JUNNAさん6thシングル「風の音さえ聞こえない」インタビュー|重さを持たせつつ、でもしっかりと突き抜けていくような歌声を目指して
2017年6月21日に1stミニアルバム「Vai! Ya! Vai!」で衝撃的なデビューを飾ったJUNNAさん。その歌唱力と表現力に圧倒された方も多いだろう。そこからさまざまなタイアップ楽曲を歌い、同時に『マクロスΔ』でのユニット・ワルキューレでも活躍を続けてきた。
そんなJUNNAさんがTVアニメ『錆喰いビスコ』OPテーマである6thシングル「風の音さえ聞こえない」を2月16日にリリースする。タイトル曲は、THE BACK HORNのeijunが作詞、R・O・Nが作曲・編曲を務める疾走感溢れるロックチューンだ。楽曲制作について、そして決定した5周年ライブについて話を聞いた。
eijun✕R・O・Nの強力タッグによるロックを、どう自分のものにしたのか
──「風の音さえ聞こえない」は、TVアニメ『錆喰いビスコ』のOPテーマになりますが、この曲はどのような感じで作っていったのでしょうか。
JUNNA:『錆喰いビスコ』のOPテーマのために書かれた2曲のうちの1曲が「風の音さえ聞こえない」で、もう1曲がカップリングの「フラクタル」だったんです。
私としては、どちらの楽曲も作品にあう歌いたい楽曲だったので、より監督が思い描く楽曲に近いほうを選んで欲しかったんです。なので、最終的に監督が選んだR・O・Nさんの曲がOPテーマになりました。
──この曲の作曲・編曲はR・O・Nさんですが、楽曲を聴いたときは、どう思いましたか?
JUNNA:最初は歌詞が乗っていない状態のデモなんです。なので、私自身の声で一度収録させていただいているんです。で、そのときから「あっ、ラップがあるな」と(笑)。それが最初の印象です。
──よく、ラップが苦手だとおっしゃっていますからね(笑)。
JUNNA:そうなんです。メロディがないところに言葉を当てるのが苦手なので、どうにかこの曲で苦手意識をなくしたいと思いました。
レコーディングまでにどうにかしようとは思っていたんです。ただ、歌詞の入っていないラララだけで歌う仮レコーディングの際に、もうちょっとこうしたほうがいいんじゃないかという歌い方を研究する時間ができたんです。それが良かったのか、本番のレコーディングではそこまで苦労せずに歌えたんです。
──ラララでラップのほうが難しい気もしますが(笑)。
JUNNA:かなり難しかったです(笑)。だから雰囲気は出せたんですけど、言葉が入ってからのほうがカッコ良くなるので、そこは本番で頑張りました。
──タイアップ曲で自分の幅を広げていく、みたいなことはよくありますしね。歌詞もすごく世界観に寄り添っていますね。
JUNNA:作品もすごく面白いんですけど、“錆”という言葉が歌詞にも使われていて、そこはすごくリンクしているし、この世界を変えてやりたい! ぶち破ってやるぜ!という気持ちが全面に出ている歌詞なので、あっていると思いました。THE BACK HORNのeijunさんが書いてくださると、すごく鋭い歌詞になる印象はあります。
──TVアニメにもハマっているようで。
JUNNA:放送が始まる前に3話まで観させていただいたんです。面白くて続きが気になるなと思いました。3話の終わりが、ビスコ(CV.鈴木崚汰)とミロ(CV.花江夏樹)が一緒に旅を始めるところなんですけど、今後の展開がめちゃめちゃ気になるという……(笑)。主人公の2人の関係性も気になるし、2人を支えるキャラクターも魅力的すぎて、どうなっていくんだろうなって思いました。
──第1話で曲は流れましたが、オープニング映像が付いたのは2話からでした。
JUNNA:この楽曲のカッコ良さにすごく合った映像が付いていたんです。この作品って面白くておちゃめなところもあるなと感じるんです。そのおちゃめなポップさもしっかり表現されていて、こういう表現も使われるんだ!って驚きました。その上で、疾走感とダイナミックさがあるので、楽しんでもらえているんじゃないかな?
──レコーディングで、ラップにはどう向き合っていったのでしょうか?
JUNNA:ラップは恥ずかしさを捨てるだけだったというか。挑戦したことがないことをするときって躊躇があるんですが、それがなくなれば「もうできる!」ってなるんです。
ラップ部分の歌詞ができてからは、全部ローマ字で書いてあると思って、子音を立てる感じで歌ってみたほうがラップっぽくなって面白いんじゃないかと言ってくださったので、それを取り入れて歌ってみました。
──日本語の単語の意味とかアクセントを意識するのではなく、あくまでリズムを大事にするというか。
JUNNA:流れを大切にした感じです。それにeijunさんは仮歌も送ってくださったので、こうやって表現してほしいんだなとか、この言葉を立ててほしいんだなっていうのがすごく伝わってきたんです。だからそれを参考にしながら、そこに自分の要素をプラスしながらレコーディングしていく感じでした。
──かなり心強いですね。
JUNNA:ちゃんと道標を示してくれたんです。ラップもこういうノリ方をしてほしいというのが全部見えたので、やりやすかったです。だからこそ、そこまで大変ではなかったです。
──それにサビはキャッチーですからね。
JUNNA:実際私も覚えやすくて、ただ音程は高いのでそこをどう表現するのかは悩みながらでした。軽い感じでパーンと飛んでいくのではなく、重さも持たせつつ、でもしっかりと突き抜けていくような歌声が出せればいいなと思いながら歌いました。
──そしてこの曲のMVでは、廃墟のようなところで撮影していましたが、撮影はいかがでしたか?
JUNNA:廃墟というか、歴史を感じさせる工場跡地で撮影したんです。色んな場所で撮ったし、ドローンも使って、カメラマンさんもめちゃめちゃ動きながらの撮影でした。私もかなり動いたので、疾走感溢れた、ダイナミックさもある映像になったと思います。
──YouTubeにアップされていない後半はどんな感じなのでしょう。
JUNNA:後半になってくるとドローンの動き方がダイナミックに、すごく速くなるんですよ。私の顔の近くまで来たりしたんですけど、それは「よく怖がらなかったね」って言われました。
──ドローンって音も大きいし、怖いと言われますよね。
JUNNA:そうなんですけど、今までのMVでも使っているから慣れちゃったというか(笑)。あまり怖さとか感じなくなっています。
──アーティスト写真やジャケット写真のビジュアル含めて、ハードでカッコ良かったので反応もあったのではないですか?
JUNNA:ハードに振り切った感じだったから反応はありましたけど、ジャケットの衣装はロックっぽさもありつつ、少しだけ女性らしさも付け加えられたらいいねということでスカートを履いて、黒いチュールを付けていたりするんです。
MVでもふわっとしたワンピースを着ていたりするので、その二面性も楽しんでもらいたいですし、前髪をなくしてから初めての撮影だったので、そこもロック感をプラスしてくれているなと思いました。
──少し年齢感が上がった感じがありますよね。
JUNNA:あると思います。これまでは全部前髪ぱっつんで挑んでいたので(笑)。
超絶難しかったという「フラクタル」。同じ景色を思い描ける「僕のむこう」
──「フラクタル」は、サウンドが本当にヤバい!と思いました。
JUNNA:それは編曲が白戸佑輔さんだからです(笑)。やっぱり白戸さんは独特なんです。中毒性があるというか、絶対にこのメロディにこの音をぶつけないだろうっていう音を入れ込んできたりするんです。でもそれが面白くて、毎回想像しないような方向に曲を導いてくれているなと思います。
──歌ってみて、いかがでしたか?
JUNNA:個人的には「風の音さえ聞こえない」よりも超絶難しかったです。「フラクタル」はずっと重さを含ませて歌いたいなという気持ちがあったので、低い音を出している感覚で高い音も全部出していったんです。そこがすごく難しかったんですけど、カッコ良さを増してくれると思ったので、気合いを入れてレコーディングしました。
──Aメロから低い感じで入る感じでしたけど、確かにサビも疾走感はあるけど、突き抜けると言うよりは駆け抜ける感じですね。
JUNNA:聴いていただく方には高くないじゃん!って感じてほしかったんです。白戸さんが編曲などで参加されているときはレコーディングにも来てくださるんですけど、この曲は迷わずに、わりと今までの私っぽい歌い方で歌えた曲ではあったのかなと思います。それが少しヘヴィになったような感じというか。
あと、歌詞からも怪しさみたいなものが出ていたので、それを私の声で表現できたらいいなと思いました。
──確かに、これまでのJUNNAさんという印象はありました。このアレンジを聴いたときは、率直にどう感じたのですか?
JUNNA:参加できるときは楽器のレコーディングにも行くようにしているんですけど、白戸さんのアレンジのときは毎回プレーヤーの方々の演奏が大変そうだなって思いながら見ています(笑)。でも、いつも本当にカッコよく仕上げてくださるんですよね。
──見ているときは、何か言ったりするのですか?
JUNNA:いや、私は楽器レコーディングのときは「ヤバいです。カッコいいです」しか言ってない人になってます(笑)。見ていて、すごく大変そうだなと思うんですけど、自分たちがやりたい“遊び”もしっかり入れてくださっていて、白戸さんが「それ良いですね!」と取り入れていたりするんですよ。
──そこで生み出されるものもしっかり入っているんですね。ちなみに歌うときは、どの楽器の音を特に意識しているのですか?
JUNNA:私はドラムですね。クリックも入っているんですけど、クリックはあまり聞かないようにしていて、ドラムのリズム感に合わせられるようにと思いながら歌っています。
──さらにもう1曲「僕のむこう」も本当に良い曲で、もはやバラードもJUNNAさんの武器というか、強みになってきていますよね。
JUNNA:ありがとうございます。
──今回も作詞をしていますが、多くの人にささる歌詞だなと思いました。どんなところからスタートしたのですか?
JUNNA:曲が先に決まっていたので、曲のイメージと私が今書きたいことを伝えてから書いていったんですけど……。
──自分だけが止まっている感じがするところから、一歩踏み出していくような、背中を押される歌詞だと感じましたが、それを書いてみたいと思ったのですか?
JUNNA:そういうことを言いたいなとは思っていたんですけど、それよりも“みんなと同じ景色を共有したい”と思ったんです。これまでって直接的な歌詞というか、景色というより自分の気持ちをワーッと書いて届けていたことが多かったんです。でも今回は、“空”とか“鳥”とか“翼”のような、誰が聴いても同じ景色をイメージできる言葉を入れ込んでみたいと思ったので、それが今回の作詞の一番のポイントでした。
──映像が見える曲にしたかったというのがまずあって、そこにメッセージを入れた感じだったんですね。このメッセージは、経験があることだったり?
JUNNA:誰もが思うことなのかなと思ったんです。自分だけが取り残されている感じとか、周りと比べてしまうことってたくさんあるじゃないですか。誰しも自分だけのことを考えて行動するなんてことはできないので。
それで誰かと比べていたら自分のダメなところが見えてくるし、そこからどうしたらいいかわからなくなる人もいると思うので、サビでは一気に踏み出した感じにしていて、「でも、一歩踏み出さないと何も変われないよね」と伝えられたら良いのかなと思いました。
──今回は、JUNNAさんがそう思って自分に言っているというより、JUNNAさんが導いているような感じが良いなと思いました。前シングルの「はじまりの唄」では、書きたいことがまとまらずに何度も書き直したというエピソードがありましたが。
JUNNA:今回は第一稿からほとんど変わっていなくて「これでいきたいです!」っていう感じで押し通した部分があるんです(笑)。自分的にもまとまっていると思ったから「変えたくはないです!」って頑固な感じで提出しました。
本番のレコーディング前に編曲のNAOKI-Tさんと歌詞のハマり具合とかを考えて、言葉数は合っていてもリズムが変になっているところは少し変えたりしたんですけど、大まかな変更はなかったです。
──ここの歌詞はよく書けた!という部分はありますか?
JUNNA:お気に入りは2Aの〈僕だけの軌跡 波が足跡をさらう 後ろを振り返るなと〉で、自分でも「お~!」って思いました(笑)。海を歩いていて波に足跡がかき消された映像をしっかり思い浮かべられるし、後ろを振り返っているだけでは前に進めないという自分のメッセージも入れ込めたんじゃないかなと思います。
──ちなみに、入れたい歌詞があっても、それがメロディに当てはまっていないときは、どちらを優先するのですか?
JUNNA:それは歌詞を変えますね。NAOKI-Tさんに指摘されたところも、自分だけだと気づけないところだったりしたので、他の人が聴くと気づくところもあるから、そこは納得しながら修正していきました。
──このインタビュー時は、まだ年始のツアーのファイナル前なのですが、ライブの感触はいかがですか?
JUNNA:良い感じです! やっぱりお客さんの前でしっかり歌えるというのは楽しいですし、1公演1公演積み重ねていくごとに成長できるのはツアーの良さだなと改めて感じます。
──『JUNNA 5th Anniversary Live』(6月21日[火]EX THEATER ROPPONGI)が発表になりましたが、もうソロデビュー5周年になるんですね!
JUNNA:あっという間ですね! もう5年もやってきたんだっていう感じでびっくりしています。でも、今までリリースしてきた曲数を見るとやってきたんだなぁとは思います。
──自分の中でも成長している実感はありますか?
JUNNA:デビュー曲の「Vai! Ya! Vai!」を久しぶりに聴いたりすると、若いな~って思ったりしますね(笑)。歌い方も全然違っていて、今歌うと違うものになると思うから、それも面白いなと思います。
ステージに立つという意味では成長したと思います。ワルキューレとしてもいろいろな場所に立たせてもらっているし、自分のツアーでもライブをたくさん重ねてきて、課題もたくさん発見しながら、成長できていると思います!
──でもまだまだ?
JUNNA:まだまだです! できないこともたくさんあるし、不安に思っていることもたくさんあるので、やらなければいけないことはたくさんあります。それをここからまた経験しながらやっていけたらいいなと思います。
──楽器もありますしね。
JUNNA:ギターはもうちょっと頑張りたいです。
──5周年ライブは、今までの集大成な感じになるのですか?
JUNNA:そうですね。でも、そこで終わるわけではないので、みんなに5年間、ここまで一緒にいてくれてありがとうという気持ちと、ここからまだまだ突き進んでいくぞ私は!という気持ちを『Vai! Ya! Vai!』を発売してデビューした日に言えるのは幸せだなと思います。平日だけど来てくれたら嬉しいです。
──その後ホールツアー『JUNNA ROCK YOU HALL TOUR 2022』も予定しています。
JUNNA:実はホールでライブをしたこともないんです。ワルキューレはライブハウスとアリーナだったので、初めてホールでのライブができるので楽しみです。ライブハウスはシンプルにロックな感じで、今はコロナもあって椅子を置いていますけど、今まではスタンディングでやっていたので、雰囲気はだいぶ変わると思います。
──2022年も、やることがたくさんありますね。ちなみに年始におみくじなどは引きました?
JUNNA:引きました! でも中吉でした。大吉引けよ!っていう感じなんですけど、中途半端な感じだったから結んできました(笑)。
──占いとかは信じるほうなのですか?
JUNNA:占いは信じるほうですけど、それに縛られるとかはなくて、結局は自分次第なのかなって思っています(笑)。
[取材・文:塚越淳一]
CD情報
発売日:2022年2月16日発売
価格:1,540円(税込)
≪収録曲≫
01.風の音さえ聞こえない
作詞:eijun 作曲・編曲:R・O・N
02.フラクタル
作詞:藤林聖子 作曲:アッシュ井上 編曲:白戸佑輔
03.僕のむこう
作詞:JUNNA 作曲:廣中トキワ 編曲:NAOKI-T
特典情報
【対象商品】
【主題歌】TV 錆喰いビスコ OP「風の音さえ聞こえない」/JUNNA
【主題歌】TV 錆喰いビスコ ED「咆哮」/ビスコ&ミロ(CV.鈴木崚汰&花江夏樹)
※上記2タイトルを同時購入いただいた方が対象となります。