけて……?

ゼロから始まる作曲に「メロディーは降ってこんて!」

――ちょうど作曲のお話が出たので、9thシングル「パスタ」は伊藤さんの作詞・作曲になります。どのような経緯で作曲をすることになったのですか?

伊藤:「5周年の記念シングルを出します」という話をいただき、どんな曲にするのかを打ち合わせているときに、「何か記念となる新しいことをファンの方にお届けしたいですね」というところから、作詞はこれまでやったことがあったので作曲はどうかと言われたんです。最初は無理じゃないかなぁと思ったんですけど、やることになっていました(笑)。

――最初は抵抗したんですね。

伊藤:はい。でも「きっと良いものが作れますよ!」「協力しますよ!」って優しく背中を押してくれたので、やることにしました(笑)。

――初めての経験だと思うのですが、どこから手を付けていったのですか?

伊藤:私は楽器もできないので、作曲と言われてもどうすればいいんだろうとなったんです。最初はメロディーが降ってきたら送ってほしいとライトな感じに言っていただきましたが、「メロディーは降ってこんて!」と(笑)。

そこから改めて相談をして、好きなメロディーとか、キーボードを触って好きな音階があればそこから広げるのもいいよってアドバイスをいただいたりはしたんですけど……。

――とは言っても、なかなか浮かびはしないですよね。

伊藤:曲は全然浮かばなくて、「やばい! 締め切りが来る」という感じだったので、「そうだ! 私は作詞はしたことがある!」と思って作詞から始めました。「歌詞はできたので、作曲はちょっと待ってください」っていう(笑)。

――先延ばししたんですね。でも詞先で曲を作るのも難しそうですけど……。

伊藤:私の感覚だと、メロディーから作るほうが難しいと思いました。できるところからというところで「パスタ」の歌詞が決まって、曲の雰囲気もイメージできるようになりました。

――歌いながらメロディーが浮かんでくる感じだったのですか?

伊藤:そうですね。最初にサビが浮かんで、そこからAメロBメロと作り、アレンジパターンをいくつかいただいたので、そこでこういう感じで行きましょう!と話し合いながら決めていきました。

――さらっと話してくれましたけど、実際浮かばない時間や悩んでいる時間は長かったでしょうね。

伊藤:寝れない日々が3週間くらい続きました(笑)。やばい、今日も降ってこなかった!っていう繰り返しだったんですけど、最初にメロディーが出てきてディレクターさんに聴いてもらったら、「良かったです。これで行きましょう!」といきなり採用されたので、そこからトントントンと行けました。

最初に、曲の構成とか決まりごとは取っ払っていいからと言われていたんですけど、「Aメロがサビみたいだね」と言われたので、音楽好きな人が聴いたら少しトリッキーな曲になっているかも知れません。

――歌詞については、どんなことをテーマに書いていったのでしょう。

伊藤:5周年記念の曲なので好きに作っていいとは言われていましたが、メッセージ性のあるものや自分の気持ちを吐露するような歌詞は書いてきているんですよね。

それだと代わり映えしないなとなったときに「物語を作るというか、擬人化して書いたらこれまでと違う感じになるんじゃない?」と打ち合わせで言っていただいたことで方向性が決まり、私はパスタになりたかったので「パスタ」になりました。

――今、いろいろと話が飛躍した気がするのですが(笑)。

伊藤:その間にいろいろあったんですけど、簡略化するとパスタが大好きだから、パスタになりたかったんですよね(笑)。そこからパスタの良いところを考えていき、簡単に作れるけど、めちゃめちゃ美味しくてお腹に溜まって満足感が得られるところだなぁと思ったので、そこを膨らませて書いていきました。

――この歌詞を見て、まさかパスタの擬人化の曲だったとは思わないと思うのですが、MVの公開タイミングで歌詞を聴いたときのファンの皆さんの反応はどうだったのですか?

伊藤:私がどこかで「パスタになるような曲です」と言っていたのかもしれないです。それもあって、みんな理解してくれていました。ただただ、パスタが好きなんだということは伝わった、みたいなコメントをもらったので(笑)。
 

――これまでの曲にはいろいろな主人公がいましたけど、今回どう歌ったのかも気になります。

伊藤:そうですよね。確かに歌うのは難しかったです。パスタに思いを馳せて気持ちは作ったつもりです。でも曲のコンセプト的に日常に溶け込む音楽にしたいと思ってアレンジも決めていったので、声も力強くというよりは日常に溶け込みやすく聴きやすい、聴きながせるようなスッと入ってくるような声で歌うようにしました。

――日常感はありますね。

伊藤:あの、今から変なことを言いますけど(笑)、パスタを擬人化したときに、あまりガツガツしているイメージにはならなくて、人になったときはすごくポジティブでふわっとしているんです。ただただ、だらけている感じなんだけど、いつもニコニコしているような人だなと思ったので、そういう歌い方になったと思います。

でもファンタジーな感じも少し入れたかったので、Aメロとかは音に溶け込むようなふわっとした歌い方というか、あまり芯を出さないような感じにしています。

――パスタくんのイメージがちゃんとあったんですね(笑)。でもMVも、そういうふわっとした雰囲気になっていましたね。すごくおしゃれでした。

伊藤:ずっと同じチームに作ってもらっているんですけど、監督との打ち合わせで、今話したようなことを伝えたら「わかりました」と言って、すごくきれいな部屋ではなく、生活感のある部屋を用意してくれたんです。そして「お腹空いたからパスタつーくろっ!みたいな日常の雰囲気で撮りましょう!」と言ってくれて。

――その割には大量のパスタを作っていましたけど(笑)。

伊藤:テーブルいっぱいに並べてみました(笑)。でも本当にいろんな場所で、いろんな格好でパスタを食べたなぁ。ただパスタを食べていたら、おしゃれなMVになっていました。

私が言ったことが、こんなにおしゃれになるとは思っていなくて、撮影チームは理解度が高くて、いつもイメージを映像化してくれるんです。「No.6」のときも、ダンスをやることだけ決まっていて、あとは「白黒のイメージです」と言うだけでセットを組んでくれたので、大久保拓郎監督は天才なんですよ。

――全部が完成したときはいかがでしたか?

伊藤:もう感動しました! これ、私が作ったんだ!って。ゼロからものを作る経験ってあまりなかったんです。作詞も曲があって、それにどういう歌詞を付けるか、何を伝えるかだったし、アフレコもシナリオがあって、どう表現するかなので、何もない状態から作って、それが曲になり、MVができてYouTubeで全世界に公開されているってすごく感動するし、不思議な気持ちです。

――ゼロからイチを生み出す面白さと大変さですね。

伊藤:本当に大変でした! やっぱりクリエイターさんってすごいんだなと思いました。機会があればまたやってみたいですけど、大変だったので、作曲は一旦休憩ですね(笑)。

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