四郎に感じた残酷な無邪気さ。付き従う七緒に「可哀想……」│冬アニメ『オリエント』犬飼四郎役・下野紘さん、犬坂七緒役・和氣あず未さんインタビュー
四郎に感じた残酷な無邪気さ。付き従う七緒に「可哀想……」
──四郎も七緒も、まだまだ謎に包まれた存在です。改めて、演じられるキャラクターについて教えてください。
和氣:七緒の第一印象は無感情な子です。一緒にいる四郎との関係は、なんとなく四郎の方が上だろうと感じていましたが、「四郎より自分のほうが上だという気持ちでお芝居をして良いよ」と最初にディレクションで言われて。
でも、四郎と一緒にいる七緒を見ているとすごく可哀想な子だなと思ってしまうんです。すごく四郎のことを思っているので、活躍した時は褒められたいはずなんですけど、その気持ちは一方通行で。それでも四郎のことをご主人と呼んでいるし。
下野:あれはなんでなんだろうね? 自分で演じてても「可哀想……」と思っちゃうんですよ(笑)。そう思うくらいなんですけど、何故か七緒は従っていて。
和氣:猫みたいな見た目ですけど、犬っぽい性格してますよね。
下野:(笑)。「犬」は我々のキーワードにも繋がりますよね。
──四郎についてはいかがでしょうか?
下野:最初は好青年であったり、僕の勝手なイメージとしては周りを気にしないと言いますか、自由奔放なキャラクターだと思っていたんです。ですが、七緒だけでなく色々な人に対して残酷な無邪気さを見せていて。普段からニコニコしているんですけど、彼が本当に笑うのは鬼鉄刀が絡んでいる時だけで、それは事前に説明を受けましたね。
僕としてはそこしかないんだ、他にはなにも興味が無いんだと。それを一番に感じさせてくれるのが七緒とのシーンだったりするんですけど、個人的には子供の残酷さみたいなものをちょっとだけ持っているのかなと思って。興味がある時は熱心だけど、興味が失われると「いらね」みたいな。
演じていく中でこういう人間なんだろうなとなんとなく思い描いていくことがありますが、四郎に関してはまだ完璧には掴めていない部分はありますね。
──難しいキャラクターであると思います。ではそんな2人と戦いを繰り広げる、武蔵と小次郎の印象を教えてください。
下野:武蔵はすごくコンプレックスを抱えていたり、明るく振る舞っているけど自分の力不足にショックを受けたりしていて、すごく人間味に溢れていると思いました。
小次郎は武蔵よりも大人なイメージですけど、このふたりは血気盛んに「頑張っていくぜ!」という性格ではなく、すごく現代の日本人らしいと思って。
やる気がある時は元気だけど、そうでない時はしっかり悩んでいて。今の世の中的には普通かもしれませんが、僕としては新鮮でした。悩んでいる人にとっては共感したり感情移入をしやすいんじゃないかと思います。
──和氣さんはいかがですか?
和氣:武蔵は負けず嫌いで、決断力があって行動力もありますが、すごく辛い過去があって。私の中での普通の主人公のイメージって、熱血で天然で、ちょっと空気が読めないと言ったものなのですが、武蔵はすごく空気が読めるなって。
──一見、王道な主人公キャラですけど、かなり複雑な面がありますよね。
和氣:親戚の間をたらい回しにされていた過去があったからこそ、こういう行動をしないといけない、今この人はこういう感情だから自分はそれに合わせないといけないとか、意外と器用なところがあって。
ストーリー上でも自分の熱血さとか正義感で突っ走っちゃうところもあるんですけど、この人にはこう接したほうが良いというのをわかっている一面もあるんです。
私としては小次郎のほうがそういうキャラクターなのかなと思っていたんですけど、そうでもなくて。お父さんから言われてきた「武士は正義」というのを信じたい気持ちはあるけど、最初は信じきれていないところもあって。そんなマイナス思考を、原作や脚本を読んでところどころで感じました。
──第8話・第9話では武蔵の過去が明かされましたが、ご覧になっていかがでしたか?
和氣:あの描写も怖いですよね。この作品は絵柄が可愛いのに、鬼の描写とか、黒曜の女神とか、ところどころ怖くて。
下野:結構残酷だったよね。闇に包まれていくところとか、皆根っこに何かしらのトラウマを抱えているんだなって思いました。
武蔵、小次郎、つぐみの3人はそれぞれコンプレックスを抱えているんですけど、僕は好きなんですよ。第6話で3人がようやく武士団としてこれから前に進んでいくぜ!と意気込んだ次の瞬間に人間関係の距離感がわからなくなっているところとか、つぐみに振り回されているところとか、この3人は何をしているんだ?と(笑)。
和氣:つぐみが武蔵と小次郎との関係づくりに悩んで、結果脱ぐという手段にでるシーンですね(笑)。
下野:そう! 小次郎に対して妙に冷たくて。個人的に、現代でも同じようなことがたくさん起きていそうだなと思いました(笑)。この人はどんな人なんだろう?みたいに、距離感を一歩踏み出せない人たちですよね。でも結果、すごく良い人だった!みたいな。