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アニメ『地球外少年少女』磯光雄監督インタビュー

宇宙はコンビニやスマホがある普通の場所!? 磯光雄監督が『地球外少年少女』で描きたかった宇宙とは?

宇宙の知識がない人は、美衣奈に付いていけば楽しく見られます!

ーー映像を見たとき、冒頭の宇宙から見た地球にまず感動がありました。おそらく映画のスクリーンで見たら、その感動は倍増すると思ったのですが、改めてオーソドックスな宇宙への憧れを抱かせるような描写も、かなりこだわって描いていったのでしょうか。

磯:そうなったらいいなと思いました。20世紀の宇宙って、銀河系の彼方まで行っちゃっているので、そういうスケールの競り合いをしたところであまり意味がないというか。スケールが大きくなるほど実感がどんどんなくなるんですよね。

前澤さんが宇宙へ行って、「ISS(国際宇宙ステーション)って、宇宙って本当にあるんだね」と言ってたけど、これはくしくも先に言われちゃいましたが、ほぼ同じような「地球って本当にあるんだね」というセリフを何年も前にシナリオで書いてて、当たったなと(笑)。これは普通の人の実感に近くて、それは行ったら本当にそう思うんだと思います。

ISSからの宇宙って、宇宙を見に行くというより地球を見に行くと思うんです。で、今回の商業宇宙ステーションは「あんしん」というクソダサい名前なんで(笑)、これはおそらく日本のお役所が考えた名前だと思うんですけど、地球側に窓があるんですよ。

そこから地球を見て、地球大きい、地球って本当にあるんだって思うという。我々だって地球はあると思っているけど、画面でしか見たことがないわけですからね。肉眼で地球を見た人なんて今まで宇宙飛行士しかいないわけでしょ。それを考えると、このくらいの実感が丁度いいんじゃないかと思いました。なので描写的には、そのくらいの実感の人たちにとっての宇宙を入り口にしています。出口はまたちょっと違うんですけど。

ーー磯監督も宇宙に行って、美衣奈のようなセリフを言いたいなと思ったりするのですか?(笑)

磯:そうですね、行けるものなら行きたいです(笑)

ーー行ってみたいですね(笑)。今回はキャラクターデザインの吉田健一さんと、メインアニメーターの井上俊之さんにもお話を伺っているのですが、監督から見たお二人の素晴らしさについてもお聞かせください。

磯:私がいないところで何を言われてたのやら(笑)。

ーークセが強いとおっしゃられていました。

磯:あぁ、それは褒め言葉ですね(笑)。でも彼らも人のことを言えないくらいクセがめちゃめちゃ強いですからね!

吉田くんから言いますと、吉田くんは宇宙世代のちょっと下の私よりさらに下のはずなのに、上の世代に近い感性を持っていて。宇宙モノを最近見ないけど、やりたいよねっていう話をしたら、すぐにやりたいと言ってくれたんです。

宇宙の何が面白いのかをもともと知っていたので、いちいちそれを説明しなくて済みました。今は世界が狭くなり、アニメも狭くなっていき、手と目が届く範囲が狭くなっている。それより広い未知のものにあまり興味を持たなくなった。

宇宙はリスクがあるし、興味を持ちすぎるとオタクになっちゃうぞ、みたいに悪く語られるようになっている感じがしたんですね。技術的にも突破口になるようなものがいっぱいあるはずなのに、そういう可能性を閉ざしている時代が来ている気がしたのが残念だと思っていたんです。

それは吉田くんも同じだったんですよね。もっと世界は面白かったはずなのにという気持ちがどこかにあるんです。ほかにこういうものを作る人がいないなら、俺たちで作ろうぜ!っていうところが最初はあったのかな。

ただ、一緒にやっていく上ではいろいろありました。アニメーター出身の監督とやるのは初めてだったみたいで、意見がぶつかることもあるだろうと思ったら、やっぱりたくさんありましたね(笑)。

だけど最終的にデザイナーとしての、絵描きとしての吉田健一が面白かったというのと、話したような共通の基盤があったので、それで最後まで完走することができました。デザイナーとして面白い立ち位置にあると思うので、これからも活躍することを期待しています。

ーー井上さんはいかがですか?

磯:井上さんに関してはもう言うまでもないのですが、私の作画の師匠で、私がアニメーターになる前から、井上俊之という名前は体に刻まれていました(笑)。アニメーターの基礎となる動きは井上さんから盗ませてもらったし、今でも井上俊之研究家のつもりで、それでいながら一番弟子を自称しているんです。

井上さんは業界では知らない人がいないような方で、普通のアニメーターが歩兵とか民間人だとすると、井上さんって戦車なんです(笑)。それか爆撃機。

我々が手をこまねいて何もできなくなってるところに現れて、一瞬で全てを片付けていく。実際にこの作品でもそうなりまして、井上さんなしでは語れない作品になりました。井上さんは量産もできて質も高いという珍しいタイプのアニメーターで、本当に頼りになるし、悩まない。今のアニメ業界は井上俊之が支えているようなものです。業界で知らない人はいないし、技術的にも真似をされて普及しているから、もはや業界標準みたいになってますね。でも、私が考えている井上俊之の本質は、まだちゃんと知られてないと思ってるんです。

私が井上さんを知ったのは『Gu-Guガンモ』(細野不二彦による日本の漫画が原作。TVアニメは84年から放送された)なんですけど、もともとの井上さんは極めて個性的で、誰にも似ていなかった。それまでの法則には当てはまらないよく分からない動きを作っていたんです。それは今もやっていて、真似する人もいるんですけど、多くの人が知っている井上俊之は、フルアニメーションの井上俊之で『AKIRA』以後なんです。私からすると『Gu-Guガンモ』のリミテッド(アニメーション)にこそ井上俊之の本質があると思っている。

ーーそれは、リミテッドアニメーションの井上さんが、この作品では見られるということですか?

磯:いや、それが今回はそこをマニアックに掘り下げるほどの余裕はなくて、本当に下支えというか、物量の部分を担ってもらった感じです。私の脚本も情報量が多すぎて、遊びが少なかったんです。

なので作画の魅力で描ききるシーンがほぼなかったのですが、数少ない動くシーンはだいたい井上さんが関わっていると思ってください(笑)。

ーーでは最後に、楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。

磯:宇宙という、今まではあまり情報がなかったところに、最近どんどん情報が増えてきていると思うので、これからは宇宙に行きたい子供が増えると思っているんです。このアニメはそのきっかけのひとつというか。宇宙に行ったらどんな面白いことがあるんだろうとか、宇宙気分を味わえる作品を目指しました。

リアルな宇宙はこんなに過酷なんだぞ!という教訓を与えてがっかりさせるものではなく、行ってみたらこんなに面白いことがある、ワクワクする、そんな気持ちになるアニメになっていればと思っています。

あと、あまり宇宙の知識がない人は、美衣奈に付いていけば楽しく見られるようになっていますので、ぜひ彼女と一緒に宇宙に行ってみてください!

[取材・文/塚越淳一]

オリジナルアニメ『地球外少年少女』作品情報                  

■1月28日(金)前編、2月11日(金)後編、新宿ピカデリー他にて各2週限定劇場上映
※上映館の最新情報はこちら

■劇場公開限定版Blu-ray&DVD 2月11日(金)発売
※数量に限りがございますので、上映期間中に品切れとなる場合がございます。あらかじめご了承下さい。
※Blu-ray・DVDの購入には、劇場にて発券する座席指定券、もしくは入場後の半券が必要となります。

■Netflixにて世界同時配信(全6話一斉配信)
http://www.netflix.com/orbital-children

スタッフ

原作・脚本・監督:磯 光雄(「電脳コイル」)
キャラクターデザイン:吉田 健一(「交響詩篇エウレカセブン」シリーズ、「ガンダム Gのレコンギスタ」他)
メインアニメーター:井上 俊之(「電脳コイル」、「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」他)
美術監督:池田 裕輔
色彩設計:田中 美穂
音楽:石塚 玲依
音響監督:清水 洋史
制作:Production +h.
配給:アスミック・エース/エイベックス・ピクチャーズ
製作:地球外少年少女製作委員会

キャスト

相模登矢:藤原夏海
七瀬・Б・心葉:和氣あず未
筑波大洋:小野賢章
美笹美衣奈:赤﨑千夏
種子島博士:小林由美子
那沙・ヒューストン:伊瀬茉莉也 ほか

主題歌>

春猿火(KAMITSUBAKI RECORD)「Oarana」
作詞・作曲:Vincent Diamante

ムビチケ前売券(オンライン)

前売り価格:各1,500円(税込)
<前編>
販売ページ:https://mvtk.jp/Film/075306
販売期間:1月27日(木)23:59迄
特典:登矢、心葉、大洋 スマホ壁紙

<後編>
販売ページ:https://mvtk.jp/Film/075305
販売期間:2月10日(木)23:59迄 
特典:美衣奈、博士、那沙 スマホ壁紙

来場特典

■前編:描き下ろしミニ色紙(3種・ランダム)
イラスト:磯光雄(監督)、吉田健一(キャラクターデザイン)、井上俊之(メインアニメーター)

■後編:複製原画セット(2枚1セット計3種・ランダム)
磯光雄、吉田健一、井上俊之、それぞれが担当したシーンからお気に入りの原画をセレクトし、その複製原画をプレゼント

※公開劇場にて数量限定配布、なくなり次第終了となります
※各特典はデザイン、使用が一部変更となる可能性がございます

公式サイト
公式ツイッター(@Chikyugai_BG)

TVアニメ『電脳コイル』作品情報                        

スタッフ

原作・脚本・監督:磯 光雄
アニメーションキャラクター:本田 雄
総作画監督:井上 俊之、本田 雄、板津 匡覧
美術監督:合六 弘
色彩設計:中内 照美
音楽:斉藤 恒芳
音響監督:百瀬 慶一
制作:マッドハウス
製作:電脳コイル製作委員会

配信

Netflix、Amazonプライム・ビデオ、dアニメストアほか各種サイトより好評配信中
Netflix
Amazonプライム・ビデオ

Blu-ray発売情報

◆Blu-ray Disc Box
価格:37,000(税抜)
販売元:バンダイナムコアーツ

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公式サイト
公式ツイッター(@DennohCoil)

(C)MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会
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