『メガトン級ムサシ』レベルファイブ代表取締役社長/CEO・日野晃博さんインタビュー【第2弾】|シーズン1は2への序章にすぎない……! あの衝撃のシーンが生まれた裏話まで飛び出す!?
『イナズマイレブン』や『妖怪ウォッチ』を生み出したレベルファイブが手掛ける新作ロボット作品『メガトン級ムサシ』。アニメはシーズン1の放送が終了し、2022年10月からシーズン2の放送決定が発表されています。
シーズン1のラストシーンを見て、続きが気になっている読者も多いことでしょう。
アニメイトタイムズでは『メガトン級ムサシ』放送前に、レベルファイブ代表取締役社長/CEOであり、本作の総監督/企画・原案、シリーズ構成/脚本も務める日野晃博さんにインタビューを行いました。
こちらのインタビューで日野さんが熱く語っていたのは「往年のロボットものの熱さを取り入れた作品」だということ。
その言葉のとおり、アニメが放送されるやいなや、怒涛の展開に手に汗握り、衝撃の展開に絶句してしまった視聴者も多く見受けられました。
しかし、この物語は序章にしかすぎなかったのです。
今回は、そんな期待が高まるシーズン2について日野さんに再びインタビューを行うことに。また、シーズン1の反響や、視聴者が度肝を抜かれたあのシーンなどについても言及していただきました!
熱さを極めた作品がさらに熱くなると一体どうなってしまうのか。その答えの片鱗を覗きに行きましょう。
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過去の名作へのリスペクトが『メガトン級ムサシ』を形作る
ーー今回はフリートーク形式で、『メガトン級ムサシ』について、これまでに語りきれてなかった部分をお聞きできればと思っております。
日野晃博さん(以下、日野):この記事のテーマとしては、現状の『メガトン級ムサシ』の一番詳しい記事という形にできればいいかなと思います。
ーーアニメはシーズン1の放送が終了しましたが、今のお気持ちや状況はいかがですか?
日野:実は、昨日も徹夜で21話のシナリオを書いてました(笑)。
仕事が忙しくて寝ないなら良いんだけど、仕事が午前3時ごろに終わって、そこからゲームをしたくなっちゃうんですよね。朝6時頃までゲームすることもあります。
ーー相変わらずゲームをやっていらっしゃるんですね。最近は注目作が多いですから。
日野:はい、『グランツーリスモ』の新作もあって、ハンドルコントローラーも買っちゃいました。フォースフィードバックのやつ(ゲームや仮想現実空間に連動して振動などアクションが伝わるシステム)。今日届いたばかりでまだ触ってないんですけどね。
仕事の前にハンドルのセッティングをしてこのインタビューがあるので泣く泣くプレイせずに来ました(笑)。
ーーすみません(笑)。
日野:いつでもやれるので良いんですけどね(笑)。でも寝ないとやばいな~。
ーー作品を待つファンもいますから。
日野:そうですね。作品を遅らせるわけにはいけませんね。
ーー『メガトン級ムサシ』シーズン1のアニメ放送を振り返ってみていかがでしたか?
日野:ロボット好きの皆さんにはすごく刺さっていたように思います。作品の仕上がりとしては100点満点を作るのは難しいですが、過去作と比較しても良いものになったなと個人的には思います。
ロボットもののセオリーや子供の頃に感じた熱い部分などは徹底的に作品に入れ込んだつもりです。作りながらも反省点はいくつかあるんですが、次に繋がる作品になったと思います。
ーー次に繋がる良い部分とはどういったところでしょうか?
日野:ロボットものを作るのは初めてではなく、『ダンボール戦機』や『機動戦士ガンダムAGE』も過去に作りました。そんな中で商業作品のアニメって1人で作るものではないと思ったんです。
色んな人達のビジネスや、作品としての思惑みたいなものを背負って世に出ていくものなんだと思います。なので、個人的にはもう少しこだわりたい部分や納得できない時もあるんです。それはどんな作品でもそうなんです。
しかし、『メガトン級ムサシ』という作品は言い訳をしなくても良いように、個人のロボットに対するこだわりを入れさせてもらった、ワガママなプロジェクトだと思います。
少なくとも自分の中での「ロボットもの」のあるべき姿は90%くらい実現できたかなと思います。それを次のシーズンに向けて100%にしたいと思います。
ーーたしかに、日野さんが提示したい方向性を作品から感じることができました。
日野:とにかく熱いものを作りたかったんです。ロボットというとSF考証を重要視する人もいて、それも醍醐味ではあるんですが「いろんなロボットもの」があっていいと思うんです。
だから、『メガトン級ムサシ』はぶっとんでいて、振り切った、熱いやつを作りたくて。SF的な事象にツッコミを入れられるだろうなと思ったんですが、「地球に穴をあけてしまえば、最初からそんな細かい事を気にする作品ではない」ということをアピールできるんじゃないかと(笑)
ーー(笑)。
日野:さすがに地球に穴あけてる作品に細かい事は言えないんじゃないかと思って(笑)
いわゆるぶっとんだ設定とズレたリアリズムの中での人間描写の面白さを求めていたので、それをどうやって視聴者に伝えるのかを考えていました。
ーー言ってしまえば、「呪文を唱えれば魔法が使えるんですよ」というファンタジーの世界観に少し似ているというか。
日野:そうですね。ファンタジー作品の無茶さみたいなものをSFに取り入れたような作品です。
ーーそういった作品は近年ではあまりなかったように思います。
日野:本来のロボットものってそういう雰囲気が多かったんですよね。
それが時代の流れで徹底的なSF考証、それに伴うリアリズム、それがないと半人前のロボットものというようなイメージが主流になっていったと思います。
『スーパーロボット大戦』という作品でも、リアルロボットとスーパーロボットに別れていますよね。今回はスーパーロボットを突き詰めたような作品です。
ーー昨今の流行とは違った熱いスーパーロボットだったので、すごく良かったと思いました。「気合があれば良いんだよ!」みたいな。
日野:嬉しいですね。そこを男の子にわかって欲しかったんですよ(笑)。
ーーその熱さも含め、日野さんが考えるロボットものの美学などはあるのでしょうか?
日野:ロボットはなんでも好きなんです。『ガンダム』シリーズも好きですし、スーパーロボット系の『超電磁ロボ コン・バトラーV』とかも好きです。ビームを出して最後は敵が大爆発するのも好きです。
幼少期に見たロボットのかっこよさを大人になった今でも引きずっています。幼少期にそういったコンテンツがなかったらこうはならなかった。『マジンガーZ』を見て、そのおもちゃを買って喜んでいた少年時代でした。
その時に培われた執着みたいなものが、今このような作品を作りたいという原動力になっています。「こうじゃないとだめだ」みたいな気持ちは全くなくて、ロボットに乗ってカッコイイセリフを吐いて、悪いものを倒す。そういうロボットがもつヒーロー像を表現するのが大事かなと思います。
ーーお話に出た以外で個人的に好きなロボット作品などなにかありますか?
日野:『超電磁マシーン ボルテスⅤ』とかも好きでした。富野由悠季さんの作品もほとんど見ていましたし、『戦闘メカ ザブングル』『重戦機エルガイム』『伝説巨神イデオン』も全部好きですね。
特撮の『大鉄人17』も好きでした。体操座りで空を飛ぶんですよ。なぜだかわかりません。空気抵抗やばいだろ! 立ったまま飛んだほうが良いんじゃないか?(笑) って今では思うんですけど、それがいいんですよね。
そういった作品のリスペクトは『メガトン級ムサシ』に込めている部分があります。
ーー以前のインタビューでも、『メガトン級ムサシ』の管制室は、『銀河鉄道999』をはじめとした松本零士先生のデザインをイメージしたと仰っていました。
日野:そうですね。メーターが丸くなっていたりするのは松本零士さんの作品に対するリスペクトになっています。一番影響されているのは『宇宙戦艦ヤマト』なんですよね。
『宇宙戦艦ヤマト』の方程式みたいなものを使って作品を作りたいと思っていたので、オペレーションコールにも取り入れたりしてます。あれも一個ずつ書いていますからね。
軍事考証のアドバイスもきちんと受けて、本当の戦場でどんなことをやり取りするのか聞いたりして。例えば10機の敵機がやってきた場合、オペレーションの方はまず番号をつけるらしいんですよ。1番2番、という風に勝手に番号をふるらしいんですけど、それも『メガトン級ムサシ』でも取り入れていて、細かい描写なのでよく聞かないとわからない部分になっています。
ーーそういう細かい部分に目を向けると何周も楽しめそうですね。
日野:結構真面目に作ってるんですよ……地球に穴はあいてるけど(笑)。それっぽさを出すためには真剣にやることが必要なんです。
不真面目に作りたいわけではなく、突っ込まれないためのガードみたいなこだわりなんです。SF考証に基づいたある程度のリアリズムっぽさを出すためにやっています。
ーーすごくよくわかります。例えば、『マクロス』シリーズだと「歌」がキーになりますが、よく考えるとなぜ? と思うところもありますよね。でも「そういう作品なんです!」というベースがあって、戦闘シーンはしっかりと考証をされていたり、ミサイルの通称“板野サーカス”がすごい描かれていたりします。『ムサシ』もそれに通じる面白さがあると思います。
日野:『マクロス』シリーズもすごく良く考えられた作品になっていますよね。『メガトン級ムサシ』でもミサイルが飛び交うシーンがありますが、あそこはもちろん「板野サーカスでよろしく」とスタッフに伝えました。