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『AnimeJapan 2022』総合プロデューサーインタビュー

「アニメファンも業界のみなさんも一緒に楽しみませんか?」──アニメ総合イベント『AnimeJapan 2022』総合プロデューサー・中嶋俊介さん&佐伯瑞穂さんインタビュー

2022年3月26日(土)・27日(日)に東京ビッグサイトにて、約3年ぶりにリアル開催される世界最大級のアニメイベント『AnimeJapan 2022』(以下、「AJ2022」)。

人気作品が集まる全42の「AJステージ」、日本を代表するアニメ関連の企業・団体の個性豊かな「出展社ブース」、「コスプレイヤーズワールド」などの主催企画……アニメを取り巻くすべてが、『AJ2022』に集結します!

そこで今回は、『AJ2022』総合プロデューサーの中嶋俊介さん(タツノコプロ)と佐伯瑞穂さん(KADOKAWA)のインタビューをお届け。アニメ業界の最前線で活躍するお二人から2021年のアニメ業界を振り返っていただくとともに、『AJ2022』をリアル開催に踏み切った理由や開催の意気込みについてたっぷりお話を聞きました!

幅広い世代のアニメユーザーが増加した2021年

――はじめに、お二人の簡単な自己紹介からお願いします!

中嶋俊介(以下、中嶋):タツノコプロの中嶋と申します。タツノコではコンテンツビジネス部に所属し、ライツ営業をしています。簡単に説明すると、アニメ作品に関連するグッズ化、イベント化、広告宣伝利用などの営業を中心とした業務です。

『AJ』は23社連合での開催で、その中から毎年2名の総合プロデューサーを選出しており、21年から引き続き22年も担当させていただいております。

佐伯瑞穂(以下、佐伯):KADOKAWAの佐伯と申します。KADOKAWAではアニメ事業局というアニメに関わる部署で展覧会などのイベント宣伝を担当しています。

もともとイベント業務の一環で『AJ』実行委員会に所属しており、今回の『AJ2022』の総合プロデューサーを拝命いたしました。

――ありがとうございます! 『AJ2022』のお話をお聞きする前に、まずはアニメ業界の最前線でご活躍されているお二人から2021年のアニメ業界について振り返っていただきたいなと。2021年は映画興行収入ランキングのTOP4をアニメ作品が占めるなど、2020年から引き続きアニメが盛り上がった年でした。

中嶋:私個人の感覚とはなりますが、ありがたいことに、コロナ禍でありながら業界として非常に盛り上がったのがここ数年の動向ではないかと思います。これまでのアニメは大人向けもしくはコアファン向けの作品が多かったのですが、近年は世代問わずライトユーザーも楽しめる作品が増えてきました。

僕自身、小さい子どもがいるのですが、保育園に連れていくと園の子どもたちがアニメキャラのセリフを言っているんですよ(笑)。そういう作品って最近はなかなかなかったなと個人的に思っています。

そんなアニメが出てきたおかげで、いろんな企業様から「アニメを作りたい」「アニメとコラボしたい」とお話をいただけるようになったのだと思います。

――動画配信サービスの広がりでライトユーザーがアニメに触れる機会が増えたことは一つの理由にあると思うのですが、そこについてはいかがですか?

佐伯:コロナ禍でみなさんが家から出られない状況で“娯楽”を探した時、多くの人が「映像を観ること」を選択したのではと思っています。それは配信事業社さんの頑張りのおかげでもあると思いますし、単純にこれまでよりも作品を見る時間が増えたのが大きかったのではと思います。

中嶋:動画配信サービスによっては、オススメの作品をサジェストしてくれるじゃないですか。「あなたこれを観ているということは、これも好きでしょ?」と結構絶妙なところをついてくるんですよ(笑)。あれはすごいですよね。どんどん観ちゃう。

佐伯:そうなんですよ!それでより広い層にアニメが広がったなと。弊社は出版もしているので、同じく電子書籍も伸びました。これまでとは状況が大きく変わった、個人的には面白い年だったなと思います。

転換期が差し迫る、アニメ業界のビジネスモデル

――逆に、現在感じているアニメ業界の課題についてもお聞きしたいです。「アニメ産業レポート2021」では、2020年国内アニメ市場規模が11年ぶりにマイナス、海外アニメ市場規模が初めて上回るという結果が発表されました。

中嶋:私がライツ営業の視点から感じていることは、配信が主流になりビジネスモデルが急激に変わってきた、いわゆるパッケージが売れない時代になってきたな、と。

30分のアニメを制作する場合、ほかの映像作品と比較すると群を抜いて費用効率が悪いんですよ。パッケージが売れない時代に制作でかかった費用を回収するにはどうしたらいいのか、それは速やかに考えていかないといけないところまで迫っています。

――ビジネスモデルを変えていかなければいけない、ということですか?

中嶋:そうです。今までは1枚8,000円ぐらいの円盤を売ることがメインの収益でした。しかし、ここ5年くらいで急激にそれが変わってきているので……。私自身、どうすべきか答えを知りたいところです(苦笑)。

また、もう一つは日本アニメのある意味「ガラパゴス化」をどのように捉えることなのかな、と思います。現在でも年間200本近く新しいアニメが生まれていることに加え、配信により「自分の趣味趣向に合うものを見つけてくれる」システムがある。ゆえにそれぞれの趣味趣向に合わない作品は見られる機会が減ったんですよね。

――たしかに、自分の興味のある作品だけを楽しむ人が増えた気がします。

中嶋:これまで日本は素晴らしいアニメを作り続けてきて、世界のトップを走ってきた。だから、世界中には多くの日本アニメファンの方がいます。しかし万人に受ける作品というよりかはコア向けの人たちから支持を集めているように感じています。

だけど、先ほども言ったようにパッケージが売れない時代に、少ないユーザーに見てもらえて評価をいただけたけど、ビジネス的には大赤字みたいな構造はもう成立しません。全世界の多くの人の琴線に触れる作品を生み出すために何をすべきかを、今後すごく考えなければいけないと思います。

佐伯:すごく分かります。でも同時に思うのは、日本のアニメってすごく独特なんですよ。だからこそ希少価値が高い。なので、全世界に通用する作品を作りながら、これまで通りガラパゴス的な作品も作っていく方が良いのだろうなと。

温故知新みたいなもので古いものを温めながらも、全世界に向けて新しいことに挑戦する。古いものと新しいもののすみ分けをどうしていくかが今後考えていくべきことだと感じます。

中嶋:おっしゃる通りで、私個人としても両軸でいくべきだと思います。古き良き日本のアニメ文化を捨てる必要はなくて。それこそ配信のおかげで、全世界にアニメのコアファンが増えているとも感じていますし、コアな作品でもまだまだ市場の伸びしろはあるんじゃないでしょうか。

佐伯:10~20年前の作品が配信上で今、海外の人たちに発掘されてファンが増えていることもありますからね。日本人の感性の中で「これがいい!」と思った作品を出せばいいと思います。

その琴線に触れるのが日本人なのか海外の人なのかは、正直出してみないと分からない部分も大きいので、同時にビジネスモデルを変えなきゃいけない視点は持った方が良いとは思います。

――昔の作品が話題になるケースも多いですもんね。

中嶋:そういう意味では答えはもう決まりつつあるかもしれません。数年に1本くらい世界でヒットするビックタイトルを、年に数本コアファン向けのヒットタイトルを生み出す。

全世界からいただいたお金でコアなものを作るというサイクルづくりが重要なのではと考えています。と、誰しもが目指しているだろうことを、さも簡単なことのように語ってしまってごめんなさい(笑)。

佐伯:二次使用の領域で喜んでもらえる仕組み、ひいてはもう一度作品を観てもらえる仕組みを作った方が良くて。例えば、舞台から入ってアニメを観て、原作を読む流れができたら最高じゃないですか。

まずはどの入り口でも構わないので、最終的にアニメや原作に循環する仕組みを考える。それを定番化した上で、日本アニメ市場でファンを増やしつつ、海外アニメ市場でのファンの獲得を考える。両軸で育っていけば、より日本のアニメ業界は発展していくのだろうなと思います。

――もう一つの課題には、コロナ禍の影響でライブエンタメ関連が挙げられます。イベントができない、開催しても人が集まりづらいなど厳しい状況になっている側面もあると思うのですが、そこについてはいかがでしょうか?

佐伯:軒並み苦しい状況になったと感じています。ユーザーのみなさんの限りある時間とお金の中で何を選択するのかが、コロナ禍で大きく変わってしまいました。特にイベントなどは「行かないこと」に慣れてしまったんですよね。

その中でユーザーのみなさんに時間とお金を使ってイベントに足を運んでもらうためには何をすべきか、今すごく模索している段階です。

やっぱり“イベントをやれば人が来てくれる時代”ではなくなってしまって、「何ができるのか」「誰と会えるのか」など求められるものの質が高くなってきています。数あるコンテンツの中からユーザーのみなさんに掴み取ってもらうために何が必要なのかの視点を高めなければいけません。そこはすごく難しく、大変さを感じているところです……。

(C) 2020 川原 礫/KADOKAWA/SAO-P Project
(C)和久井健・講談社/アニメ「東京リベンジャーズ」製作委員会
(C)渡辺航(週刊少年チャンピオン)/弱虫ペダル05製作委員会
(C)2020 プロジェクトラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
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