声優・芝崎典子さん『てん、てん、てん』リリース記念インタビュー! 初めて作詞・作曲した「(機種依存文字)」など6曲入りミニアルバムの魅力は?──「いろいろな私を聴いていただいたり、発見していただけるミニアルバムになった気がします。」
「moment」のMVでは芝崎さんが空で回転?
――「moment」のMVでは、ジャケットと同じ着物姿の芝崎さんがビルの屋上で歌っていたり、同じ都市の背景が上下に見える中で、芝崎さんの写真がくるくる回ったりと、かなり不思議な映像ですね。
芝崎:撮影前に撮影イメージのコンテを送っていただいて、「芝崎さんが空を浮いてます」という説明を受けた時は「いったいどんなMVになるんだろう?」って(笑)。でも完成した映像を見たら、おしゃれな感じになっていたので感動しました。
――ビルの屋上で、鉄の骨組みのセットに白い布が多数かけられている中で歌っているシーンはファンタジックですね。
芝崎:私は高いところが苦手で、現場についたら「わっ!?」となるほど怖かったんですけれど、歌が流れてカメラが回り始めたらあまり気にならなくなりました。後ろの布が織りなす幻想的な光と相まって、歌詞とリンクして不思議な世界観になったかなと思います。
また現在の背景が上下している中で私の写真がくるくる回っているシーンがありますが、使用するポーズに合わせて寝転んで足を上げた時のポーズの指定があったくらいで、あとは私が感じたままに袖を動かして表現してみました。
そもそも和服を着る機会自体があまりなかったので、意外に袖が重いことに気づいたり。カメラを見ていない振りをしつつも、ちゃんと見ないと袖で顔が隠れちゃうし。
ああいった色っぽい目線も日常ではする機会はないので(笑)、どんなふうに見えるのか心配で、何度も細かくチェックして、スタッフさんに意見をうかがいながら撮影しました。難しさもありましたが、いい映像に仕上げていただけて嬉しいです。
――「MUGEN」はカッコいいダンスナンバーのラブソングですね。
芝崎:K-POP風の曲で、私はあまりK-POPを聴いたり、歌う機会がなかったので、曲をいただいた時は「私はどうしたらいいんですか?」状態でした(笑)。
「一番カッコつけた歌い方をするとちょうどいいかも」というアドバイスをいただいたので、目力が強くてカッコいい女性でセクシーな感じを意識して歌いました。途中で我に返らないように必死でしたが、特にラップの部分は恥ずかしかったです(笑)。
――でもクールに歌いこなしていたカッコよかったですよ。歌詞も歌い出しの「気紛れな夜を待って唇の向かう方へ」のアダルトな夜の雰囲気から、サビでは「体中震えてる 私を動かせるのは君だけ」など情熱的で。
芝崎:ありがとうございます。サビはテイクを重ねるごとにどんどん楽しんでいました。この楽しんでいる感じが伝わればいいですね。
――歌詞のボリュームもたっぷりで、ブックレット2ページに渡るという。
芝崎:そうですね。英語も多いんですけど、以前から英語が多い曲を歌ってみたいと思っていました。「I’m lo lo lo lo lo loving you」など英語の発音のところは特に気合を入れて歌っているので、「頑張ってるな」と思ってもらえたら(笑)。
――きれいで本格的な発音でしたよ。次はすべての歌詞が英語の曲ですね(笑)。
芝崎:できるかなあ? 次は6曲それぞれ違う外国語で、6カ国語のミニアルバムを作りましょうか?……やっぱり、やめます!(笑) でも英語は楽しかったです。
――曲を聴いているとヘッドマイクをつけて、本格的なダンスを踊りながら歌う芝崎さんの姿が浮かんできました。
芝崎:実際にパフォーマンスする時のことはあまり考えていなかったので、今言われて怖くなりました(笑)。私、そんなにダンスが得意というわけでもないし。ライブで披露する時が来たら、ダンサーの方も付けていただいて、代わりに頑張ってもらおうかな?(笑)
――「サクラサク」は、曲頭で「clap your hands みんなで楽しんだもん勝ち」と歌っているように、ホーンも入ったゴージャスで楽し気なパーティチューンで、ライブでも盛り上がりそうです。
芝崎:イントロでクラップのようなクリックが入っていたり、2番のサビ後でもクラップ合戦したり、随所に参加してもらえる要素が詰め込まれていますが、いつかライブでみんなに声を合わせたり、楽しめたらという願いを込めて。
最初のデモの段階では「ハイハイハイ!」とか「イエー!」などは入っていなかったんですけど、徐々に付け足していったり、大サビの最後で「サクラサク」と叫んでいるところは、「最後に何か欲しいです」とお願いしたら入れていただきました。
ライブでは皆さんに一緒にお願いするところが多いので、もしライブが決まった時は一度、練習講座をしようかなと思っています。
――サビの「サクラサクまで待てないね」と歌っている、待ちきれない気持ちもわかります。明るいスカビートがテンションを上げてくれて、曲の途中でレゲエのようになったり、サウンドからは真夏を感じるのもおもしろいです。
芝崎:確かに。発売は真冬なのに(笑)。本当に元気いっぱいなチアソングでもあって、背中を押すというよりも、私が引っ張り上げるくらいの気持ちで、楽しさの中に力強さも感じられるように歌いました。
「そのままでいいんだよ」と認める曲なので、元気な中にも優しさや愛情も感じていただけたらいいですね。そして「あと少しなら頑張れそうじゃない?」というフレーズもあるように、あともう一歩背中を押してほしい時に聴いていただきたいです。
――「ゆめゆめ峠」は一転して、琴や鈴の音色などはかなく美しい、和テイストのしっとりしたミディアムナンバーです。
芝崎:静かな和の曲で歌い上げるような曲だったのでレコーディング前は緊張しましたが、1つひとつの言葉をかみしめるように歌ってみたら、意外と歌いやすくて。過去を振り返った時、儚さやせつなさを感じながらもどこか自分の中では消化しきっている気持ちで歌いました。
――確かに。「在りし日は返らないね その思い出と共に生きてゆくだけ」や「花びらはこの志届け明るい夜明け」など、確かに前に進んでいこうという意志が感じられました。
芝崎:私もネガティブではなく、ネガポジティブな曲じゃないかなと思っています。聴いてくださる方によって、百人百通りに思い描く世界観やストーリーがあると思うので、ぜひ皆さんの感想や解釈をお聞きしてみたいです。
――サビのエモーショナルな歌い方や部分部分でのニュアンスを込めた歌い方など演歌とポップスの中間のような雰囲気も感じられました。
芝崎:デモ音源をいただいた時、「こぶしっぽいところもありますが、気にしないでください」というメッセージがあって。念のため、「こぶしを入れたほうがいいですか?」と尋ねたら「クセになるのであまり練習しないほうがいいです」と言われました(笑)。
落ち込んだり、1人もの想いにふけたい時などに、この曲の美しくもせつない、独特の世界観はピッタリだと思うので、どっぷり浸ってください。
――そして最後の曲「今日が永遠になるように」もゆったりした曲調ですが、歌声は温かく、優しくて。歌詞も「強く強くほら手を離さないでね」や「あなたの光が私を照らす
いつまでもいつまでも」など大切な人といられる幸せをかみしめているような。
芝崎:歌詞がまだない曲だけの段階から「私が好きなテイストの曲だな。歌えて嬉しいな」と思っていましたが、歌ってみたら結構難しくて(笑)。
――テンポ感もワルツのように優雅ですが、リズムをとるのがちょっと難しそうだなと思いました。
芝崎:そうなんです。あとキャラクターソングなど歌うお仕事をしていくうちに、きれいにまとめるクセがついていた気がして。自分の内側をさらけ出すような曲になると、感情をいっぱいのせないといけないんだなと実感したり、6曲の中で一番苦戦した曲です。
――ラブソングにも聴こえるし、ライブのラストを飾るのにもピッタリの壮大さもある曲なので、ファンの方への想いを歌っているようにも感じました。
芝崎:いろいろな受け取り方や、ご自身と重ねられる曲かなと思います。私も、自分とリンクしたり、共感できる歌詞が多くて。例えば「『しあわせ』と言ったら壊れてしまいそうで言葉をそっと飲み込んだ」とか、自分の中に1つひとつの歌詞が染みてきました。
心に染みたり、共感できたり、聴いた後に余韻も感じられて、ミニアルバムの締めくくりらしい曲になったかなと思っています。
――改めて1枚通して聴いてみた感想をお聞かせください。
芝崎:6曲バラバラなようで、しっかりした軸はあるので、ちゃんとまとまった1枚になったかなと思います。
また、いろいろな私を聴いていただいたり、発見していただけるミニアルバムになった気がします。6曲6様の私がいるので、皆さんがどの曲の私が好きなのか、お聞きしてみたいです。
SNS等で感想をいただいて、皆さんと交流することで、私も気付かなかったことが見つかるかもしれないし、もっとこのミニアルバムへの理解を深められたらと。そしていつかステージで歌う機会があったら、更に想いを込めた歌に成長させられたらいいなと思っています。